「男はな、ハゲたら終わりや」オヤジが神妙な面持ちでそう言い残し洗面所から立ち去って行った、当時まだフサフサの小学生だった僕は何の事やら分からずポカンとしていたが、その恐怖は僕が高校生になった時に現実味を帯びてきた、「のらってハゲてるよな」友人の心無い一言で全身から冷や汗がにじみ出た「いやいや、剃刀で剃り込み入れてるねん」そう言って茶を濁し思春期をやり過ごしたが、月日が経つにつれて残酷におでこは後退していき30歳の頃にM字型ハゲが完成した、「男はな、ハゲたら終わりや」オヤジが残したその言葉の意味を今、砂を噛むような思いで噛みしめている、初対面で女性と対峙をした時、真っ先に女性の視線が僕のM字型ハゲに突き刺さり、「はぁ…」と心のため息が聞こえてしまうのだ、8000円の育毛剤を3年使い続けているが変化はない、キープしているのか?行くも地獄、戻るも地獄とはこの事だ。