偶然? 計算? 金柑が届いた日

そうよ あれから 気になりすぎる

Berryz工房の「告白の噴水広場」と言えば、昔関西の深夜番組でフットボールアワーの岩尾さんがミュージックビデオを完コピされていたのを思い出すデンです。

 

BSテレ東で放送された、

ドラマ「真夜中にハロー!」第3話を見ました。

 

ドラマのストーリーとメンバーのエピソード、楽曲の魅力が三位一体となった、神回だと思います。(三位一体だけに神回)

「真夜中にハロー!」だけでなく、この手のドラマのお手本になる作品でした。

 

 

【あらすじ】

第3話の主人公吉野あやめさんは、食品関係の企画部につとめる会社員。新しいプロジェクトのリーダーを任される可能性が高く、準備をしたいと、会社近くにある「サンプラザ朝沼」に泊まっています。(会社の名前は果濃食品)

 

℃-ute「ベーグルにハム&チーズ」をBGMにはじまるオープニングシーンは、マリコ&ミサキ親子の朝食から。

トーストに新味のジャム(さくらんぼハニー)をぬるミサキさんを見て、美味しそうと欲しがるマリコさん。ミサキさんはしぶしぶパンを手渡し、2枚目のトーストに“いつもの”ジャムを塗り始めます。

そんな親子を嬉しそうに眺めていたあやめさんは、二人にお礼を言います。ミサキさんが食べる“いつもの”ジャムは、あやめさんが初めて企画開発に携わった商品でした。

 

あやめさんが今日、会社で大役を任されるかもしれないと知って、テンションが上がるマリコさん。

「おめでたい曲ながしてもいい?」

と、4枚のCDを持ってきてしまいました。

※マリコさんの暴走っぷりを感じる4曲。

 

なんとか無事に出社したあやめさんは、朝礼に参加します。

隣にいるのは、後輩の七条紗江さん。

七条さんもあやめさんの企画が通ると思っている様子で、先輩のラフな服装を、今どきのギャルっぽさを残しながら、敬意は感じる口調でイヂります(ビシッときめた服で挨拶をすると思っていた)

表向き謙遜するあやめさんを、「看板商品(金柑ジャム)の立役者なんだから」と励ます七条さん。

声の大きさにあやめさんが慌てたところで、朝礼中の上司から発表された新プロジェクトリーダーは……後輩の七条さんでした。

 

上司のあいさつという形で明らかになったのは、七条さんが「さくらんぼハニー」を企画・開発していたこと。

(朝食のシーンでマリコさんが食べていた)新味のジャムは、金柑ジャムのピーク時をしのぐ勢いの売り上げで、今回、七条さんは「さくらんぼキャラメルジャム」を提案していました。

 

この日もサンプラザ朝沼に泊まるあやめさん。

後輩が抜擢された話をきいたマリコさんは、

「ムムム……そうだ、ちょうど元気の出る曲きいてみちゃう?」と、ハロプロを布教しようとしますが、ミサキさんに止められます。

あやめさんは「(聴かなくても)大丈夫です。別にヘコんでません。むしろ七条で良かったなって」と返しました。

あやめさんは七条さんが1年目のときの教育係だったので、親心のような気持ちがあるようです。

「じゃあそんな時は」とマリコさんは扉の話をはじめますが、ミサキさんに「適当に聞き流しちゃって下さい」と、さえぎられます。

あやめさんの心残りは、七条さんが新プロジェクトのリーダーだと発表された時に「おめでとう」と言えなかったこと。驚きが上回って言えなかった、明日は「おめでとう」を伝えようと決めました。

 

 

翌日。

会社では七条さんが「よろしくお願いしゃーす」と、新プロジェクトの紙資料を上司に手渡していました。

「参考程度に過去の資料をまとめた紙資料っス。結局あの世代って、紙のほうがちゃんと読んでくれるっスよね」

七条さんの説明に「データまとめるの大変じゃなかった? もしかして前から準備してたんじゃないの?」と、プロジェクトリーダーになる気まんまんだったのではないかとカマをかけるあやめさん。

七条さんの「まさか。昨日の夜と今日の朝、電車内で必死こいてまとめたんスよ」という返事に、目を丸くして驚きます。

七条さんの自宅は会社から電車で2時間かかる始発駅にあって、通勤時間を上手く活用していました(始発駅だから座れる) 

 

七条さんの有能ぶりは、紙資料の作成や通勤時間の活用法だけではありません。

可愛いとほめられる赤いニットは、メルカリで買ったもの。有給は連休が伸びるようにとられていて、しかも親孝行に使っています。

昼食は手作りのお弁当で、しらすと枝豆の炊き込みご飯とおかず(鮭や煮物、練り物、プチトマト)が、レタスで仕切られていました。

ちなみに、あやめさんの有給は飛び飛びに取られて、歯医者の予約が入っている。親孝行はできていない。お弁当は白ご飯とおかず(市販のミートボールにソーセージ、ゆでたブロッコリー、玉子焼き)が、バランで仕切られています。

七条さんの生活力に圧倒されたあやめさんは、ちょっとした会話や簡単な質問にも、深読みしたり、何と答えれば格好がつくかを考えてしまい、伝えたかった「おめでとう」が全く言えません。

逆に七条さんから

「昨日、伝えそびれたことがあって」

と話を切り出されます。

「自分は、あやめさんの背中見てずっと育って、今の自分があります。今回のプロジェクトも。だから改めて……感謝してるっス」

 

その夜。

サンプラザ朝沼では、マリコさんとミサキさんが、あやめさんの話をきいていました。

「お礼を言われてこんな感情になるなんて。も~わけわかんない。色で例えると黒、動物ならヘビ、ジャムならイチジクって感じで」

食品会社ならではの独特な例えを聞いて、それは嫉妬だと答えるマリコさん。「誰だってするし怖くなんてないよ。健全健全」と言葉で励ましますが、あやめさんはピンときていません。

あやめさんは嫉妬していたことに気づいておらず、自分とは無縁の感情だと思っていました。

「祝・嫉妬デビューおめでとう!」

マリコさんは拍手をし、「そうだ! ちょうどちょうどな曲があった」と駆け出します。ミサキさんに「もう、結局そのオチ」と呆れられつつかけたのは、モーニング娘。`17の「ジェラシージェラシー」でした。

 

 

翌朝。

出社してきたあやめさんの姿を見て、会社の人たちが驚きます。あやめさんは七条さんが着ていた赤いニットを着て、七条さんが使っている高級ティッシュ(鼻セレブ)を箱で持ってきていました。

口調も「~っス」と、七条さんのマネをしています。

そんな七条さんを見て、

「ちょっといいか」

上司が別室に呼び出しました。

 

「悪かった。プロジェクトリーダー、期待させたよな。でも分かってくれ。七条は見た目や言葉遣いはあんなだけど――」

上司の言葉に「わかってるっス。ずっとそばにいたんで。適任だと思うス」と答えるあやめさん。

安心した上司は、あやめさんの行動が七条さんへの当てつけに見えることを指摘します。

デビューするつもりだったと語るあやめさんに、「新人には戻れないぞ。吉野は吉野の良さを活かせばいい」とアドバイスする上司。

「自分の内側と向き合え」

自分の「良さ」が分からないあやめさんにそう言い残して、上司は部屋を出ていきました。

 

その後、昼休みに声をかけられ、午後から在庫整理の手伝いをすることになったあやめさんは、初めて手がけた金柑ジャムが、他のジャムよりも大きく売れ残った事実を知ってしまいます。

 

残業し、一人パソコンの前に座るあやめさん。

画面には新商品の企画進行書が映っています。

最後に書かれた「プロジェクトリーダー:七条紗江」の「七条紗江」を消して「吉野あやめ」と打ち込み、また消して「七条紗江」に戻す。

 

そんなことをして、深いため息をついた瞬間!

目の前に、扉が現れました。

マリコさん

「みんな、今のあやめさんと同じような思いをバネに変えて、どこまでも飛び越えていったメンバーたちよ」

 

野中さん

「あやめ、私たちも同じだったよ!」

 

あやめさん

「えっ! なんで呼び捨て?」

 

加賀さん

「私はハロプロ研修生からモーニング娘。としてデビューするまで、4年ぐらいかかったの。その間に、20人以上の同期や後輩たちが進んでいく背中を見た」

 

(ここで研修生時代の同期だった牧野真莉愛さんの表情がアップになる)

 

あやめさん

「はぁ…… そうですか」

 

加賀さん

「ずっと一緒にやってきた子が先にデビューして、『どうして私は?』って、『もうどうしたらいいの?』って」

 

あやめさん

「ああ、わかる。その感じ」

 

生田さん

「えりなんて、歌のパート合いの手しかない時あるよ」

 

加賀さん

「悔しくて、うらやましくて、めっちゃ嫉妬した」

 

生田さん

「するする」

 

あやめさん

「合いの手……」

「アイドルも、嫉妬することなんてあるの?」

 

生田さん

「するよ!」

 

石田さん

「でも私たち、そうやって乗り越えたんだよね」

 

牧野さん

「ほら、あやめも!」

扉のなかの楽屋に現れたモーニング娘。`22の7人は、あやめさんを円陣に招き入れると、ライブ前に必ず行う「声かけ」をしました。

 

今夜のステージは、ジャムが積まれた倉庫。

「全力で届けます。聴いてください」

真っ直ぐな瞳であやめさんを見つめる加賀さんの言葉をキッカケに、「ジェラシージェラシー」のパフォーマンスが始まります。

 

モーニング娘。`22のファンにはおなじみ、「ジェラシージェラシー」のラップパートを歌いながら、あやめさんに圧をかける石田さん(右)、野中さん(左)、生田さん(中央)

 

その間に後方では、15期の北川さんと山﨑さんが金柑ジャムの入った箱をひょい、ひょい、と持ち上げて、くるくる踊りながら牧野さんと加賀さんに手渡します。

牧野さんと加賀さんは脚立の上に立っていて、後輩から渡されたジャムの箱を並べていく。ラップパートが終わるころには、あやめさんの前に金柑ジャムの壁が築かれていました。

あやめさん

「なんでこんなことするの……」

 

山﨑さん

「ぐちゃぐちゃになって、前に進まなきゃ」

 

加賀さん

「なんにも越えられない」

 

北川さん

「自分の殻を突き破らなきゃ」

 

牧野さん

「何も始まらない!」

金柑の壁を作り上げた4人の励ましとともに聞こえるのは、ファンにはおなじみの、あのフレーズ。

 

ジェラジェラジェラっちゃう

ジェラジェラジェラジェラっちゃう

ジェラジェラジェラっちゃう

分かっちゃいるけどジェラっちゃう

 

あやめさんの脳裏に、ここ数日間の出来事が次々続々と浮かび上がってきました。

 

Pump up!

Don`t stop!

諦めんな!

 

悔しさが

情熱に

着火

 

「Rich」「Young」「Girly」「細い」

 

あやめさんは叫び声をあげ、金柑ジャムの壁にむかって「チョット愚直に!猪突猛進」します。

※写真はイメージです。

 

全てのみ込んで明日への糧 未来に向かって

Let's go!

 

ここで画面は屋上に切り替わり、

人間 脳なんてきっと多分 ほとんど Made with Jealousy だからこそ明日へ向かう

 

嫉妬を肯定的に歌う「ジェラシージェラシー」の本領が発揮された歌詞が、あやめさんの耳に飛び込んできました。

 

モーニング娘。`22のパフォーマンスが終わると、いつの間にか隣にいたマリコさんが拍手をして、こうつぶやきます。

「文明をつくってきたのは、いつだってジェラシーだからね」

「This is the Hello!」

 

扉が開いたことで自分の内側と向き合い、嫉妬を受け入れることができるようになった あやめさんは、自分らしい格好で出社して、

「私、あんたの背中追っかけることにした」

「きっちり追いついて追い抜くために追っかける」

「だからカッコいい背中、見せといてよね」

「負けないから」

七条さんに伝えたいことを言うのでした。

 

 

【感想】

タイトルにも書きましたが、第3話はドラマ「真夜中にハロー!」のお手本になる回だと思います。

 

最初にお伝えしたい特長は、いわゆる「悪役」が出てこないこと。

新プロジェクトのリーダーに抜擢された後輩の七条さんは、あやめ先輩に感謝していて、成功を鼻にかけるそぶりを見せません。

直属の上司も、七条さんと同じ姿をしたあやめさんを公衆の面前で注意せず、別室に呼び出して先に謝り、七条さんへの理解を求めた上で、今の姿が当てつけに見えると指摘しています。

 

第3話には、第1話の編集者のような「悪役」も、第2話の社風のような「ストレス」も存在しない。

あやめさんが抱える悩みは、自分の内側から出てきた負の感情「できた後輩に対する嫉妬」なので、一歩間違えれば、主人公が悪役になる可能性すらありました。

 

ドラマ「真夜中にハロー!」は、悩みを抱えた主人公の目の前に「扉」が現れて、扉に入ることで解決に向かうファンタジー作品。

フィクションだからこそ、扉のなかで繰り広げられる「次のステージに向かうための準備」には、主人公の心を変えるだけの説得力が求められます。

 

第3話で披露された楽曲は、

ジェラシージェラシー(モーニング娘。`17)でした。

 

嫉妬を肯定的にとらえる楽曲は、主人公の悩みと相性抜群ですが、ここに共感と説得力を加えたのが、モーニング娘。`22の加賀さんや生田さんが語る「嫉妬」エピソードです。

ハロプロ研修生からモーニング娘。としてデビューするまで、4年ぐらいかかったの。

その間に、20人以上の同期や後輩たちが進んでいく背中を見た。

ずっと一緒にやってきた子が先にデビューして、「どうして私は?」って、「もうどうしたらいいの?」って。

 

歌のパート合いの手しかない時あるよ。

第3話のもう一つの特長は、ドラマの登場人物が“ハロプロの扉が開く前に”主人公にアドバイスしていたこと。

しかし、マリコさんの「そんなん誰だってするし、怖くなんてないよ。健全健全」や、上司の「自分の内側と向き合え」といった助言は、あやめさんの心に届きませんでした。

 

彼女が初めて「ああ、わかる。その感じ」と言ったのは、加賀さんの話を聞いたとき。

嫉妬という感情を初めて体験した主人公には、過去に同じような経験をしたアイドルの言葉のほうが響いたわけです。

 

自分と同じ悩み(嫉妬)を乗り越えたアイドルに、

「全力で届けます。聴いてください」

と言われれば、聴くしかないでしょう。

 

そこからの展開はファンタジー要素ですが、モーニング娘。`22のパフォーマンスや途中でフラッシュバックする主人公の記憶など、丁寧に作られていたので、ハロヲタにはおなじみだけど視聴者が疑問に思う「ハロプロに救われる感覚」が可視化できていました。

 

 

最後に触れておきたいのは、ハロヲタの端くれとしての視線。

 

ドラマではあやめさんが七条さんの教育係をつとめていましたが、モーニング娘。にも教育係という制度があって、第3話でジャムの箱を運んでいた北川さん、山﨑さんと、第1話に登場した岡村さん(15期メンバー)の教育係は、

 

加賀さんと横山さん(13期メンバー)でした。

 

加賀さんが話すシーンで映っていた牧野さんは、モーニング娘。の12期メンバー。加賀さんの先輩にあたりますが、二人がハロプロ研修生になったのは2012年の11月で、ハロプロ研修生としては同期になります。

※前列の一番左が加賀さん、隣が牧野さん。

加賀さんが見た「20人以上の同期や後輩たちが進んでいく背中」には、牧野さんの背中も入っていたわけです。

 

ドラマでは、あやめさんが七条さんに「カッコいい背中、見せといてよね」と背中を叩くシーンがありましたが、ハロプロ研修生出身のメンバーには、研修生時代の仲間にカッコいい背中を見せる――自分が活躍することで研修生の実績となり、次のデビューが決まるかもしれないという、使命感のようなものがあると思っています。

ハロプロ研修生がモーニング娘。の新メンバーになったり、新しいグループのメンバーになるのは、本人の頑張りはもちろんですが、先にデビューした元研修生の活躍も大きいのかもしれません。