2016年1月公開作品。
劇場版『あぶない刑事』シリーズの七作目で、公開当時はシリーズ完結編と言われていました。
この先ネタバレ有り。注意。
シリーズ最終作として作られた作品ですので、本作では主人公の鷹山と大下が定年退職するまでの最後の5日間を描いています。
ブラックマーケットを急襲して、そこを仕切っている伊能という男を逮捕し損ねるまでがオープニング。
この辺りはこれまでのあぶない刑事とは違う雰囲気を漂わせており、公開時に劇場で観た時は先の展開が不安になったことを思い出します。
この後、捜査課課長の町田透に伊能を取り逃がした事を叱咤されるのですが、ここでさっき見たばかりの車の横転シーンがリプレイされるという演出には唖然とさせられました。
本作はこのような違和感のある演出が多々あります。
中盤、事件に関わる人物・川澄が逃走したのを大下が追いかける場面で、大下演じる柴田恭兵さんの歌『RUNNING SHOT』が流れるのですが、この曲に妙なアレンジがされていて町田透が『大下先輩!』と叫ぶ声が流れるのです。
初見時、この場に町田が現れたのかと混乱させられました。
舘ひろしさん演じる鷹山に婚約者がいるという設定も、主要な登場人物たちの私生活を描いてこなかったこれまでのシリーズからは考えられないことです。
本作の脚本はシリーズではお馴染みの柏原寛司さんですが、この方が過去に関わった『ルパン三世』などでもキャラクターを理解していないとしか思えないような脚本を書いてこられました。
シナリオ作家協会会長をされていた方ですが、この方の脚本はテンポと台詞回しは良いのですが、物語的にはそこそこ面白いか駄作のどちらかしか無く、残念ながら傑作と思える作品には出会えたことがありません。
本作は幸いにも、そこそこ面白い物語に仕上がっていますが。
そのそこそこ面白い物語をどう演出するかで映画の出来が決まるのですが、本作の監督はやはりあぶない刑事ではお馴染みの村川透さんだけあって、あぶない刑事らしい雰囲気をなんとか保ってくれています。
アクション的には、これまでの劇場版にあった大掛かりな見せ場が一つも無いので、全体的にテレビサイズの地味なアクション映画に仕上がっています。
それでも終盤のオートバイ同士の対決シーンなど見せ場はあります。
仲村トオルさん演じる町田透は、前作で捜査課課長になった事によりキャラが安定して、一時期のようなキャラクターの崩壊も無く、最後まで物語を引っ張ってくれています。
一方、浅野温子さん演じる真山薫は、相変わらずキャラクターが崩壊していて、変なコスプレをする頭のおかしいおばさんになっています。
このキャラクターが登場するたびに物語が壊れるのが実に勿体ないです。
終盤、旧作のキャラクターに戻るシーンもあるのですが、それまでの崩壊っぷりのせいで違和感しかありません。
本作の敵は吉川晃司さん演じるガルシア。
こちらはなかなかの好演で、物語を盛り上げてくれます。
撮影前の事故の影響で、作中では杖をついているのですが、それが結果的にキャラクターに個性を与えています。
本作のヒロインで鷹山の婚約者を演じるのは菜々緒さん。
あまり印象に残らないキャラクターで、殺される為に出てきたとしか思えないです。
正直、いなくても物語に影響しないような気がします。
このキャラクターが殺されたとき鷹山が号泣するのもあぶない刑事らしくありません。
そして忘れてならないのが終盤に登場する初期シリーズで印象的だった覆面パトカー・レパード。
これはシリーズを見てきた人には感涙もののサプライズでした。
本作の終盤、弾薬も残り少ないタカ&ユージが大勢の敵に包囲され、死を覚悟した突破を図ります。
名作『明日に向かって撃て!』を彷彿とさせるシーンです。
ですが、二人は生き延び、ラストは警察を定年退職して、ニュージーランドで探偵をしているところで終わります。
エンドロールにはこれまでの劇場版の名シーンが流れます。
これでシリーズが本当に終わったと思わせるラストでした。
色々と書きましたが、それでも劇場版の中では面白い方の作品だと思います。
ご存じのように、もうすぐ2024年5月24日にシリーズ最新作『帰ってきたあぶない刑事』が公開されます。
次回は、この新作の感想を書こうと思います。