前回で終わりのつもりでしたが、アニメの1シーズンは12回だよなと思い直し、補足として「今後使えそうなパターン」をまとめてみようと思います。「なろう系」の作家さんがこんなブログを読んでいるとは思いませんが、よろしければ参考にお使いください。

 


1.会社員ゲーマーの召喚もの(ただし、召喚の理由なし)

典型的な召喚ものでは、召喚されるのが中学生か高校生で、召喚した相手の目的にしたがって戦うことになります。

この型の問題については、すでに書いたように、典型的な召喚型の問題点の徹底的な検討の上で作られたと思われる「転スラ」や「異世界放浪メシ」をご視聴されるのがいいと思います。

一方、20代のサラリーマンが召喚される設定にすると、主人公に性格が与えられるため、戦いのインフレ・ハーレム形成とは異なる物語展開ができます。

またその際、召喚の目的がはっきりしているとドラマの展開上厄介なので、召喚の目的についてはまったく触れないか、「異世界放浪メシ」のように、「なにかの間違いっぽい」召喚にしてしまうのがよさそうです。

このパターンには、大きくふたつのタイプがあると思います。それは、

A.ゲーム的なチートが与えられる場合には、主人公をモテそうにない外見にする
B.普通のサラリーマンを主人公にする場合には、変わったチートをもたせる

Aについては「異世界おじさん」「骸骨騎士様」が該当します。魔神とか動物にしてもよさそうですが、主人公ではなくなってしまいそうです。なぜモテてはいけないかといえば、視聴者から見て共感しにくくなるというのが理由です。なお、この2作品とも「標準異世界から現世に戻る」可能性を留保しているようなのは面白いなと思います。

Bについては「異世界放浪メシ」「便利屋斎藤さん」などが該当します。こちらは外見的にも普通のサラリーマンですから、ちょっとぐらいモテてもいいでしょうが、長く続けたい場合には「異世界放浪メシ」のムコーダさんのように、女性との関わりを巧みに回避するほうがいいような気がします。この2作品では、主人公自身が次第に、自分が生きていた人間界より異世界のほうがいいなと思うようになっていくのもAとの対比で面白いです。


2.プロゲーマーの転生もの(ただしゲーム的なチートはなく、そもそも人間に転生していない)

このタイプの該当作品は見つけられませんでした。

イメージとしては、プロゲーマーが小動物とかコップのような「モノ」に転生し、「思念伝達」や「精神の共振」などによって、誰かの手助けをしながらアテのない旅をするという話です。『転生したのにチートが使えないんだが.. プロゲーマー槍過剣志郎、異世界放浪記』とかいう感じのタイトルなんかよさそうな気がします。

この場合、「ゲーマーが異世界に転生するのに理由はいらない」とかで、理由付けは「なし」のほうがいいと思います。


3.人間以外への転生もの(チートあり)

典型的な転生ものは「学園もの」を兼ねることで読者・視聴者をつかもうとしているようですが、マンガはともかく、アニメにする場合にははなはだ残念なことになる可能性が高いことはすでに何度か指摘しました。「学園もの」といいながら、中の人がおじいちゃんやおじさんでは「学園もの」だと思って見ている人のニーズに合わないからです。

標準異世界ものは、いまや「学園もの」に勝るとも劣らないだけの市場と認知度があるのですから、わざわざ学園ものにする必要はないのではないでしょうか。

転生ものをアニメ化する場合の問題は、主人公が転生前の年齢水準まで成長するのに時間がかかることです。これを回避する手段として、「人間でないもの」に転生させてしまえばいいというわけです。

このタイプの大成功作として「転生したらスライムだった件」があります。スライムだと成長しなくともいきなり大人ですからね。

スライム以外で同様の大胆な設定を思いつければ「勝ち」ですが、人形に転生したり、一定の時間が経つと別なものに転生(転移かな)するという設定にしても面白そうです。


4.断片的にしか前世の記憶のない転生もの

これは前回名前をあげたアファナーシェフ型の物語に転生ものを組み合わせた感じの型です。可能性としてはなかなか豊穣ではないかと思うのですが、ぴったりする作品は思いつきませんでした。

ただし「Re:ゼロからはじめる異世界生活」については、主人公ではなくヒロインがこのタイプに分類できるかもしれません。

このタイプでは、主人公は異世界で普通の生活を送っているのに、ふとなにか奇妙な記憶なり、言葉なりを時々思い出すとか、立ち入ってはいけない森や部屋があるといった設定にし、不思議な存在との出会いなどを経て、少しずつ謎が解かれていくという展開が考えられます。

途中で、自分を転生させてくれた神に出会うのもいいでしょうし、神の使いである魔法使いや妖精と話すのもいいでしょう。

転生に際して主人公が「平和な生活」を望んだものの、神のほうでは主人公がそれに満足しないのではないかと危惧をしていた。それで、一種の結界を作ってその中で生活させていたのが。。。 そんな感じの展開も面白そうです。

もっとも舞台を標準異世界にとどまらせることは難しそうで、異世界の結界から外に出たあとのことを考えなければならないでしょう。これでは標準異世界ものとはいえないかもしれませんね。


5.痕跡程度に理由付けをした転生もの

転生もののうち、転生前の主人公にあまり性格づけを行わず、過去の記憶もほぼ出て来ないタイプの話です。

「最初から異世界の住人」というタイプと似ていますが、冒頭に転生の話を少しだけ入れることで、「転生もの」であることを印象付けます。こうすることで、他の異世界人から見て「何かがちがう」という設定にしやすい上、過去の経験を使える局面もあるなど、使いやすい型です。

作品としては「異世界のんびり農家」「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」などがこのタイプで、チートとスローライフを兼ね備えたのんびり異世界ものを作ることができます。

このタイプの話は、平和で居心地がよいせいか、いつの間にか住人がどんどん増えてしまい、「異世界のんびり農家」などとんでもないことになってしまいましたが、今後増えていく可能性の高い型ではないかと思います。


これでアニメの話は本当に終わりです。次回は大きく内容をかえて、親鸞聖人の観音信仰という微妙な題材について書いてみようかと思っています。