Column105.日本を潰す?「残業代0」 | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

きょうは、安倍政権が検討を指示した、
「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、
取り上げます。



安倍首相は、多様な働き方を容認する社会づくりの一環として、
給与を労働時間ではなく、成果で測るという、
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入の検討を指示した。



ホワイトカラー・エグゼンプションは、
稼働時間と成果に正の相関関係が見られる工場などと違い、
労働時間では測りにくい仕事に対して、
その成果物に応じた給与を支給するというものである。



つまり、労働時間に関係ないので、
なので”残業代0”という言われ方をする。



”残業代0”という言い方は、少々ずれているように思える。
なぜなら、成果物が良ければ、1時間でももらえるからだ。



となれば、仕事の効率化を図り、長時間労働抑止につながる、
だから、一部で起きている労働強化は誤解、だというのだ。



日本の経営者が、全員「人件費」を「コスト」と考えず、
「投資」と考えるなら、その通りになるだろう。



しかし残念ながら、バブル崩壊後の日本の労働環境の
変遷をみる限り、ほとんどの企業では「コスト」と
とらえていると言わざるを得ない。



最たる例が「労働者派遣」だ。



労働者派遣は、当初「高度かつ専門的知識を要する業務」に
限定されてきた。



しかし、それから20数年、業務に原則制限なしとなっている。
そして、それと相俟って、非正規雇用が激増したのは、
周知のとおりである。



なぜなら企業にとって、直接雇用と違い、
派遣労働者には雇用関係がないことから、
簡単に辞めさせられることができるからだ。



今回の、ホワイトカラー・エグゼンプションも、
年収1000万以上かつ高度な専門知識を要する業務、
とされているが、経済界からは、早くも
その要件の緩和を求める声が上がっている。



既に、労働者派遣法と同じ道をたどる兆候を見せている。



派遣では、非正規が増えて収入が減り、
結婚や子供を諦め、少子化に拍車をかけてきた。



今度は、そのターゲットが正社員になる。



ホワイトカラー・エグゼンプションでは、
何時間働いても「コスト」は増えないことから、
人件費削減をもくろむ経営者にとっては、
うってつけの制度になる。



これが労働強化と言われるゆえんだ。
仕事に生活の大半を取られたら、家庭を顧みる余裕などない。
独身者にとっては、婚活の時間も取れない。



名前の通り、ホワイトカラー=企画、事務職対象だが、
デスクワークでも、企画という成果に掛ける時間より、
時間と成果に正の相関関係にある雑務の方が多いことや、
上司からの細かい指示を受けて仕事が始まることは、
これをお読みの皆さんも、実感されていることだろう。



冒頭にも書いた通り、ホワイトカラー・エグゼンプションは、
「成果」で給与を決める、としている。



であれば、相当の裁量や権限をもち、雑務を一切しない
従業員のみに適用されるべき、ということになり、
ほとんどのホワイトカラーには適用はできない。



しかし先にも書いた通り、経済界は要件緩和を求め、
先例の労働者派遣は、制限がほぼなくなった。



ホワイトカラー・エグゼンプションもそうなったら、
正社員のほとんどが長時間労働の犠牲になりかねず、
少子化への歯止めがますます利かなくなる。



さらなる少子化に拍車がかかったら、
先日の増田寛也元総務大臣が中心となってまとめた、
人口減少社会の行く先が、ますます現実のものとなってしまう。



そうなれば、日本はどうなってしまうか。



ホワイトカラー・エグゼンプションを導入するより、
人件費をコストと考える経営者にとっても、
働き手に取っても、不利益にならない方法はいくらでもある。



その具体策は、小欄でも幾度か紹介してきたので、
ここでは割愛するが、このような政策を考える”有識者”は、
日ごろ接する大企業ばかりでなく、
悪辣経営者に迫害を受けている労働者の現状を
もっともっと知ってほしいと、強く願う。



なぜなら日本の人口の大半は、
経営者ではなく、労働者なのだから。




本日もお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんは、ホワイトカラー・エグゼンプションについて、
どうお感じになりますか。



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