2日の練習中に急性心筋梗塞を発症して倒れたJFL松本山雅FCの松田直樹が4日午後1時6分、信州大学付属病院で亡くなった。34歳の早すぎる死だった。

松本山雅の加藤監督によれば、練習で約15分のランニングを終えた後、「やばい、やばい」と口にしながら受け身を取るような形で横たわり、意識を失って心肺停止状態に。

その際、たまたま練習を見学していた女性看護師が、救急車到着まで心臓マッサージと人工呼吸を施したという。それから信州大病院に救急搬送され、集中治療室で懸命の治療が続けられていた。

発症してからずっと意識不明の状態が続いていたが、4日午後に入って容体が急変。0時半頃に脈拍が弱くなり、最後は家族に見守られながら息を引き取ったとのこと。

屈強な松田が急性心筋梗塞で倒れたこと自体、今でも信じられない。しかも、こんなにあっけなく亡くなってしまうなんて…。いくらなんでも若すぎる。人生とは、実に儚いものと改めて思い知らされた。松田には3人のお子さんがいるようで、家族の心中を察すると涙があふれてくる。

昨夜までに、かつて日本代表選手として松田とともにプレーした中村俊輔、楢崎剛、三都主に加え、新潟の大島や川崎Fの山瀬などFマリノス時代のチームメイトが松田の見舞いに訪れたという。

面会した選手は一様に言葉を失くし、中には涙を浮かべながら病院から出てくる者もいて、その時点で松田の状態の深刻さが伝わってきた。

急性心筋梗塞は、糖尿病や高脂血症などの基礎疾患が原因で動脈硬化が進んだ中高年以上の病気という印象があるので、30代の頑強なアスリートが急性心筋梗塞で倒れたことに、とても驚かされた。フィジカルの強さが持ち味の松田のプレースタイルからは、まったく想像できない出来事だ。

昨夜の「ニュース・ステーション」で、心筋梗塞の病因に関する話を取り上げていた。

サッカーを含め、体に極端な負荷がかかるスポーツ選手は、心筋梗塞になりやすいとの指摘があるという。激しい運動により、たくさんの酸素が体内に取り込まれるが、その際、すべては燃焼されず、活性酸素となって細胞を酸化させる。酸化した細胞は老化や劣化を引き起こし、体内に蓄積されていくため、日々、心筋梗塞の主な原因である動脈硬化の下地が作られていくという。

02年に高円宮殿下(享年47)が「心室細動」でお亡くなりになったことをきっかけに、公共施設などでは、自動体外式除細動器(AED)を設置するところが増えた。

松本山雅には専用の練習施設がないため、2日は松本市営公園のグランドで練習していたが、そこにAEDは設置されていなかった。

急性心筋梗塞が心室細動を引き起こす場合も多いと聞く。AEDが今回の症例に有効だったかどうかわからないが、昨年のスペイン2部リーグの試合中に急性心筋梗塞を発症した選手が、AEDで蘇生された例があったというし、AEDがあれば、最悪のケースを防げた可能性も考えられる。

JリーグのスタジアムではAEDの設置がすでに義務化されているが、松田の死を教訓とし、これを機会に全てのスポーツ施設にAED設置を義務付けるべきだと思う。これは選手、観客どちらにとっても大事なことだから。


松田は闘争心の塊のような選手だった。
マリノスの最終ラインで高さと激しいタックルを武器に戦い続けてきた姿や02年日韓ワールドカップでの活躍がすぐ目に浮かぶ。

今季、JFLの松本山雅に移籍したが、まだまだ現役を続けたい意志を表明していて、やり残したことがたくさんあったはずかと。サッカーのみならず愛する家族のことを考えても、松田本人はさぞ無念だったろう。

不屈の精神力とサッカーに対する情熱が、松田を回復に向かわせるものと信じていたが、その願いは叶わなかった。本当に残念としか言いようがないし、家族の心痛を思うと、言葉もない。

心より松田直樹選手のご冥福をお祈り申し上げます。