(2023/2/5)

 

 

(つづき)

 

●モンシェリー

 明るい第1室を抜けると、薄暗い展示室に入る。
 ここにモンシェリーがある。小屋とキャンピングカーからなる大作。


 車の中を覗くと、自転車の車輪の集積。内側の壁には、ぬりどき日本列島の絵がかかっている。大きな缶のようなものが心臓部。

 

 

 


 小屋の壁、窓の上には「ム」「凹」(または「コ」)の形の大きな文字。何かの看板からか。

 


 ところどころにある窓から小屋の中を見る。雑多なものが詰め込まれた室内、中心部には巨大なスクラップブックが置いてある。


 正面から見ると、巨大スクラップブックの裏。動物の頭蓋骨、ギター、銀色のロボットが付いていてかっこいい。金属の棒がモーターで動いてギターを弾き、ウィーンウーンと自動演奏が始まった。
 ところどころにスピーカーがあり音楽が流れる。

 


 大きなボートが車と小屋に2つずつ、上に乗っている。迫力がある。


 タイトルは「モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像」。自分が描いたもの・作ったものではなく、誰かが作ったものを大竹がどこかから集めてきて、貼り付けたもの、それが大竹の自画像になる。それが大竹の芸術であり、何十年もやってきたこと。

 モンシェリーは2012年のドクメンタで展示された作品。
 横浜トリエンナーレ2014で見た「網膜屋/記憶濾過小屋」もこれに似ていたと思う。(巨大なスクラップブックのようにも見えるものの裏にボートみたいなのが付いていて時々蒸気が噴き出る。側面には様々なガラクタがくっついている。内部には大量の古い写真。)


 モンシェリーの周りには、時代も手法もバラバラな作品が並ぶ。このごちゃまぜの中をさまよう感じが良かった。

 「湾」(1990)、「船首影」(1990)。カラフルな抽象画のようなもの。これもいいと思った。
 どういう手法で作られているのか分からない、表面のてかてかな感じが独特(網膜シリーズのてかてかとも違う)。このシェイプドキャンバスは廃船の部品を使っているのだろう。

 

 


 唐突に昔のニューペインティング1点。白い布を被った男。モロッコ旅行をもとにしたものだろう。


 「エコー・オブ・サンダー」(1985-87)。十字架のように、四角を組み合わせたもの。かっこいい。絵の具の物質感。具象(ビル景のようだ)も組み合わされる。上にはライト。


 モンシェリーの奥には大作「東京-京都スクラップ・イメージ」(1984)。


 「Nail Fetish」(1986)。絵に、釘をびっしり刺している。アフリカかどこかの遺物で、こういう人形(釘をびっしりさした木彫りの像)があるな、メトロポリタン美術館で見たと思う。


●そのほかの作品

 大竹ののちの作品につながるとしてしばしば紹介される「「黒い」「紫電改」」。子供時代(9歳)に作ったもので、漫画雑誌からの切り抜きでできている。全景展のときは子供時代の絵も学生時代の絵でさえ一つの壁を埋めるくらいの量が展示されていた気がするが、今回は第1室にハイライト的に時代ばらばらに展示されている。


 展示を見ていて、モンシェリー以外は全景(2006)以降の近作は少ないように感じたが、それは違った。今回の展覧会はキャプションも作品リストも(web上にしか)ないため、近作と気づいていなかった。

 「時憶」。細かいものをいろいろ切って貼り付け。白や黒の細長い紙を切ったものか、それともテープか。これをびっしりと貼っている。その上から黒いペンで線を描く。
 縦・横の方向に統一されているので、カオスな感じではない。中央に木の柱が一本通る。

 

 




 ダブ平&ニューシャネル。大竹はいなかった。残念ながら、大竹がいないと音はならないのだった。