Column124.ブラック企業が邪魔する、将来のノーベル賞。 | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

きょうは、日本人3人の物理学賞受賞が決まった、
ノーベル賞を通じて、日本企業の理想と実態を考察します。



今回受賞が決まった3人のうち、
中村修二氏を知っていた方も多いだろう。



勤務していた企業に、自身の研究異性化の対価として、
600億円を請求した裁判を起こし、
世間から賛否の声が集まったことを。



中村氏が務めていた会社は、
中村氏の青色LEDの実用化により
莫大な利益を得た。



それに対する対価を中村氏は求めたのであるが、
当時「企業に属しているのだから、けしからん。」
という声が大勢であった。



サラリーマンである以上、企業に忠誠を尽くすのが
当たり前、という考えに立脚している。
今も、その風潮は強いとみてよいだろう。



一方で、企業に労働力をはじめとする収益をもたらす
手段を提供した従業員に、
その対価として、給料を支払っている。



中村氏が、青色LEDで会社から得た、
その分の報酬は、2万円だったという。
成果を上げる前は、退職勧奨も受けたという。



その後裁判で、6億円の和解が成立している。



中村氏は、現金が欲しくて裁判を起こしたのではない、
この現実を知らしめたかった、と語っている。



この中村氏の話は極端な例だとしても、
大なり小なり、我が国の給与所得者、
いわゆるサラリーマンは、戦後、
会社との従属関係をもとめられた代わりに、
安定した所得を得てきた。



しかし、バブル崩壊で企業は安定雇用の正社員を減らし、
正社員にはさらなる忠誠=少ない人数で多くの仕事を回す、
給与が減ってもサービス残業が減ることはなかった。



つまり、会社との従属関係は求めたまま、
その見返りの安定や報酬はどんどん減らされている。



そのサラリーマンの側も含め、
終身雇用によって1つの企業で長く勤めるのが良い、
という風潮が、まだまだ根強く残っている。



他の企業も同じようにやっているから、
サラリーマンは他に行けなかったことも手伝っている。



極めつけは、安定ではない非正規雇用の人たちにまで、
会社への従属=重労働を強いるようにまでなってきている。
安定雇用の希望を持っている能力のある人たちに。



筆者は、このようないびつな雇用状況改善のため、
労働基準法と雇用保険法のセットでの抜本改正が必要だと、
本欄でも、具体案をもってかねてより主張してきた。



しかし、既得権益側がそれに強く抵抗していて、
それはほぼ不可能である。



いつまでも、そのようないびつなことが続けられるわけなく、
ゼンショーのような事態も起きている。



そして、非正規の方に求人の軸足を傾けた結果、
非正規での人手不足が顕著になり、
あまり世間では伝わっていないが、


いわゆるブラック企業の多い業界を中心に、
パートやアルバイトの時給が、
今どんどん上がってきているのだ。



不景気なのに、震災もあったのに、
今からちょうど4年前を境に始まった、
失業率などの雇用統計の改善は、
一部では、バブル期をしのぐほどになっている。



パートやアルバイトの時給が高くなる、
まさにバブル時代、正社員より
バイトの方が給与が高かった、という現象が、
再来する可能性が高くなっている。



これが何を意味するか?



安定雇用の代わりに低い給与で我慢してきた正社員が、
モチベーションを保てるかだ。



その影響の1つとして、いまでも不安定、低い報酬で、
頑張っている研究者たちもしかりだ。



ノーベル賞受賞の研究は、20~30年前に成果を出したものが、
実用化され、社会に定着することで、
その対象となっていることが多い。



モチベーションが低いままで、成果は出せるだろうか。



日本全体に、労使双方にまだまだ残っている、
企業と従業員の従属関係の慣習を取り除かなければ、
2050年は、日本人が1人もノミネート
されなくなってしまうだろう。



今からでも、「人を大事にする」「個の相互尊重」
という考えを根付かせていかないと、
人材という資源が枯渇し、少子化に拍車がかかり、
文字通り、人材=人口が減ってしまいかねない。



ノーベル賞候補どころか、日本人がいなくなる、
そのような事態を避けるために、政策だけでなく、
日本人の意識の改革も、今迫られている、
決してオーバーな言い方ではなく。



今週もお読みいただきありがとうございました。

2050年、筆者は80歳目前。
この予想が当たらないことを、本当に心が強く願っています。



そのために、今の日本に何が必要か、その一環として、
以前本文に書いた労基法・雇用保険法の改正についても、
火を改めて再提案していきたいと考えています。



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