襖(ふすま)の修復 4 | 伝世舎のブログ

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日々是好日

 10月の「修復のお仕事展Ⅴ」には400名を超える皆さんにお越し頂きました。会場でお寄せ頂いたご意見、励ましのお言葉など、今後の糧として承ります。本当にありがとうございました。

 大分間が開いてしまいましたが襖の修復の続きです。お忘れかも知れませんが、前回は本紙の洗浄についてお話し致しました。
 今回は骨の下張り作業についてのお話です。

 襖は骨に紙を何層も貼って作られます。その上に本紙を貼り込んで完成します。 襖の修復2で解体のお話をしましたが、その時の図をもう一度張っておきます。これが襖全体の構造です。

2-1
襖の構造図


 今回は骨の状態が良かったので、再使用することにしました。旧下張りを剥がした後、作業を進めていきます。
 まず最初にする作業は「骨縛り」です。骨に濃い生麩糊を塗り、丈夫な楮紙を貼っていきます。今回は細川紙を使いました。骨の組子が緩んで歪まないように、丈夫な楮紙を貼って押さえることが目的です。

4-1骨縛り。骨に糊を付け、紙を貼っていく。


 次に「同貼り」です。これは骨のヤニを吸収し、透けるのを防ぐために、ベタ貼り(紙の全面に糊を付けて貼ること)をします。泥入り間似合い紙のような填料(てんりょう)の入った紙を使用します。伝世舎ではタルク入りの楮紙を使っています。

4-2
同貼り。このように填料入りの紙を使う。


 次に「蓑掛け」をします。下張りにクッション性を持たせるため、ロール状に長く継いだ楮紙(細川紙)を段々に重ねて框(かまち)部分に糊を付けて貼ります。中の楮紙は浮いている状態で3層構造をしています。

4-3
蓑掛け。ロール状にした紙を使う。


 次が「蓑縛り(蓑押さえ)」です。蓑掛けの段々になっている楮紙をベタ貼りして、平らな面にします。

4-5
蓑縛り。蓑掛けを覆うようにベタ貼り。

4-4
蓑縛りの完成。


 次に「削り付け」を行います。框部分は内側斜めに削ってありますが、貼り重ねた紙は一部、框より高くなっている場所があります。この余分な部分を削って平らにする作業です。

4-6削り付け。高くなった部分を削り取る。


 次が「下袋」。本紙と下張りの湿度による伸縮の差を緩和させて、本紙が裂け難く、また裂けた場合には、裂けが大きく広がることを防ぐためのものです。楮紙を小さな長方形に断ち、四方にだけ糊を付けて、紙同士を少し重ねながら貼っていきます。袋状に中は浮いている状態になります。

4-8
下袋を貼る。糊は紙の縁3mmくらい


 最後に「上袋」です。下袋と同様の作業です。 この上に本紙を貼り込むので、紙の重なりで表面に出る辺は毛羽状にして、紙の段差を感じさせないようにしています。

4-7上袋用の紙の準備。縁を毛羽立たせる。

4-9
上袋の完成。


 ここまで来れば完成は間近です。この後、本紙を袋の上にベタ貼りして本紙部分の完成です。

 次回は縁等を付けて完成までお話しします。