Facebookより

 

印鑰 智哉

 

食品審査がどんどん簡略化される。簡略化されるのは安全が確認されたからではない。政府が企業に対して弱体化させられているからだ。

 

 たとえばすでに日本で承認されているモンサントが開発した遺伝子組み換え大豆(Intacta)には70種の従来の大豆にはないタンパク質が作られていることがわかっている¹。それがどんな問題を作り出すかの研究はされていない。それにも関わらず、遺伝子組み換え大豆は従来の大豆と「実質的に同等」という言葉で片付けられていて、こうしたチェックすらされないのが現実。そしてそのチェックも日本では4月1日から、省から庁へと格下げされた。

 

 小林製薬による紅麹による健康被害が問題になっているけれども、その中でこの機能性表示食品を担当する消費者庁の姿勢は注目されているだろうか? 消費者庁に届け出するだけでOK、審査もなし。そして、問題起きても悪いのは企業で消費者庁は知りません?

 

 そしてこの消費者庁の業務はさらに拡大される。今年4月1日から食品衛生基準行政は、厚生労働省から消費者庁に移管され、遺伝子組み換えや「ゲノム編集」食品の食品としての担当は今後、消費者庁の担当となる。4月1日からトクホ審議も内閣府食品委員会から消費者庁に²。それだけの体制が消費者庁にあるわけもなく、単に簡素化されるだけだろう。

 

 紅麹問題が起きても、消費者庁からは何も動きが期待できないように、これらの分野でも問題起きても何もできないであろうことは想像が付く。

 今回のような事件が起きれば注目されるが、そこまで目立たない被害だと注目すら浴びない。冒頭で書いた旧モンサント(現バイエル)の遺伝子組み換え大豆もアレルギーの原因を作り出すなど慢性疾患を作り出す可能性は十分あり、疫学調査が可能であれば問題はいぶり出せるだろうが、その調査は実施されていない。食べて急に症状が悪くなるようなケース以外はほとんどチェックできなくされていく。

 

 遺伝子操作によって品種改良するとか、化学物質で農業生産をコントロールさせるという発想が莫大な隠れたコストを生み出す。生産性を上げるとか、栄養を高くするとか宣伝するけれども、実際のこうした隠れたコストを考えれば、こうした食を許すことは健康や環境への大きな損失となる。そして、ごく一部の企業だけが巨大化して、食はますますその企業群によって独占され、格差は拡大し、社会は歪になる。

 

 逆にこうした問題ある食料生産ではなく、環境や健康に配慮した食のシステムに変えたら、年間世界で10兆ドル(今日の相場で考えると1528兆円超)を超える利益となるとする研究がある³。さらに隠れたコストを積み上げればその数倍になるのではないか? これだけ利益が社会に分配されれば、世の中も平和になるだろう。お金では表現できない幸福の達成などを考えると、それ以上の効果があるはずだ。

 

 でも、政府が問題ある食を作り出す産業によって牛耳られているから、政府が問題ある食を規制することがなかなか実現できない。だからこそ、問題ある食とは違う食を表示によって区別して、選べるようにしていくことが不可欠となる。表示は面倒だけれども、それによってその生産を活発にさせて、ボトムアップで食のシステムを変えることが不可欠になる⁴。

 

 それにしても消費者庁も農水省も、問題大過ぎる。民間企業の人間がそのまま入り込んできているし、外郭団体の力にも頼り過ぎ。国会がどう切り込めるか、注目したい。

(1) Unintended effects found in GM soybean include increased levels of allergens

https://www.gmwatch.org/.../20226-unintended-effects...

(2) 食の安全・監視市民委員会:生活衛生基準行政の移管についての意見と質問

https://www.fswatch.org/?p=1860

消費者庁、4月1日から添加物・残留農薬などの規格基準を策定…トクホ審議も消費者委員会から移管

https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/73114

消費者庁、食品衛生基準審議会の初会合を開催

https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/73165

(3) Move to sustainable food systems could bring $10tn benefits a year, study finds

https://www.theguardian.com/.../sustainable-food...

(4) Non-GMO Project: (Un)Greenwashing GMOs

https://www.nongmoproject.org/blog/ungreenwashing-gmos/

米国で普及しているNon-GMO認証団体によるコラム。なぜ、GMOではダメなのか、なぜNon-GMO表示が重要か、まとめられている。

 

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■政治家小池百合子の命運② 前川喜平

 

 

 先週の本欄で僕は、小池都知事の学歴詐称とその隠蔽工作の疑惑について、メディアがカイロへ行って真相を確かめるべきだと書いたが、問題はそう簡単ではなく、もっと複雑かつ重大だということが分かってきた。

 

 日本のメディアがカイロ大学に取材しても、おそらく「小池は卒業した。声明は大学が出した」と答えるだろう。この問題を追及してきた作家・黒木亮氏によれば、同大学と小池氏は「同じ穴のムジナ」であり、彼女の卒業証書は「プレゼントの証書」なのだという。

 

 エジプト通のジャーナリスト・浅川芳裕氏によれば、彼女が「エジプトのパパ」と呼ぶ軍閥政治家・ハーテム氏の権力による「超法規的な卒業証書」だという。小島敏郎氏は記者会見で、問題は通学や試験の実態、成績証明書、同級生などを含む「卒業実態」の有無だと強調した。僕の言葉で言えば小池氏は「裏口卒業」なのだ。

 

 それは北原百代氏が証言する小池氏の「学業」の実態や、アラビア語に通じた黒木氏が小池氏のアラビア語を「大学教育を受け、試験を突破できたとは到底思えない」と評していることからも十分推認される。重大なのは、小池氏がエジプト政府とカイロ大学に「生殺与奪を握られている」(浅川氏)ことだ。それは「大きく国益を損ねる状態」(小島氏) なのである。(現代教育行政研究会代表)

 

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