デンゾウのおでんが始まりました
そもそもお店でおでんを出そうと言いだしたのは、マミでした。
それは、お店をオープンする前のこと。
「おでんてさ、メニューにあると必ずひとつふたつ頼みたくなっちゃうよね。それに仕込んでおけば営業中は出すだけだから、簡単そうじゃん!」
という、今思えばなんと浅はかだったのだろうと反省するのですが
それくらいの軽い気持ちでマコさんに提案したのでした。
日本酒メインのお店にすると決めていたマコさんも、おでんと日本酒っていいよね!と、お店のメニューにおでんを加えることを承諾
しかしいざ作ってみると、おでんはとても繊細で手間のかかる料理だったのです
まず、おでんに合うだしを見つけるために市場の鰹節屋さんに通い、何種類もの昆布や魚の削り節を試して、今の『羅臼昆布と鰹節の黄金だし』の比率にたどり着きました。
おでんシーズンには毎日のように10リットルものだしをとっているので、仕込み時間中はBARにそぐわぬだしの良い香りが店内に充満しています
具材にもこだわりが
ひとつひとつのおでんだねを1番美味しい状態で提供するため、個別に丁寧な下ごしらえをしています。
こんにゃくは味を染み込ませるため、一丁に200本もの切り目を入れています
1番人気の大根は、一日にして成らず。
食感や形を崩さないまま味が染み込むよう丁寧に味入れを繰り返し、三日間の仕込み期間を経てお客さまにお出ししています
挙げればきりがないのですが、ひとつひとつの具材に工夫と手間をかけて、丁寧に仕込んでいるんです
営業中も、ただ出せばいいだけではありませんでした
おでんはやっぱり熱々じゃなきゃ!ですが、ずっと火にかけて沸騰させてしまうと、だしが濁ってしまいます。
マコさんは、絶対にだしを濁らせません。
お店をオープンするちょっと前に、マコさんは夢を見ました。
オープンしたお店に、中尾彬さんがおでんを食べに来たそうです。
そして出されたおでんを見て一言、
「だしが、濁ってるね。」
あの渋い声で、そう言って帰って行ったそうです。
目が覚めて、マコさんは「夢で良かった〜!!」と思ったそうな。
その夢が教訓となり、マコさんはおでんのだしが濁らないように、営業中も細心の注意を払っておでんを管理しています。
おでんのシーズンが始まると、マコさんはまるで日本酒の仕込みシーズンが始まった杜氏さんのように黙々と仕込みをしています。
お客さんがたくさんおでんを食べてくださった日は、次の日、またその次の日のために、徹夜でおでんを仕込むこともあります。
そんなマコさんの姿を見ていると、私の思いつきで「おでんやろう!」と言ったのが申し訳なくも思うのですが…
でも、マコさんの作ったおでんを食べると「あ〜、おでんやろうって言って良かった〜」とつくづく感じるのです
デンゾウ・バーで美味しいおでんが食べられるのは、マミの思いつきのおかげ、中尾彬さんのお告げのおかげ、そしてもちろん、マコさんのたゆまぬ努力のおかげなんですね
でもマコさんは、そんなこと説明したりしません。
なのでマミがこっそり、ブログに長々と書いてしまいました
マコさんが言うのは、だいたいいつもこんな一言だけです。
『おでんと日本酒、合いますよ。』
それでは今夜も
デンゾウ・バーでお待ちしています