2022年12月公開作品。
辺見じゅんさんのノンフィクション小説『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』の映画化。
主人公の山本役を二宮和也さんが演じています。
この先、ネタバレあり、注意!!!!!
この映画は第二次世界大戦後のソ連の捕虜収容所で強制労働を強いられた日本人捕虜を描いた作品です。
強制収容所のことを、残虐な描写はある程度オブラートに包みながらも克明に描写されていました。
作中で描かれる山本幡男さんの遺書を巡る実話は有名ですので、ご存じの方も多いかと思います。
強制収容所では文字を書いた物を所有することはスパイ行為として禁じられていました。
そんな中で、山本さんの残した遺書を強制収容所の仲間たちが分担して記憶し、帰国後、遺族の元へ遺書の内容を伝えたという実話です。
彼らがそこまでして必死に遺書を暗記したのは、山本さんという存在が収容所での彼らの心の支えになっていたからに他なりません。
その辺りの描写も映画では描かれています。
収容所で癌を患い、帰国することもかなわず亡くなる山本幡男さんを二宮和也さんが熱演しています。
本当に素晴らしい演技だと思いました。
収容所に収容させられた日本人捕虜を演じた皆さんの演技も素晴らしかったです。
終盤の四人から伝えられる遺書の場面は、人によっては号泣するのではないでしょうか。
私は涙もろい方ではありませんので泣くことはありませんでしたが、それでも胸が熱くなりました。
とは言え、気になる点もいくつかありました。
冒頭の山本が家族と離れ離れになるシーン、あの別れ方はちょっとどうかと思います。
あの状況なら家族みんなで肩で支えるとかして、どうにか一緒に連れ出して逃げることが出来たのではないでしょうか。
あっさりとその場を立ち去った家族の描写には違和感がありました。
収容所に抑留されてから、松坂桃李さん演じる松田という兵隊の語りで話が進められるのも違和感。
物語は山本中心なのに、語りは脇役の兵隊というちぐはぐさは後半までずっと気になりました。
日本へ帰国する船を犬が追いかけてくるシーンも実話を元に描いていた物語が急に嘘っぽく感じられて残念。
あの犬が帰国後どうなったかも一切描かれていないのも気にかかりました。
夫の死を知った北川景子さん演じるモジミが、家の庭で号泣するシーンも韓国人のような大げさな泣き方で違和感。
あそこは日本人らしくしめじめと泣いた方が心にしみたのではないでしょうか。
そして最も気になったのはラストの唐突に切り替わる2022年の場面。
寺尾聰さん演じる主人公の息子が結婚式で父の事をスピーチする場面は、どう考えても蛇足だと思いました。
あそこで語られる事は、映画を観ていた観客にはすでに心に刻まれていることであり、それをわざわざ言葉で描く必要などなかったのではないでしょうか。
2022年の場面が無く、最後の遺書が伝えられたところで映画が終了した方が、エンドロールで余韻に浸れたと思います。
いくつか気になる点はあるものの、いい映画だったと思います。
観て良かったと思える作品でした。