相櫻【89】◇風見鶏◇
実際には酔い潰れるまで飲むほど雅紀は飲まない。
酒に弱いことを自覚してるからなんだけど。
でも、ちょいテンション高くなったり、涙脆くなったりはする。
「しょーちゃん、お風呂行こ♪」
今夜はテンションが高くなるパターンだ!
風呂行こって言って、いきなり押し倒してきて脱がしにかかる。
「雅っ、、行くから…
自分で脱げるって!」
「くんくんくん、、しょーちゃん、いい匂いがするぅ♪」
「ちょ、汗臭いだけだって…」
「食べたぁい…食べてもい?」
だめっ!
絶対、だめっ!
目が虚ろなのに、すげー怖い!
これ、本気だ!
絶対、本気だ!
「風呂は?雅紀、ね?風呂!
汗流したらサッパリするぞー?」
「汗、、ベタベタしたもんね?」
「だから、サッパリしたいだろ?」
「今日、暑かったもんね?」
「だから、、風呂!な?」
「しょーちゃん、、」
「ん?」
「食べたい…」
なっ!
そこに戻るな!
埒が明かないから、俺が雅紀を脱がしにかかる。
こうなったら強引に連れて行こう!
風呂上がったら、多分寝るだろ。
と思っていたのに、風呂に入ると雅紀は少し酔いが覚めたみたい。
だけど、悶々とした気分は残ってるみたいで、視線が痛い。
自分で洗えるっつってんのに!
「はい、頭終わりっ♪
次は身体ね♪」
「じゃ、俺が雅紀の身体洗うよ…」
「うそっ!?」
「えっ?ダメ?」
「ふふふ、、すげー嬉しいですっ♪」
そうなんだ。
雅紀がすげー嬉しそうに笑うから、こんなことで喜んで貰えるんだなって。
ボディタオルを手に雅紀の身体を洗い始めたら、雅紀がすげーにこにこしてるんだけど。
怖い・・・。
「背中…向こうむいてよ。背中洗うから。」
ドキドキしてることを隠したくて、ぶっきらぼうな言葉遣いになってしまう。
なのに、雅紀はさらに、にこにこしてさ。
「背中は、前から洗うんだよ?」
「前から?背中だよ?」
雅紀の膝に跨がるように抱きかかえられた。
「こうやって、手を後ろに回して背中は洗って?」
「マジか…!」
思わず声に出てた。
この格好で背中を洗うって、、さらに密着しないと洗えないんですけど?
「オレも洗ってあげる…」
逃げるより早く雅紀の手が俺の背中を捕らえていた。
「あっ、、、」
背中に回された掌が滑り出して、耳には唇が寄せられた。
「しょーちゃん、、食べたい…」
…つっぱしる…