2023年公開作品。

 

北野武監督の最新作で、2003年に公開された『座頭市』以来となる時代劇です。

 

北野武監督の作品はデビュー作『その男、凶暴につき』からほぼ全て映画館で鑑賞しています(1995年公開の『みんな~やってるか!』だけはレンタルビデオでの観賞でした)。

 

監督の作品と私は相性が合うようでして、あまり評判の良くない作品でも私は常に楽しんで観る事が出来ました。

 

初期の作品では映画館はガラガラでしたが、『HANA-BI』でベネチア国際映画祭の最高賞を受賞してからは観客が増えてきた印象です。

 

本作は2017年に公開された『アウトレイジ 最終章』以来、六年ぶりの監督作品となります。

 

この先ネタバレ有り、注意!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

本作は荒木村重の反乱から始まり、本能寺の変を経て、山崎の戦いをクライマックスとする物語です。

 

同じように本能寺の変を描いた作品と言えば、今年の一月に公開された『レジェンド&バタフライ』を思い出しますが、北野武監督作品が好きな私から観ても本作は『レジェンド&バタフライ』には及ばない出来だと思います。

 

戦国時代を舞台にしていますが、観ていて違和感のある作品でした。

 

明智光秀が謀反を起こした原因が、信長が跡目を息子である信忠に継がせようとしていることに怒ったからというのには、あっけにとられました。

 

『秀吉』『家康』『光秀』の三人は信長が健在なのにも関わらず織田家の跡目争いをしており、信長が息子に継がせるという当時としては当たり前な選択をした事に三人は激怒しているのです。

 

この作品は戦国時代を舞台にしていますが、やっていることは『アウトレイジ』のようなヤクザの抗争なのです。

 

予告編で本格的な時代劇を期待していた私は見事に裏切られました。

 

やたらと男色趣味が強調されるのも正直引きました。

 

決してLGBTを否定するわけではありませんが、本作での同性愛の描写はあまり好意的には感じられませんでした。

 

これまでの北野武さんの監督作品は、例え暴力的な描写があっても、少年のような純朴な想いが作中から溢れていましたが、本作では変態的な趣味しか感じ取る事が出来ませんでした。

 

これまでの監督の作品は全て好きでしたが、今作は初めて私には受け入れがたい作品となりました。

 

これまでの作品、特に初期の作品では死にゆく主人公に感情移入させられて涙することもありましたが、本作の登場人物には誰一人として感情移入させられることはありませんでした。

 

北野武監督の映画は、その時々の監督の心情がそのまま作品に映し出されています。

 

前作から六年の間に新しい事務所を設立したり、自ら育ててきたたけし軍団と決別したりと色々あった監督ですが、これらの環境の変化は監督に良い影響を与えていないのでは無いかと思えるような本作の出来でした。

 

キャスティングにも問題があります。

 

本能寺の変の頃の羽柴秀吉は四十代半ばくらいですが、この映画で演じているのが76歳のビートたけしさん。

 

信長よりも高齢の秀吉というのはさすがに違和感がありすぎです。

 

ご自身で演じたいお気持ちも分かりますが、本作に関しては年相応の俳優に演じてもらうべきだったと思います。

 

否定的な意見を多々書きましたが、一般的な邦画と比べたら遥かに映画らしい映画に仕上がっていると思います。

 

決して駄作という訳ではありません。

 

私とは相性が合わなかったというだけですので、人によっては傑作と感じる人もいるかもしれません。

 

もし興味がある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。