僕の唯一の趣味は禁煙をしている人に喫煙を勧めることだ、目の前で旨そうに紫煙を吐いて「旨いぞ~、一本だけ吸ってみるか?」と言うとほぼ100%牙城が崩れる、体に悪いことをシェア出来るとなんだか嬉しくなってしまう、我ながら最低の趣味である、これは僕に限ってのことではない、「俺を勧めた酒が飲めんのか?」というアルハラから「女の若さは金になるのよ」という風俗の勧誘、「神様に仕えて幸せになりましょう」という布教活動まで、実に様々な形で人間は仲間を増やそうとする、人間関係は煩わしくて面倒臭い、だから僕はほとんどの人間関係を断った、嫁がダイエット中にも関わらず夜中にポッキーを食べていた、罪悪感で苦しくなったのだろう、残りの2本だけを僕にバトンタッチして共犯者を作って安心したかったようだ、往生際の悪い子豚、体重計は機械的に残酷な現実を嫁に数字で叩き出していた。