出発前日のことだった。岡山の路面電車、岡山電気軌道のウェブサイトを
見てのことだった。当日の予報は「晴れ」。
ビル影に入って撮りにくいかなぁ...と思いながらの岡山入りだった。
それが
「3005号(東武鉄道日光軌道線復元塗装)ゴールデンウィーク特別運転」
である。どうしても、一度撮ってみたいと思っていた電車、意外な形で
撮影機会が到来したのである。岡山駅で「みまさかノスタルジー」を撮って
大急ぎでホテルへ。荷物と三脚を預けると、岡山駅前の電車のりばに
急いだのだった。
…… ……
私が昔、興味を持ったのは路面電車だった。新幹線でも夕方の東京駅を
出発していく九州ゆきの特急寝台ブルートレインでもない。
街の大通りをゴロゴロと音を立てて走る、トラムの姿だった。
倉敷と岡山は電車で15分ほど。岡山市内には路面電車が走っている。
2路線合わせて全長は5キロほど、「本線」格の東山線は全長3キロ。
車輛数も少なめ。
岡山電気軌道東山線・東山電停付近
7000~8000系列の角張ったスタイルの電車と、超低床連接車
MOMOが中心。吊り掛け駆動車はあっても、冷房付きの明るい電車で
全運用を賄っている。
でも、そんな岡山電気軌道に<変態鉄>が気になっている1両がいた。
それが3005号車「日光号」、非冷房、車内灯は白熱灯のまま。
実は半世紀前に廃線となった東武日光軌道線からの譲受車。
岡山電気軌道東山線・門田屋敷電停付近
世の中が大阪万博で沸いていた頃、東武鉄道が日光で運転していた
路面電車が廃線となった...
と言っても、自分が生まれる10年前、もちろん記憶など無い。
その頃、自動車の増加で厳しい時期を迎えていた岡電だが、戦前からの
四輪単車の置き換えが急務だった。1953年(昭和28年)製造、新製から
10年で用途廃止となった東武日光軌道線の主力車100形は、2回に分けて
10両が岡山入りした。
板張りの床、白熱灯照明、もちろん非冷房。すでに全部の運用を冷房付きの
車両でカバーできるようになって久しく、10両の仲間も順次廃車が進んで
いった。
1両は、まっ黒に塗られ車内を木張りのシートに交換、「KURO」として
運転されている。そう、「ななつ星」などのデザインで有名なあの御方である。
そして、もう1両が「日光号」。要望などもあって東武日光軌道線時代の塗装に
塗り替えられたのが3005号車。冷房を使わない秋から初夏にかけて、毎月1回、
土曜日の昼間に東山線を2往復するだけ。土曜日が公休日になったのはいまの
会社に入って初めてという自分、「いつか撮りたい!!」の筆頭格とも言える
存在だった。
出発前日、偶然、見た岡山電気軌道のウェブサイト、そこで見つけた
「3005号(東武鉄道日光軌道線復元塗装)ゴールデンウィーク特別運転」
である。10時40分に東山を出庫、岡山駅前までの東山線を4往復するという。
しかも、5月2日から8日までの1週間にわたる運転期間、これは撮らずには
居られない。津山線沿線で「みまさかノスタルジー」を撮るべく、津山線沿いの
撮影地を探していた自分だったが、急遽、方針変更となったのだった。
岡山駅前電停から東山ゆき。車内で運転士さんから1日乗車券を購入した。
東山は電停の先、東山公園に突き当たる手前で線路はY字型に分岐しており、
道路の北側が車庫、南側に工場がある。何度も撮りに訪れており、その辺は
心得ていた。まず、出庫風景を撮るべく、東山に向かったのだった。
いま、岡電を走っている電車は3000形と、超低床連接車MOMO(9200形)を
除いて全面広告車になっている。7202号はOHKという地元放送局の広告電車。
岡山電気軌道東山線・東山電停付近
この写真の地点、つまり東山電停前で道路は狭くなって、左に曲がる。
そして、道路の真っ正面にあたる写真右側が広~い石段になっており
東山公園。石段に立って、東山電停に停車中の電車を俯瞰気味に撮るのが
“定番”。
岡山電気軌道東山線・東山電停付近
ところで、この地点に来ると気になるのが、その道路が少し狭くなった
先にあるこの“歩道橋”。何だか鉄道用のデッキガーター橋のように
見えてならない。
来る度に気になるが、調べてみてもなかなか見つからない。何かの
廃線跡なのか、それとも、転用したのか。気にはなっているのだが...
単なる歩道橋なのか!?
岡山電気軌道東山線・東山電停付近
さて、道路の南側には岡電の車両工場がある。その敷地内に、
あのデザイナー監修でオープンした「おかでんミュージアム」である。
ミュージアムとはいえ、内部は<鉄>向けの展示よりも、MOMOの
デザインに関する展示などが中心だとか。時間があるときに一度、
内部を見てみたいとは思うが...、それより「日光号」。
出庫風景を見なければ...
すでに東山電停付近には多数の“同業者さん”、めいめいのポジションで
カメラを構えていた。
でも、まずは工場内を覗き込んで...
岡山電気軌道東山線・東山電停付近
建屋内ではもう1両の3000形「KURO」が工場内で整備中だった。
その向こうには...
岡山市東区・東山公園付近
ちょうど車庫の一番奥、トラバーサ-に乗っていたのはネコ耳付きの
電車である。「タマ電車」。南海貴志川線を引き継いだ「わかやま電鐵」は
岡電の系列...その駅ネコ、先代「タマ」が亡くなったときは社葬になって、
TVの全国ニュースにもなった通り。南海から経営分離になったとき、
引き継いだのが岡電の両備グループ。そのご縁か、同じデザイナーさんの
電車が走り、あちらも活性化されているとか。かつて某所の撮影会で
ご一緒した岡電職員の方が、その秘話を教えてくれたのだった。
岡山市中区・東山公園付近
さてさて、まだ動き出すまで時間がありそうだったので、道路の北側へ。
となれば公園内を経由して、あの橋を渡ってみようと考えたのだった。
もちろん、密かに狙っていたのが...
岡山市中区・東山公園付近
そう、車庫内を俯瞰してみようという考えだったのだ。
とはいえ、世の中そんなに甘くは無い。もちろん、ブロック塀に阻まれて...
でも、上半身だけでも(笑)、3005号確認である。パンタも上がっている。
という訳で、公園を出てこの塀沿いに通りに戻ったのだった。
岡山電気軌道東山線・東山電停付近
門の前で待つこと暫し、運転士さんが3005号車に向かっていくのを確認。
いよいよ、である。