貴乃花親方が引退を決断するに至った会見での説明は理解できた。
だがその決断の胆となる部分、すなわち親方が春に内閣府に提出し後に取り下げた「告発」の内容を「事実無根」とした相撲協会と、それを認めることは出来ないとした貴乃花親方、両者が決裂した決定的なポイントが分からず、すっきりしない。
吾輩が会見場にいたらそれを聞きたかった。
もしも折り合わない見解があり、かつ自分たちの組織の未来を双方とも進化させたいと考えているのであれば、膝をつき合わせ意見をぶつけ合い是正点や至らなかった部分を互いに顧み、今後の糧として生かしてゆくのが、組織やその構成員としての成熟した姿だが、この案件ではそういう場が設けられなかっただけではなく、雰囲気も存在しなかったことがうかがわれる。

貴乃花親方は現役時代名横綱として相撲人気を支え、親方になっても数多くの関取を輩出し協会に貢献してきた。そういう人物の辞め方がこういう形で良いのか疑問を持たざるを得ない…と言うか、我々相撲ファンはちっとも嬉しくない。

「愉快なニュースだ」と思った相撲ファンは果たしているのだろうか?

 貴乃花親方だけでなく、平成初頭期の一大相撲ブームの花形力士の多くが協会を離れている。
曙、小錦、若乃花(勝)、舞の海…。相撲協会に残る魅力が欠けているのかなと思わざるを得ない。
理由は色々異なるが朝青龍や日馬富士も去ってしまった。
これで第64代・曙から第70代・日馬富士までの7人の横綱のうち5人が協会を去ることになる。平成期に昇進した現役を含む全ての横綱という枠で括っても10人中5人の半数だ。
横綱経験者が続々と去る。長い大相撲の歴史の中でも特異な事象である。
かつての花形力士が、未来の相撲界を盛り上げていく姿を見たいのに、そうなっていかないのはファンとして寂しいし残念な限りである。
 
 また、所属部屋を代えることとなる弟子たちの今後も心配だ。環境が変わり、師匠が代わった力士で伸びが止まってしまった例もかつて多い。逆もあったが。
 
 貴乃花親方は、自身が他の力士たちと異なる境遇で相撲界に存在した人物。
太平洋戦争後、角界の再興の最先端を担った伯父・若乃花(横綱初代)。父はその弟で昭和末期の大スター、炎の大関貴ノ花。
入門前、小学生の時からカメラに追われ、良くも悪くも常に脚光を浴び続けた貴乃花親方は、個人競技である相撲の「孤独」を誰よりも知り尽くし、弟子たちにもその厳しさを伝えようとしていたように吾輩は思う。
 

 日本相撲協会の未来のためには、そういうちょっと異分子たちの存在「こそ」大事にしてゆく必要があると、吾輩は考える。自由民主党の様にしたたかに強い組織になるために。
角界の未来を憂う。

 

追伸。広島カープ、リーグ優勝へのコメントはまた明日以降になりそうだ。
ではまたWebRock!