最近、ネットやSNSで
「ハロプロ」
と検索すると、関連ワードに
「サブスク」
という言葉が入るようになりました。
「サブスク」は「サブスクリプション」の略で、商品ごとに料金を払うのではなく、一定期間の利用権として料金を支払う形を言います。
「2時間3000円で焼き肉食べ放題!」みたいな話ですね。
近年の音楽業界では、「サブスク」を解禁するアーティストさんが増えていて、常識になりつつあるのですが、ハロプロは、現時点でサブスクを解禁していません。
「ハロプロに興味あるけど、サブスク検索しても出てこない」とか「友達にすすめたいのに、サブスクにないから聞いてもらえない」といった話を、耳にするようになりました。
では、なぜハロプロはサブスクを解禁しないのか?
ここからは個人の見解になりますが、ハロプロのサブスク問題を考える上で、注目すべき記事が一つありました。
ORICON NEWS(オリコンニュース)@oriconつんく♂が語る“サブスク全盛時代”の音楽のあり方 近大新入生にメッセージ「聞いた言葉から何を学ぶか」(写真 全3枚) https://t.co/smO8OyROeg #つんく #インタビュー @tsunkuboy
2020年03月21日 10:01
こちらは、つんく♂さんの母校の入学式に関するニュースですが、記事の前半部分で、つんく♂さんがサブスクに消極的だということがわかるのです。
まず、つんく♂さんは「音楽を知ってもらう」重要性を語ります。
「お茶の間はまず音楽をとらえなければならない。そして季節感や思い出と一緒に心に刻んでいただく。これはどんな形であれ音楽のあり方の根本ですよね」
次に話すのは、曲作りの過程。
問題はそれをどう作っていくかです。制作費があって、詞・曲ができて、バックトラックができ、それを今まではレコードやCDとして商品にしてきた。
(中略)
趣味で曲を作ってSNS等にアップして、『いいね』みたいな反応があって、『たくさんの方に聴いてもらえた~』って話は単純にエエ話なんだけど、それだと最初に言った音楽環境の循環が成立していないわけです。
CDが全盛期だった時代。楽曲の作り手には、印税や原盤配当といった収入が入ってきました。このお金を元手にして、次の作品の制作や、新人発掘(音楽業界に必要な人材の育成)に当ててきたわけですが、つんく♂さんは、楽曲が無料になる。あるいは定額で聞き放題になると、この循環が途切れると主張されています。
つんく♂さんが注目されたのは、年間ストリーミングランキング。上位をしめるのは、バンドの皆さんでした。
例えば、バンドマンなら自分たちで全国ツアーをやればいい。
ライブの動員収入もグッズ売り上げも、総計算の収支で黒字ならOKでしょう。という意味では、youtubeでもサブスクでもいいから曲を知ってもらって、『気に入ったらライブに来てね!』となる。
ゴールデンボンバーやプロレスラーの方もおっしゃっていますが、グッズ収入は非常に「おいしい」そうです。サブスクを解禁しているアーティストの多くは、楽曲制作の印税に変わる「打ち出の小槌」を手に入れたのかもしれません。
自分が歌手のうちは『ライブで稼げばいいや』と思う。
でも、僕みたいに歌えなくなった人間は死活問題。
新曲を書くけど、CDが売れないと印税が入ってこない。
サブスクで1億再生して、なんぼ入ってくるのかというのが問題だよね。中古車も買えないんじゃないかな。
つんく♂さんのこの発言は、ご自身がバンドマンであり、アイドルグループをプロデュースしてきた自覚がないからこそ出てきたと、私は思います。
秋元康プロデュースのアイドルグループは、その多くがサブスクを解禁していますが、ファンはCDに音楽以外の付加価値を見出しているので、サブスクが解禁されてもCDは売れて、作詞家には、莫大な印税が入ります。
その上で、秋元さんは総合プロデューサーとして、アイドルの様々なコンテンツ――コンサートの演出やテレビ番組の制作に名前を連ねていますから、そこからも利益を得られる。
これに対して、つんく♂さんは2014年を最後に、ハロプロの総合プロデューサーから、モーニング娘。の音楽プロデューサーへと、立場を変えている。
つんく♂さんの頭の中では、CDもサブスクも音楽を届ける手段にすぎませんから、サブスクを解禁する=今までと同額の印税(次の作品を作るための制作費)は手に入らないと、考えておられるのではないでしょうか?(個人的見解)
モーニング娘。に年号がつかなかったころのハロプロをご存じの方ならお馴染み、ライブのメンバー紹介VTRで登場していた「produced by TSUNKU♂」が復活すれば、つんく♂さんは印税以外の収入を得て、ハロプロのサブスク解禁は前進するでしょう。
しかし、その世界線のハロプロは総合プロデューサーがつんく♂さんですから、2015年以降にできたグループ、入ったメンバー、つんく♂さん以外の方が作った楽曲は、すべて白紙になります。
2015年以降のハロプロは、つんく♂さんや秋元康さんのような「総合プロデューサー」を置かず、様々なアーティストさんに楽曲制作をお願いしてきました。
私は、つんく♂さんが作る音楽の世界観が好きですが、2015年以降のハロプロ楽曲にも、お気に入りがたくさんあります。そのほとんどは、つんく♂さん以外の方がつくられたものです。
素敵な楽曲が生まれ続けているのは、つんく♂さんがおっしゃる「音楽環境の循環」が成立しているからに違いありません。
ハロプロの特徴であり、20年以上続けることができた要因は、まるでバンドのように、全国ツアーを1年中おこなっているところにあります。
これだけ聞くと、ハロプロこそがサブスクに向いているアイドルと言えるわけですが、そんなハロプロがサブスクを解禁しないのは、事務所がつんく♂さんに近い考え方をもっていて、作詞家や作曲家・編曲家を守っているからというのが、私の結論でした。
この仮説は、新型コロナのパンデミックがおこる前の話で、明日にでもハロプロのサブスクが解禁されている可能性はあります。
その場合、問題となるのは(三密を避ける意味で)以前のようなライブができなくなっていることでしょう。
ライブができないということは、サブスクで楽曲を知ってもらっても(サブスク以外の)収入が入ってこないわけですから、例えるなら、釣り場で撒き餌ばかりまいて、釣り糸をたらさないことになります。
追伸
ハロプロにとって、サブスクの代わりになっているのが公式youtubeチャンネル(無料)だと思います。
各グループの公式チャンネルの他、ライブ映像を見ることができる「ハロ!ステ」や、ミュージックビデオの撮影風景やレコーディングの様子が見られる「アプカミ」など、番組も充実していますから、私は(他人様にオススメするさいに)利用しております。ご参考までに。