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■鈴木宣弘著「農業消滅…農政の失敗がまねく国家存亡の危機」…農家を支援する欧米無策の日本


 最近では口を開けば農産物の輸出と、政治行政サイド、マスコミから勇ましい掛け声だけが聴こえてくる。
 本書で指摘しているように日本の農業が戦後最大の危機的状況にあるのに、政治家や農政関係者の多くは本気で議論をしているようには思えない。
 今秋の米価のJA買取価格の各都道府県概算額がそろった。それによれば各県大幅な引き下げで、なんと栃木県では昨年よりも最大4800円の下げ幅である。私が農水大臣の時に全国の3キロあたりの生産原価を調べたことがあったが、全国平均で1万5000円だった。それを割り込めば赤字で、もう数年前から1万3000円ほどに落ち込み、農家は実質赤字経営なのに、このままでは1万円をきりかねない勢いである。今JAの組合長の間でささやかれているのは「コロナで散々痛めつけられて、農家は黙って農業をやめてしまうのではないか」と。
 氏はコロナで穀物輸出国9カ国が禁輸措置をとっていたことを指摘し、食料を輸入に依存する日本の愚かさを嘆き米国の農業政策について詳しく説明する。米国では生産原価をもとにそれより下がった場合にはその差額を補填する支持価格制度(PLC)を導入、それに収入補償制度(ARC)を設けて農家が安心して農業に専念できるような制度を構築している。
 さらに米国は今回のコロナ禍の救済のために経済的な安全保障法を成立させて日本円で2兆円ほどの予算を組み、その8割を農家への直接支払いの助成金に、3000億円で農家から穀物、酪農製品野菜などを買い上げて無償で生活困窮者に給付したのである。
 氏は英仏が90%、スイスが100%国民の税金で農家を補助していることから、日本でも早急に生産原価の岩盤部分と市場価格との差額を補填して日本の農家も安心して農業に専念できるようにしなければ日本の農業はついえると警告する。評者:山田正彦(弁護士・元農林水産大臣)

 

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安倍政権による『国家戦略特区』は岩盤規制に穴を空ける突破口とされている。が、端的に言えば特区は政権と近い一部の企業の経営陣が利益をふやせる突破口を作るのが目的ですから地方創生とは直接結びつかず、むしろ地方創生とは逆行する…と、東京大学大学院農学生命科学研究科教授 鈴木宣弘さん。
 

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