Facebookよりガーン

 

川原 茂雄

 

こんな超右翼的皇国史観のトンデモ本が文科省の検定に合格して展示会に並んでいるそうです。かつて家永三郎氏の日本史教科書が検定不合格になり裁判になりましたが、いまはこんな教科書でも(教科書だから?)検定に合格するのですね。私自身は教科書検定そのものにも、現在の採択方法にも反対ですが、さすがにこんなトンデモ本が教科書になるなんて信じられません。いま全国で開催されている教科書展示会に行ったFB友達滝口さんのタイムラインからシェアします。(かわ)

 

昨日から板橋区で始まった来年度から使用する中学校教科書展示の会場に足を運び、とくに文科省が「政治的」に“合格”させた問題の”トンデモ本”、令和書籍版『国史教科書』を中心に閲覧してアンケートに「このような皇国史観教科書は採択の対象にならないだけでなく、この教科書を検定合格させた文科省の見識が問われる」といった趣旨のコメントを書いてきました。この教科書全体を2時間近くかけてざっと見てメモしただけでも、以下のような問題記述がありました。長くなりますがご容赦ください。

 

❶まず驚くのがその分厚さで、縦書きの本文だけで463頁もあり、巻末の口絵などの資料56頁を加えると総頁数は実に519頁に及ぶ。内容以前に、本気でこれを中学生に読ませるつもりだとしたら、狂気の沙汰である。

 

❷次に目次を見て驚くのが、巻頭に「世界各国王朝略年表」に続いて、宮内庁が所蔵する「皇統譜」を元に作図した神話上の神武天皇から始まる「歴代天皇の皇位継承図」が載っていることである。これだけで歴史教科書の名に値しないのはいうまでもない。ちなみに、この皇位継承図は「皇統譜」を元にしているので、南北朝時代の北朝の5人の天皇を( )書きにして皇位継承の「代数」に入れず、戦前の政府と同様にこの時代に「天皇」が二人いたという厳然たる事実を否定して歴史を捏造し、「万世一系」を正当化している。

 

❸そしてきわめつけは、この皇位継承図を前提に序章として「この教科書の課題」を次のように設定していることである。

「歴史上、国家興亡が繰り返されてきたにもかかわらず、なぜ我が国はヤマト王権成立以来の長きにわたり、一度の王朝交代や国家の入れ替わりもなく今に至るのでしょう。その答えは諸君がこの教科書をしっかり読み、自分で興味を持ったことを調べ、そして友達と議論して、自分の力で発見してください。自分の生まれ育った国家の歴史を知ることは、自分の起源を知ることと同じです。きっと楽しみながら学べるはずです。この教科書はその旅の入り口です。」

 

❹各章の扉は今風のコミックの表紙のようなイラストで、これで中学生がとっつきやすくなるとでも思っているのだろうか。子どもをバカにするにもほどがある。

 

❺近現代に入ると軍事力を誇示する戦記物に出てくるような細密画が3つ、各半頁も使って細かい解説つきで登場する。

①一等戦艦三笠(326頁)

②零式艦上戦闘機(365頁)

解説に映画「永遠の0」まで出てくる

③戦艦大和(372頁)

ちなみに教育勅語については「先人たちが大切にしてきた人としての生き方が書かれています。」とあり、もはや空いた口が塞がらない。

 

❻コラムにはさらに驚くべき内容が断定的に書かれている。具体例を3つ挙げてみる。

①「京都御所にはなぜお堀がないのか」ー「皇室が国民に守られてきたのであれば、国民もまた皇室によって守られてきたのではないでしょうか。天皇と国民は支え合いながら長い歴史をともに歩んできたのです。…日本では歴史上、天皇と民の利害が対立したことはなく、敵対関係になったこともありません。」(113頁)

 

②「対米戦争に勝算はあったか」ー「戦後になって『勝てるはずがない戦争』といわれることがありますが、兵力差などから分析すると、短期戦あるいは中期戦なら『勝ってもおかしくない戦争』、もしくは『勝たないまでも負けなかった戦争』であったといえます。…先の戦争で日本は精神論に偏りすぎ、肝心な作戦を軽視してしまったと考えます。このことは先の大戦の教訓として学ばなければなりません。あのときの日本は『気がついたら戦争の入り口に立っていた』と表現してもよいでしょう。」(386〜7頁)

 

③「蒸し返された韓国の請求権」ー「日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はなく、また彼女らは報酬をもらって働いていました。また、日本軍が…彼女らを『従軍』させ、戦場を連れ回した事実はありません。彼女らのほとんどが死亡したという事実もないのです。」

(442〜3頁)

 

ついにここまで捏造や虚偽、そして悪意に満ちた“教科書”が検定を通るところまできたことに震撼しています。どんなにばかばかしく思っても、きちんと全面的に批判することが必要です。

 

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え!?