ベルギー・アントワープの聖母大聖堂 (ノートルダム大聖堂)

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サッカー日本代表は現在、ベルギー遠征を行っているが、私は2月中旬にベルギーのブリュッセルとアントワープを訪れた。旅程が1か月ずれていたら、ついでに代表戦を現地で観戦できたけど、こればかりは仕方がない。

ベルギー訪問は約20年ぶり。街並みは以前と大して変わらないが、アジア系、特に中国人観光客の姿が劇的に増えた。

これはベルギーに限った話ではないが、ブリュッセルの名所グランプラスが中華風のオブジェに占拠されている光景を見て、ため息が出た。中国マネーの前に欧州も魂を売り始めたってことか。

それはさておき、ここからアントワープの話を。
アントワープは、ベルギー・フランドル地方の港湾都市で、人口は約50万人。ダイヤモンドとワッフルで有名だが、日本人には、アニメ「フランダースの犬」の舞台としても知られている。

「フランダースの犬」といえば、涙無しでは見られない最終回を思い出す方も多いと思う。そのラストシーンで、主人公のネロと愛犬パトラッシュが天国へ旅立つ教会が、今回訪れたアントワープの聖母大聖堂(ノートルダム大聖堂)だ。

まずは「フランダースの犬」最終回までを簡単に。
2歳で母を失くした主人公ネロは、おじいさんと老犬パトラッシュと暮らしていた。生活はとても苦しかったが、ルーベンスへの憧れを抱き、画家への道を夢見ていた。

ネロは、ガールフレンドのアロアと仲良くしていたが、アロアの父コデツとその腰巾着ハンスから理不尽ないじめを受け続ける。そんな時、おじいさんが病気で他界。嫌味なハンスから放火の濡れ衣を着せられ、牛乳運びの仕事を失う。

そして最終回。
食いぶちを失ったネロは、一発逆転を狙って高額賞金が出る絵画コンクールに応募するも落選してしまう。クリスマスの夜に最後の望みを絶たれたネロ。家賃が払えなくなり、極寒の吹雪の中家を出る。ネロはその途中、アロアの父コデツが落とした全財産のお金を拾い、アロアの家まで届ける。それを後で知ったコデツは、これまでのネロへの仕打ちを悔いるが、ネロは既に姿を消していた。

ネロはその頃、アントワープの聖母大聖堂へたどり着く。教会に入ると、普段見ることができない憧れのルーベンスの絵に初対面。そこにネロを探していたパトラッシュもやって来る。しかし、飢えと寒さで限界に達したネロとパトラッシュは、ルーベンスの絵の前で力尽き、天使に導かれ天に召される。

ネロ臨終前のセリフは、
「パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだか、とても眠いんだ、パトラッシュ...」

そして最後のナレーションは、
「ネロとパトラッシュは、おじいさんとお母さんのいる遠いお国へ行きました。もうこれからは、寒いことも、悲しいことも、おなかのすくこともなく、みんな一緒にいつまでも楽しく暮らすことでしょう」

なんて悲劇的なラストなんだと今でも思う。
アニメファンではない私も、思い出しただけで涙が溢れそうになる。こどもの頃に初めて見た時は、あまりの悲しさで、しばらく立ち直れず、こんな残酷な物語はもう絶対に嫌だと思った。

ネロが死ななければ状況が一気に好転したのに、なんで死んでしまうフィナーレにしたのかと。だが、ネロもパトラッシュも助かるハッピーエンドだったら、感動作として後々まで語られることはなかっただろう。

ところで「フランダースの犬」は、ほぼ日本人にしか知られていない物語だという。原作は、1872年にイギリス人作家ウィーダによって書かれた童話で、イギリスと日本でのみ出版された。

日本では、1975年放送のアニメ作品で一気に世に知れ渡った。そのアニメの初回放送や再放送を見た日本人観光客が、アントワープの聖母大聖堂を頻繁に訪れるようになり、ようやく一部の地元の人にも物語の存在が知られるようになった。

アントワープの聖母大聖堂では、アニメに出てきたルーベンスの祭壇画を実際に観ることができる。

展示されている絵画は、「キリストの降架」、「キリストの昇架」、「キリストの復活」、「マリア被昇天」の4作品。ルーベンスの絵の前で最期を迎えたネロの気持ちを想像しつつ、じっくり鑑賞した。

世界遺産に登録されている聖母大聖堂は、高さ123メートルの尖塔が特徴的で、アントワープのシンボル。

教会内部に自然光がうまく取り入れられ、中は意外と明るい。白い壁には細かな装飾が施され、色鮮やかなステンドグラスや祭壇が美しい。「フランダースの犬」を知らなくても十分見応えのある教会だ。

聖母大聖堂へは、アントワープ中央駅からトラムに乗り、3つ目のGroenplaats駅で下車し、駅から徒歩2~3分で到着。聖母大聖堂の入場料は6ユーロ(大人)となっている。

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ルーベンス作「キリストの昇架」
「フランダースの犬」の最終回で、ネロとパトラッシュが天に召される直前に見た絵画。この絵を見ながらネロは、「ああとうとう見たんだ。ああマリアさま、僕はもう思い残すことはありません」と言って絵の前の床に横たわり、パトラッシュとともに最期を迎える。
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荘厳な雰囲気の聖母大聖堂の内部。
天井が高い広々とした空間が広がる。自然光が採り込まれ、内部は結構明るい。
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ネロが最後に見た、ルーベンス「キリストの降架」
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美しい聖母大聖堂のステンドグラス
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アニメ「フランダースの犬」のラストシーンでは、この天井部から天使が舞い降りてくる。
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2016年12月、聖母大聖堂のすぐ外の広場に設置された、「フランダースの犬」の主人公ネロと愛犬パトラッシュの石像。これは、トヨタの寄付によって造られたとのこと。アニメのイメージとは異なるが、地元ベルギー人によるデザインだという。
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アントワープのフルン広場に立つルーベンス像。
奥が聖母大聖堂。
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アントワープの地ビール、デ・コーニンク(De Koninck)。デ・コーニンクとは王様の意味。
アルコールは5%くらい。フルーティな味わいのビールで飲みやすい。
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ブリュッセル随一の観光名所「グランプラス」。 訪問時が中国の春節期間で、広場に中国風のオブジェが置かれていた。多数押し寄せる中国人観光客を目当てにしたものと思われるけど、かのビクトル・ユーゴーが「世界一美しい広場」と称賛したグランプラスの雰囲気が台無し。
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