大相撲の鳴戸親方(元・第59代横綱・隆の里)の訃報が昨日届いた。急逝である。

  同じ日に同じ夜行列車で青森から上京し、同じ二子山部屋に入門した齢下の若乃花(横綱二代目若乃花。第56代横綱。現・間垣親方)が華やかに脚光を浴び早々に横綱に昇進、後輩力士たちにも次々と先を越される中、隆ノ里は糖尿病と闘い続け過酷な節制生活と忍耐と努力の末30歳にして横綱まで上り詰めた(その時同期入門の若乃花は既に引退していた)ことは、時を経た今でも語り継がれ全力士の模範となる功績だ。

  また世の中が千代の富士フィーバーに沸きかえる頃、横綱昇進前後の千代の富士に8連勝したことは、相撲通の琴線に触れたものとして印象的である。隆の里は、双葉山以来45年ぶりの新横綱全勝優勝や史上4度しかない「双方全勝横綱同士の千秋楽決戦」を千代の富士と取るなど、一般には余り知られていないが好角家にとっては大きな記録を残している。

現役を引退した後に、相撲の専門誌で対談をした際吾輩が、「親方くらい沢山の悔しい思いをし続け、それを不屈の精神力で乗り越えた力士もそうそういないですよね?」と水を向けると、笑いながら目をうっすらと潤ませていたことが印象深い。

鳴門部屋を興してからは熱心な指導でも知られ、特に今年に入ってからは番付運もあったが二人の新入幕力士が部屋に誕生。昨年白鵬の連勝に土をつけ波に乗る部屋頭の稀勢の里はいよいよこの十一月(九州)場所に満を持して大関昇進をかける場面。まさに部屋に大輪が咲かんとしていた矢先の急逝だ。それを見届けることなく鬼籍に入られたことは、隆の里ファンであった吾輩からしても無念である。

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