陽は沈み夜空には星
                  
 澄んだ声が私を呼ぶ
               
 私が海へ踏み出すとき
                  
 砂州に呻きのないことを

 果てのない深みより寄せ来る波が
                  
 再び元へ戻るとき 潮は満ちて音も泡もなく
                  
 眠るような動きであって欲しい

 黄昏と晩鐘の響き その後は暗い闇 
               
 私が船出するとき 別れの悲しみのないように

 時と処の境を超えて
                  
 流れが私を彼方へ運ぼうとも
               
 私が砂州を越える時
                  
 案内人と出会い 迷いなく旅立てるよう

 優しく導いて欲しいものだ



                              <砂州を越えて>

沙耶の世界   -saya’s world-
 日は断崖の上に登り 憂いは陸橋の下を低く歩む
            
 無限に遠き空の彼方 続ける鉄路の柵の背後に
            
 一つの寂しき影は漂う

 過去より来たりて未来を過ぎ
                    
 久遠の郷愁を追い行くもの
                    
 いかなれば蹌爾として 時計の如く愁い歩もう
                    
 石を持ち蛇を殺すごとく 一つの輪廻を断絶して
                    
 意志なき寂寥を踏み切る 暗い過去を引き摺りながら


                  
                         <漂流者>

沙耶の世界   -saya’s world-
 夕日の光が美しく流れている
                  
 何という美しさだろう
                  
 家も畠も道も人も金色に染まっている
                  
 まるで火の海だ
                  
 微風が生じて木々や草が優しく戦いでいる
                  
 小さな子供が 道の上に立って夕日の沈むのを見ている
                  
 顔も姿も灯火のような赤い光に
                  
 照らされて透き通るよう
                  
 夕日の光は平和な楽しい世の光り
                  
 失われた楽しみが生き返る
                  
 夕日はいま世界を活気づけているのだ

                    <夕日の光>


沙耶の世界   -saya’s world-
 夕暮れとなり巣に戻る鳥の鳴き声や

 別れを告げる子供の声が聞こえる

 窓に映っていたいた物干しの影も消え

 芒の影もなくなった

 下の方に樫の木の影が薄く映っているだけだ
           
 その影も次第に形を変え 

 やがて窓全体がただ薄暗くなった

 これは太陽の光を借りて

 美の神が私の徒然を慰めてくれた幻灯か

 その幻灯も終わり 目を閉じてぼんやりしていたら

 目蓋を透して月の光がドア越しに青白く照る
           
 風の音は激しく聞こえるが

 もはや木の葉の影も塵の影も

 窓には映っていない


                            <病の窓>

沙耶の世界   -saya’s world-
今日はバレンタインデー
270年頃にローマで殉教した
テルニーの主教聖バレンティヌスの記念日
ローマの異教の祭りと結びついて
女性が男性に愛を告白する日
日本ではチョコレートを贈る風習がある
遅れましたが バレンタインのプレゼントを
頂きました ありがとうございます
皆様にとって素敵な日になりますように。。。

沙耶の世界   -saya’s world-
 苦しみは心の鏡に映ったひとつの世界

 零した涙は 我等を川へ

 流した汗は 我等を海へ

 苦しみの謎は解け 未来の国へ
  
 今日から我等は 甦る

 喜びは涙と汗に輝くひとつの世界

 我等の命は 光に満ちて

 明日の世界へ 羽ばたいてゆく

 苦しみの謎は解け 未来の国へ
 
 明日も我等は 生きてゆく


                             <彷徨いの果てに>

沙耶の世界   -saya’s world-
 哀しくなった時は 海を見に行く

 古本屋の帰りも 海へ足を運ぶ

 独りきりの夜も 海に出向く

 あなたが病気なら 海に向かう

 心貧しい朝も 海へと向かう

 海よ 大きな肩と広い胸よ

 どんな辛い朝も どんな惨い夜も

 いつか終る時が来る

 人生はいつか終るが

 海だけは永遠に存在するのだ


                                <哀しい時は>

沙耶の世界   -saya’s world-
信頼を裏切るのも

信用を失うのも簡単だ

あなたは信頼を裏切った

私は信用を失った

興味本位で近づかないでくれ

優しい言葉で騙さないでくれ

二度と関わらないでくれ

罅割れた関係は二度と元には戻らない

沙耶の世界   -saya’s world-
 この世の害悪の半分は

 自分を重要な人物だと

 思いたい人間が原因である

 彼らは悪事を働こうとしている訳ではない

 彼らは自分を実際よりも

 優れた人間だと思いたいが為に

 果てしない葛藤に呑み込まれていくのだ

 自分に自信がない人は

 目に見えない天井を作り

 自らに課した限界を超える為の

 努力を放棄してしまう


            <トーマス・スターン・エリオット>

沙耶の世界   -saya’s world-