当ブログは、ドラマのあらすじに注釈を入れる形で書いてきました。ドラマや原作のネタバレを含みますので、御注意ください。
(長文ですが、モヤモヤしている方に読んでいただきたいです)



ドラマ「武道館」の最終回を見ました。
原作を読んでも読まないと、不完全燃焼になるかもしれません。

最終回のオープニングは、第7話のラストシーンから。
主人公の愛子(宮本さん)と幼なじみの大地(吉沢亮さん)の記事が、週刊誌に掲載されることが分かった場面から始まります。
事務所の会議室。一人で座っている愛子。
対するは、チーフマネージャーの野村(木下ほうかさん)です。
「明後日これが発売されることになった」

【人気女性アイドルグループ『NEXTYOU』メンバー(18)
 同じマンションに住むカレと
 ファン裏切り親密デートの日々】


マンション下で待ち合わせて一緒に登校。
カレは同じマンション内に住んでおり、ヒミツの逢瀬は頻繁に行われているという…


野村「まいったよ。武道館前の大事な時期に。お前まで」
愛子「スイマセン」
野村「俺、言ったよな? 今が勝負だから、行動一つ一つに気を遣ってほしいって」
愛子「ハイ」
野村「この記事の内容は事実なのか?」
愛子「同じマンションだし、親同士、仲が良いので、お互いの家に行くことがあります」
野村「じゃあ、家族ぐるみの付き合いで、ただの幼なじみ。
    恋愛関係もない。そういうコメントを出す」

(記事のコピーをつかみ、立ち上がる野村。部屋を出ようとする)
愛子「でもずっとそうしてきたんですよ!」
野村「えっ? 何?」
愛子「歌とダンスが好きなことも、大地が好きなことも、小さい頃から変わらないんです。
    なのに…… 大地が好きなことだけ、急にダメになっちゃったんですね」
野村「当然だろ。お前アイドルになったんだから」

第6話で大人になってから、この日が来るのを覚悟していた愛子。
「歌とダンスが好きな私も、大地が好きな私も、どちらも本物の私だ」と思っているので、彼女のスイマセンは大地との交際ではなく、写真が掲載されたことにかかっています。
ちなみに、原作の第一声は
名前じゃないんですねでした。
愛子「私や碧に彼氏がいる、じゃなくて、女性アイドルに彼氏がいる、って、書かれるんですね」
マネージャー「そんなことより先に言うべきことがあるだろう」
愛子「写真が掲載されてしまったこと、申し訳ございませんでした」

棘がありますねー
現役アイドルが演じるドラマでは、さすがに変えてきています。


大地との関係を、自信をもって選んだはずの愛子。
その感情を揺さぶったのは、共に歩いてきた仲間の怒りでした。


扉の向こうから、前田マネージャー(高畑裕太さん)の声が聞こえます。
前田「おい、やめろって!」
るりか「なんなのよ! もう!」

(会議室の扉を開き、るりかが入ってくる)
(続いて波奈、真由、前田マネージャーが登場)
るりか「無理だよ。
     いくら謝ったって、もう無理」
波奈「るりか」
真由「やめなって」
るりか「ファンの人のこと考えなかったの?
     CDもグッズもいっぱい買ってくれる人のこととか、愛子だったらハカセさんのこととか、
     ぜんぜん考えなかったの?
真由「るりか、後で落ち着いて話しよう。ねっ」
波奈「愛子……
    手、つないだりする時にさ、私たちのこと思い出さなかったの?」

(沈黙が続く)
愛子「思い出したよ」
るりか「じゃあ何でこんなことすんのよ!
     私の夢、壊さないで!
     私、武道館に行くために一番がんばった自身あるっ。
     歌もダンスも必死に練習したし、太らないよう食事だって気をつけてたし、
     ファンの人に気に入られるために、握手会とかいろいろ考えてやったし……
     なのに、碧と愛子のほうが人気もあって、ポジションも良くって!」

(愛子から目をそらさず、泣きながら、自分の気持ちを吐き出す鶴井るりか)
(るりかを支える波奈)
(愛子、立ち上がる)
愛子「るりかゴメン、本当にゴメン!」
(深々と頭を下げる愛子)
(るりか、愛子をにらみ続ける)
野村「愛子」
(波奈、るりかとかき分けて、愛子に近づく野村課長)
野村「アイドルが恋愛をするって言うのは、応援してくれているファンを裏切るだけじゃなく、
    そこにいるメンバーや、スタッフをダマすことなんだ。
    プロとしてアイドルを続けるなら、恋愛は絶対に認められない。
    今後、彼とは2度と会うな。それが武道館に立たせてやる条件だ。
    どうするかは、よく考えろ」

鶴井るりか(宮崎さん)が、愛子に怒りをぶつける名シーンです。
小説「武道館」のクライマックスと言っても、差し支えないでしょう。
ドラマを見ていた視聴者のうち、アイドルファンの多くが、鶴井るりかの背中を押していたと思います。しかし、アイドルに詳しくない視聴者は、その怒りの大きさに、ある種の「怖さ」を感じたのではないでしょうか?
原因は、全8回、1話19分という情報量の少なさにあります。

例えば、原作(小説)の鶴井るりかは――
① 一人っ子で、メンバー最年少の16歳(デビュー時は13歳)
② ツインテールの妹キャラ。メンバーに甘える。すぐ泣く。
③ 成長期で身長が伸び、胸も大きくなった。
④ 大人びた顔立ちになり、髪の毛を切る。
⑤ ③④の結果、ロリっぽくなくなったと言われる。
⑥ それでも、理想のアイドル像を、かたくなに守りつづけた。
⑦ クラスメイトの男子とも全く話さないので、学校で孤立する。
⑧ 孤独な学生生活がファンにバレ、ぼちドル様と崇められる。
⑨ 2期生が加入、波奈の卒業も決まり、先輩の自覚を持つ。

物語を読み進めるにつれて、最年少の妹キャラから、ストイックなアイドル(サイボーグ)に変化する様子を知ることができました。
また、武道館公演で2期生がお披露目されるドラマと違い、小説のNEXTYOUには2期生4人・候補生4人が加入しています。
後輩たちとのダンスレッスンを、1度ならず2度までもサボって、菅野と会った碧。大地とお互いの家を行き来する愛子――スクープされた2人は、るりかにとって、相容れない存在になっていました。

ドラマ「武道館」で鶴井るりかを演じたのは、Juice=Juiceのリーダーで、最年長の宮崎由加さん。撮影期間が1カ月ということもあって、小説のエピソードを入れることはできません。
そこで考えられたのが、原作にない設定――アイドル活動に反対する父親との確執なのですが、一連のエピソードはBSスカパー版の特別映像、地上波で語られることはありませんでした。

フジテレビ系列で見ておられた方にご説明申し上げますと、ドラマの鶴井るりかは、アイドルを辞めさせられそうになっています。
地上波の放送時間がもっとあって、メンバーのエピソードがしっかりと描けていれば、視聴者の違和感も少なくなったでしょう。

「プロとしてアイドルを続けるなら、恋愛は絶対に認められない」
「今後、彼とは2度と会うな。それが武道館に立たせてやる条件だ」


大地を選んでアイドルを辞めるか、別れて夢の武道館に立つか。
大人から選択を迫られ、重い足取りで事務所から出てきた愛子。
待っていたのは、NEXTYOUの仲間であり、帰り道が一緒の友達――安達真由(高木紗友希さん)でした。
真由「愛子」
愛子「真由……」
真由「なんか、大変なことになっちゃったね」

(一歩二歩と、愛子との距離を縮める真由)
真由「るりかほどではないけど、私もムカついてるよ」
愛子「ごめん」
真由「それでも私は、5人で武道館に立ちたいって思ってる。
    1年前は、武道館なんて考えられなかったよね。
    電車に乗ってても、誰にも気づかれなかったし。
    せっかくここまで一緒に頑張ってきたのに…… 
    武道館に、愛子も碧もいないなんでイヤだよ。そんなのさみしい。
    私は信じてるから。愛子が彼氏じゃなくて、私たちを選んでくれるって」
愛子「うん」

だちまゆの優しさが出ているだけでなく、アイドルグループの絆(5人が同じ方向を見て努力してきた証)が垣間見えたシーンです。
小説「武道館」に、このような描写はありません。
日高愛子が「大地」と「武道館」の選択を迫られてから、決断するまでのいくつかのシーンは、ドラマを盛り上げるために付け加えられました。

原作の愛子と碧には、そもそも、選択肢が与えられません。
「中には、武道館に出てほしくないと言っているメンバーもいる」
「卒業じゃなくて、脱退という形でグループから抜けてほしい、と」

るりかとの対決シーンを最後に、12年後へ飛んでしまいます。


続いては、週刊誌が発売された余波について描かれたシーン。
まずはファンからです。
週刊誌に目を通し、ネットの掲示板を見るハカセ(六角精児さん)
【NEXTYOU 完全終了のお知らせ】というスレッドが立っています。
碧と愛子の土下座謝罪会見まだですか?
ファンから搾り取った金、全額返せよwww
今死ねば愛子や碧の子供に転生できる

様々な書き込みが見受けられます。
「こんな大事な時に……」
顔を歪め、机に突っ伏すハカセ。ショーケースの中には、武道館のチケットが大切に飾られていました。
アイドルの恋愛が発覚した時、アイドルを推してきたファンもまた、その度量の広さを試されることになります。
ハカセは(るりかに名前を覚えてもらっているほどの)有名ヲタなので、愛子や碧ほどではないにしろ、揶揄されたでしょう。
しかし、愛子や大地を憎むわけでもなければ、自虐にも走らない。
ただただ落ち込み、武道館公演を直前に控えたNEXTYOUを心配するハカセは、ファンのあるべき姿と言えなくもありません。
ヲタは、逆立ちしたって大地(幼なじみ)にはなれない。
それならば、せめてハカセでありたいと願います。


愛子が通う学校では、クラスメイトが大騒ぎしています。
浮かない顔をしているのは、剣道部の高木恵理(小野花梨さん)
週刊誌に掲載された写真は、彼女が提供していました。
登校してきた大地を見て、静まり返るクラスメイト。
高木恵理が駆け寄ります。
高木「ごめん」
大地「いいよ別に、謝らなくて」

高木恵理は大地と仲が良く、愛子が「自分しか知らない」と思っていた大学受験の残念な結果も、本人から知らされた人物です。
彼女は大地が好きで、愛子を憎く思っているわけですが、2人の写真を流出させても、状況は何も変わらないどころか、悪化するんですよね。
自ら大地との関係を終わらせてしまったと言わざるを得ません。

正直に申し上げると、このタイミングで、クラスメイトの前で謝る理由がわかりませんでした。
(小野さんの演技・表情の作り方は無茶苦茶うまいけれど)


原作では、直接対決が2度ほどあった、日高愛子と高木恵理。
宮本佳林と小野花梨。2人のカリン(しかも同い年!)の対決を見てみたい気持ちもありましたが、実現しませんでした。


学校を休んだ愛子は、自室でNEXTYOUのCDを手に取ります。
野村課長の最後通牒が、頭の中で響きました。
「もう彼とは一切会うな。それが武道館に立たせてやる条件だ」
ノックが鳴り、父親(矢柴俊博さん)が声をかけます。
父親「あいこぉー
   (ちょっと口をとがらせて)大地くんとちゃんと話したほうが良いんじゃないか?」
愛子「事務所の人に『会うな』って言われてるから」
父親「だったら、せめて電話してあげなさい。大地くんも心配しているだろ?」
愛子「……うん」

(学校の道場で、剣道の素振りに励む大地)
(スマホが鳴る)
大地「おう。なんかゴメンな、俺のせいで」
愛子「ううん…… 私こそゴメン。こんなことに巻き込んじゃって」
大地「俺は別にいいけど。愛子はああいう写真出ちゃうとマズいだろ?」
愛子「……この前、事務所の人に言われたんだ」
大地「なんて?」
愛子「『武道館か、大地か、どっちか選べ』って……
    大地はさ、今でも剣道、大好きだよね。自分で選び取ったものだから、大好きなんだよね。
    いま、わたし、自分の好きなものが分からなくなりかけてる」
大地「大丈夫だよ愛子は。ちゃんと選び取ってきたじゃん。ずーっと昔から」
愛子「えっ?」
大地「小さい頃からの夢を実現させて、本当にアイドルになったんだよな。
    そして今、次の夢を実現させようとしている」
愛子「大地……」
大地「武道館、お前の一番の夢じゃんか。あきらめきれるわけないよな」
愛子「どういう意味?」
大地「ごめん余計なこと言って。
    まあ、愛子は、自分で考えて、自分で選ぶよな。これからもずっと。
    俺は、愛子の決めたことを応援する」
愛子「わかった」

このシーンで、原作と違う結末を予想したのは私だけでしょうか?
だって大地がクズなんだもの!(激おこ)
役者さんのさわやかなイケメンぶりにダマされそうになりますが、このシーンで大地がしたことは「責任放棄」です。
全く優しくありません。
大地が言うべきだったのは、
①俺を選んでくれないか?
いつまでも待っているから、今は武道館(夢)を選べ。
このどちらかであって、愛子に丸投げするのはどうかと思います。
彼女を守れないなら、第6話で大人になっちゃイカンでしょう!
君は、アイドルの愛子とイチャイチャしたかっただけなのかい?


愛子が、無責任な大地にバトンを渡された頃――
事務所では、リーダーの坂本波奈(金澤朋子さん)が、武道館公演のポスターを見つめていました。
偶然通りがかった野村チーフマネージャーが、声をかけます。
野村「どうしたー?」
波奈「野村さん……
    私が辞めるって言い出してから、滅茶苦茶なことになっちゃって」
野村「波奈のせいじゃないよ」
波奈「でも、愛子のことも、碧のことも、私、全然気づかなくって……
    リーダー失格ですね」
野村「そんなことないんじゃないかなー
    NEXTYOUのリーダーは、お前しかいないよ」
波奈「まだ、私にやれること、残ってますか?」
野村「うん」
波奈「リーダーとしての仕事、やり抜きます」
野村「頼んだ」

(スマホを使ってラインをする波奈)
(自分の部屋で寝ている愛子に届く)
(街を歩いている碧の元にも届く)
波奈【15時に武道館前に集合!全員参加!遅刻厳禁!】

メンバーとファン、みんなの夢だった「武道館」をアイドル人生の集大成にしようと準備してきた、NEXTYOUのリーダー、坂本波奈。
「手、つないだりする時にさ、私たちのこと思い出さなかったの?」
冒頭のシーンで愛子に投げかけた言葉は、本来は鶴井るりかの発言ですが、波奈に言わせたのは、良い演出だったと思います。

卒業公演に泥を塗られたと怒り出すのではなく、自身の卒業が騒動のキッカケになったのではないかと自問自答し、目が届かなかったことを反省する姿は、NEXTYOUのリーダーにふさわしいと言えるでしょう。

波奈にリーダーとしての仕事を頼んだ、野村チーフマネージャー。
彼の仕事は、夏目プロデューサー(小出恵介さん)への報告です。
野村「申し訳ありませんでした。私の責任です。
    でも、もし、あの子たちが辞めても、今のNEXTYOUの勢いなら大丈夫です。
    真由とるりかが残って、活きの良い2期生も入ってきます」

(直立不動の野村、座っている夏目に2期生の資料を渡す)
前田「代わりってことですか」
野村「ん?」
前田「代わりなんていませんよ。
    ファンは、アイドルなら誰でも良いってわけじゃないんです。
    愛子と碧がいなければ、NEXTYOUじゃありません!」
野村「お前、ちょっと――」
夏目「変化するんだよ。人間は変わるんだ」

(サングラスを外して、NEXTYOUの武道館公演のポスターを見つめる夏目)
夏目「この子たちの場合、本当に短い時間の中で、急激に環境が変化する。普通の人が何年も
    かけて感じるようなことを、ほんの数カ月で感じ取ってしまうんじゃないかな?
    アイドルとして、大きな期待や重圧を背負っているうちに、人間としての変化がおとずれる。
    だから、グループが変化するのは当然だ。
    それを覚悟の上で、あの子達と向き合ってやるのが、俺達の使命なんじゃないのか?」

(立ち上がり、歩き出す夏目)
夏目「いつか、ファンのほうも変化するかもしれませんね」
野村「はい」

アイドルにつくのが初めてに近い新人マネージャーの前田と、これまでに何人、何十人のアイドルと向き合い、卒業や脱退を見送ってきた夏目プロデューサーの違いが出ているシーンです。
前田が言った「代わりなんていませんよ」「ファンは、アイドルなら誰でも良いってわけじゃないんです」は正しいと思いますが、その後に続いた「愛子と碧がいなければNEXTYOUじゃありません」は間違っています。
2期生を募集した時点で、NEXTYOUはモーニング娘。やアンジュルムのように、卒業と加入を繰り返すグループになりました。
野村の発言はたくさんあるアイドルグループの中からNEXTYOUを選んでくれた(オーディションを受けた)2期生の存在を忘れていますし、1期生の3人も、いい気分はしないでしょう。


アイドルとして過ごすうちに、人としての変化がおとずれた愛子。
【15時に武道館前に集合!全員参加!遅刻厳禁!】
リーダーからの伝言を受けて、心が揺れ動きます。
真由(回想)「私は信じてるから。愛子が、私たちを選んでくれるって」
大地(回想)「武道館、お前の一番の夢じゃんか」

迷った愛子は、同じ立場の人間にメールを出しました。
【碧はどうするの?】
(とあるレストラン。武道館が見える窓際の席に座り、待っている愛子)
(遅れて、堂垣内碧が姿を現す)
(席につき、帽子をとる碧)
(碧にとってのアイドルの象徴――ヘアピンで止めた前髪を見つめる愛子)
碧「待たせてごめん」
愛子「ううん」

(窓の外の武道館を眺める2人)
(ウエイターが、注文した飲み物を置いていく)
碧「愛子、前に言ってたよね。
  『武道館は、人が、人の幸せを見たいって思う場所』みたいな」
愛子「うん」
碧「素敵だよね。そんな場所で、踊ったり歌ったりできたら」
愛子「そうだね」
碧「私ね。今まで、正しい選択をしようってずっと思ってた。
   アイドルとして間違ってないか、ネットで叩かれないか、事務所の人に怒られないか、
   いっつも気にしてた。
   でも、正しい選択って、この世にあるのかな?」
愛子「えっ?」
碧「たぶん、正しかった選択しかないんだよ。
   何かを選んで、選び続けて、それを一個ずつ正しかったものにしていくしかないんだよ。
   だから私は――武道館には行けない。
   彼を選んだことを、正しかった選択にしてみせる」

(前髪を止めていたヘアピンをとる碧)
(テーブルの上にヘアピンを置き、そのまま立ち去る)

(武道館で2人を待っている波奈、真由、るりかの3人)
真由「もうすぐ時間だね」
るりか「うん」
真由「来るかな、2人とも」
波奈「あっ」

(3人に向かって歩いてくる愛子)
(笑顔を見せる3人……)

【12年後】 ← !?
堂垣内碧(植村あかりさん)が、武道館ではなく、彼氏を選んだシーン。
原作では、ドラマで大切な人と別れるシーンを撮っていた碧が、急に彼氏と会いたくなって、撮影の後に予定されていたNEXTYOUの(もちろん2期生もいる)レッスンをサボって会いにいく。その前に、駅から愛子に最後の電話をかけるという場面でした。
結果、堂垣内碧は彼氏とのデート現場を撮られてしまいます。
レッスンをサボって会いに行ったのは初めてではありませんから、碧に選択肢などなく、脱退ということになりました。

「正しい選択って、この世にあるのかな?」
「たぶん、正しかった選択しかないんだよ」
「何かを選んで、選び続けて、それを一個ずつ正しかったものにしていくしかないんだよ」「彼を選んだことを正しかった選択にしてみせる」

碧の言葉には一理あると思いますが、できれば、武道館で待っている3人にも伝えてあげてほしかったですね。
波奈や真由、るりかにも、言いたいことはあったと思いますし……
そのあたりは、地上波がいきなり12年後に飛ぶという最悪なパターンだったので BSスカパーの愛子に期待したいと思います。


【12年後の世界】
頭に白いものが目立ち始めた、2028年のハカセ。
12年前と変わらず、NEXTYOUを応援しています。
ディスプレイに映し出されたのは、2028年のNEXTYOUでした。
2028年のNEXTYOUを演じた?皆さん。





12期メンバーがいて、9枚のアルバムを発売しているNEXTYOU。
アルバムをひっさげたワールドツアー`28「NEXT YOU are the world」のツアー日程と、「13期候補生大募集!!」の見出しが目につきます。

【13期候補生募集について】
早いもので、もう13期生ですよ。
初期メンバーが全員卒業してからもう5年が経ちます。
ここまで続けてこれたのもやっぱり1期生の影響が大きかったんじゃないですかね。
僕自身あの子たちにたくさんの刺激をもらったし、
あの子達がいなかったら今頃NEXTYOUはなかったと思います。
世の中は変化しましたね。
昔は、恋愛ぐらいでアイドルは卒業を迫られたんですよ(笑)
今はそんなこと全然考えられませんね。アイドルにもいろいろな形があるんです。
枠にとらわれない自由な発想と、秘めたアイドル性を兼ね備えた、
そんな原石を今年も発掘したいと思います。
少しでも「挑戦してみたい」と思った君。
もう君の前に、アイドルへの道は開かれています。
NEXTYOUプロデューサー 夏目純


NEXT NEWSという項目に書かれた、夏目のあいさつを読むハカセ。
昔は、恋愛ぐらいでアイドルは卒業を迫られたんですよ(笑)
「そうだよなあ~」
12年前を思い出します。
ハカセが開いたのは、12年前のネク!ステでした。

【日高愛子からみなさまへ】
愛子「小さい頃から、歌って踊ることが大好きで、アイドルになりました。
    たくさんの人の前で、歌ったり、踊ったりするのは、本当に楽しかった。
    けど、だんだん『してはいけないこと』が増えてきて……
    誰かの頭の中の自分を生きているような、そんな気がしてきたんです。
    それは…… 私のなりたい私じゃなかった。
    そんなふうに悩んでた時、私のことを、素直に好きって言ってくれる、
    その人の気持ちにだけ応えたいって、思っちゃったんです。
    ……ごめんなさい。
    武道館は、私の夢でした。
    でも、そのステージに立つ前に、私は、アイドルではなくなってしまったみたいです」


12年前の映像を見て、涙をこぼすハカセ。
愛子のことが、本当に好きだったんですね。
愛子のことを、心から推していたんですね。

ハカセ「この愛子の涙する姿に、多くの人が心を動かされた。
     動画の再生回数は、なんと1週間で100万回を超えた。
     愛子と碧は、武道館のステージに立つことなく、グループを脱退した。
     しかし、彼女たちの歌とダンスは、今でもファンの心に深く刻み込まれている」


ドラマ「武道館」のラストシーンとなった、12年後の世界。
映像からわかることは、以下の通りです。
・NEXTYOUが存続(成功)している。
・1期生の最後のメンバーが、5年前に卒業している。
・アイドルの恋愛が問題にならない(12年前の騒動が笑い話に)
・12年前、愛子はネク!ステで脱退を発表。大きな話題となる。
・愛子と碧は武道館に立てなかったが、歌とダンスをは忘れない。


アイドルの恋愛が問題にならないって、どういうこと?
12年前のNEXTYOUは、武道館公演を成功させたの?
初期メンバーの5人6人は、12年後、どうなっているの?


気になる部分が全く描かれていないので、視聴者の皆さんの中には、不完全燃焼に終わった方も少なくないのではないでしょうか?
原作は、NEXTYOUの結成15周年記念「武道館」コンサートに携わるスタッフの視点から、12年後の世界を語らせています。このスタッフはアイドルについてあまり詳しくなく、ネットのまとめサイトと、後輩の笠原(隠れネクス中毒/12年前は中学生だった)から情報を得ています。

①12年後の世界――アイドルの恋愛がタブーにならない社会とは?
武道館公演の影アナを担当する望月美音は、失恋経験をもとに書いた詩が評価されて、電子書籍が大ヒットしていますし、逆に、共感を呼ぶ恋愛ソングでお金を稼いでいた女性アイドルに、恋愛経験がないことがバレて、謝罪に追い込まれたりするのが、12年後の芸能界です。
作者(朝井リョウさん)が希望する、未来の姿なのかもしれません。
小説では“自然と”そのような社会に変化していくわけですが、ドラマのスタッフは違和感を覚えたようで、主人公の愛子が世間に発信すること(ネクステの影響)で、12年後の世界が生まれたように改変しました。
NEXTYOUが売れるキッカケを「歌やダンスのレベルアップ」から「傷害事件の被害者(第3話)」に変えたのと同じパターンで、言わば、業界を知るドラマ班から作者へのダメ出しと言えるでしょう。

(ネク!ステの愛子の演技、宮本さんお見事でしたね)
個人的な思いとして、忘れたくないのは、残ったメンバーの存在です。
アイドルグループのリーダーが卒業して、センターで1番人気の碧と、彼女に次ぐポジションの愛子が同時に脱退したわけですから、当時の混乱は相当のものだったはず。
12年後もNEXTYOUが存続できたのは、るりかと真由、2期生をはじめとする後輩たちが頑張ったからだと思います。

②12年前のNEXTYOUは、武道館公演を成功させたのか?
直接的な描写はありませんが、会話から想像することができました。
笠原「俺がまだ中学生とかのときですけど、
    このグループ、ここでライブする予定だったんですよ、当時のメンバーで(中略)
    今日は、そんな感じでいろいろあった昔のリベンジっぽいですよ

笠原の言葉から、中止に追い込まれたのではないかと予想します。

③初期メンバーの5人6人は、12年後、どうなっているのか?
NEXTYOUの15周年記念ライブは、昼公演と夜公演に分かれます。
夜公演の1曲目は、昼公演に参加していない6人――初期メンバーが歌う(ステージの下の奈落から飛び上がって登場する)サプライズ演出で、これが小説「武道館」のラストシーンになりました。

堂垣内碧は菅野あおいの名前で、実力派女優として活躍しています。
脱退から数年後、小規模の映画で活動を再開した菅野あおいは、その演技が映画好きの間で評判となり、映画中心に活動を続けるなかで、女優として知られるようになりました(アイドル時代を知る人は少ない)
出演作品を自ら選べるレベルの女優になっている菅野あおいですが、プライベートでは、活動を再開してすぐに一般男性との結婚を発表していて、今は二児の母でもあります。

日高愛子は、所属事務所を辞めて芸能活動を引退。
笠原「菅野あおいと一緒に脱退したメンバーも、確かもう結婚してるんですよ。
    けっこう早かったんじゃないかなあ」

とのことなので、幼なじみの大地と結婚したのではないでしょうか。


坂本波奈
安達真由
鶴井るりか
尾見谷杏佳
他のメンバーについては、深く語られていません。
文中に一曲目を歌う六人は、背中を叩き合ったり、似合わない衣装を笑ったりしている。とあるので、12年前の確執のようなものは氷解して「苦い思い出も甘くなる」になっていたのかもしれませんね。


最後に――
原作を読んでいた私が、ドラマ「武道館」で最も印象深かった場面は、12年前の動画を見て涙するファンの姿でした。

「11年後の私は、ベリの動画を見て泣くのだろうか?」


ふと、そんなことを思ったのです。

この続き(結果)は、2027年のブログで書きます。
書けるように頑張ります。