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印鑰 智哉

戦艦大和はかつての日本政府の舵取りできないそのあり方を象徴したものだと思うけれども、今の政府も変わっていない、変わろうとしていないことに心底恐ろしさを感じる。与党はそれだけのビジョンを持っていないし、官僚の方は前のやり方の踏襲しかできない。このままでは飢餓列島になる。

 

 2年間、貿易が絶えたら、日本では7000万人が餓死するという。気候危機や国際的な紛争で今後、輸入が困難になるだけでなく、日本経済の落ち込みで、平時でも輸入はますます困難になる。

 

 なぜ、こんな食のシステムになったのか? 最大の理由は米国への従属。米国の農産物の大量輸入が前提になるので、自給率を上げることを政策にすることは御法度、これが戦後の政策を貫いてきた。自給率を上げずに農業振興というのだから農業振興は常に「輸出」一択になってしまう。もっとも輸出できる農家は限られるから、地域の農業はこの政策ではすたれる。しかも肝心の頼みの米国だって、今後ずっと日本に輸出し続ける保障はない。だから今こそ、この政策を転換しなければならない。輸入できず、国内で生産もできないとしたら、どうなる? 飢餓列島しか行き着く先がない。

 

 そして時は来た。現在開催中の通常国会でついに、食・農業の憲法と言われる「食料・農業・農村基本法」が改正になる。それではその政策は変わるのか? 閣議決定した法案では変わらない。なぜなら、この場にいたっても、さらに輸出促進するというのだ。この飢餓列島化のシナリオを変えるために必要なのは地域の食料自給率を上げ、地域の循環をベースとした地域の食のシステムを構築すること以外ないはず。でも政府が力を入れるのは輸入の確保と輸出の促進。これが基本法改正の骨なのだ。

 

 まず、地域の食のシステムを強化するためにはタネから始まる。でも今の日本は農作物のタネも畜産物も海外依存。自給できるのは米とイモくらい。だから日本でタネから作ることに力を入れるかと思ったら、来年度予算で強化されるのは海外からの調達地の開拓。輸入先を確保することにお金を使う。

 

 また、有機農業を2050年までに25%に拡大させると目標を立てたが、それには当然それだけの有機の種苗が必要になる。それでは日本政府には有機の種苗を作る計画があるか? ない。ないのだ。公的種苗事業が提供する種苗もほぼすべてが有機農業に適さない種苗しか作っていない。適する種苗の確保は有機農家の負担に。だから有機農家は自分で自家採種してタネを確保しなければならない。でも、その自家採種を種苗法改悪で制限してしまっている。結局、やれるならやってみろ、と言わんがばかりのデタラメな政策になってしまっている。日本の食文化の基本となる在来種の大豆の種採りも支援がほとんどなく、このままでは潰えてしまう。海外の大豆依存となれば、食文化もすたれること間違いなしだろう。

 

 世界各国の政府が力を入れるのが公共調達。つまり国や自治体を通じて農産物を買い上げ、その農業生産を下支えする政策。これを一番長くやってきているのは実は米国。大恐慌以降、もうすぐ1世紀になる。でも、現在の日本政府は世界の中でもっとも市場原理主義政策。政府が支えないから、生産費を割り込んだ販売価格では赤字になり、次々に農業人口が急激に減っていく。だから、今、もっともやらなければならないのが買い支えによって、農家の所得を支えなければならないのに、その政策は欠如している。輸入もできず、生産もできない、その政策的欠陥を政府は直す能力を持っていない。困窮者、栄養失調で苦しむ人たちに米国ですら買い上げた大量の食を提供している。でも日本では自助、あるいはボランティアでやれ、ということになる。もはやこれは無政府状態。

 

 その結果、このままでは日本は飢餓列島と化していくだろう。そして今回の通常国会ではそれに対する政府の答えが出ている。それが「食料供給困難事態対策法案」。そもそも食料供給困難を作り出しているのは政府の政策そのものなのだけど、その責任を農家、生産者、生産できそうな人たちに押しつける法案。つまり、食料供給困難な事態になったら、政府は特定の生産物の生産を生産できる人たちに強制できるという法案で、従わなければ罰則を課すという。これは人びとの食料主権、食の決定権を奪うもので、食・農業の戦時法案と言わざるを得ない。

 

 本来、人びとの食を確保するのは政治の基本中の基本なのに、それができず、その一方で、企業を儲けさせる「ゲノム編集」や細胞性食品、昆虫食などの工業型農業の生き残り策には巨大な支援を与えるのに、今後さらに重要となる生態系を守る農業にはほとんど出さない。

 

 どんな食にしていくか、今、問われる時代になっている。環境や健康をさらに破壊する工業型農業を続けるのか、否か、それは生産者と消費者の選択にかかっている。でもこんな戦時農業法案が成立してしまったら、私たちの選択権、決定権が奪われてしまう。決定権を奪うということは主権がないということ。主権がないというのは奴隷状態になるということ。飢餓列島を作り出す政府は人びとを奴隷化する法律が必要だということだろう。

 

 「食料・農業・農村基本法改正法案」「食料供給困難事態対策法案」と農地の確保と適正利用のための「農業振興地域の整備に関する法律の改正案」が27日閣議決定され、近く閣議決定される予定のスマート農業技術の活用の促進に関する法律案を加えた4法案の一括審議を農水省は求めている。満足な議論なく、すぐに成立させることを政府は予定している。心ある議員はこんな法案を許さず、政府に対して徹底抗戦してほしいものだが、果たして徹底抗戦する議員はどれだけ国会にいるだろうか? このシナリオを変えるために何ができるか、戦略を立てていきたい。

 

農水省;第213回国会(令和6年 常会)提出法律案

https://www.maff.go.jp/j/law/bill/213/index.html

食料供給困難事態対策法案の概要PDFが今日時点で消えている。批判殺到で削除したのだろうか?

 

https://www.maff.go.jp/j/law/bill/213/attach/pdf/index-7.pdf

すぐにアップされると思うが、何が問題で消したのか。

 

 

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