ラジオフォーラム「小出裕章ジャーナル」4月27日

「4月26日で事故発生から27年となるチェルノブイリ原発事故について」

小出さんのお話の部分を文字起し読みやすくまとめました

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チェルノブイリ原発は
1986年の4月26日に原子炉が爆発し
ほぼ1週間の間に大量の放射性物質が環境に吹き出してきました。
そのため、当時「地球被ばく」という言葉ができたように、
地球全部が汚染を受けてしまいました。

日本はチェルノブイリからみると8000キロ以上離れているところにあるのですが
その日本にすらチェルノブイリから放射性物質が
飛んでくるというようなことになって。

私は原子炉実験所で自分が呼吸している空気の中に
どれだけ放射能が飛んでくるかということを測定していました。

まさか地球の裏側から物質が飛んでくるということはないだろうと
始めた仕事だったのですが、5月の3日になりまして
チェルノブイリからはるか離れた日本まで放射能が到達して、
たいへん驚いた経験をしました。


その後10日、あるいは20日経つとですね、一度減っていった放射能が
空気中に増えてくるというようなことがおきてですね。
地球を1周してまた日本まで戻ってくるというようなことがあったのです。

セシウムもヨウ素もたくさんありました。
ただしヨウ素自身は8日で半減してしまいましたので
すぐに測定ができなくなったのですが
セシウムはほぼ3ヶ月ほどずうっと空気中に存在していることは測定できました。

そのときに私はもうこういう事故というのは二度と起こしたくないと思ったのですが
残念ながら福島の事故が起きてしまったのです。


それでチェルノブイリは、とにかく放射能を閉じ込めなければいけないということで
石の棺で原子炉全体を封じ込めようという作業が始まりました。
60万人とか80万人とか言われてるような軍人、退役軍人
あるいは労働者が駆り出されて、本当に過酷な被ばく作業に従事しました。
それで多分たくさんの方々が、その作業に従事したがために
癌などになって既にお亡くなりになった。

そうやって苦労して作った石棺なのですけども、さすがにやはり年が経つと
コンクリートの構造物だったわけで、あちこちにひび割れが入ったりですね
天井が落ちてしまったりしてあちこちに穴が空いてしまってきました。

放射能を閉じ込めるという意味ではどんどん性能が悪くなってきているわけで
いつか何とかしなければいけないということは
もうずうっと前から言われていたのです。
ただし、まあなんとかするにしても、放射能を相手にしての作業で
被ばくがしてしまうし、お金も膨大にかかるということで
なかなか取りかかることができないできました。

しかし やはりなんとかしなければいけないということで
EUのほうがかなりのお金を提供しまして、ようやく今、第二石棺と呼ぶ
はじめ作った石棺全体をまた覆ってしまうような構造物を
もう一つ外側から作る作業が続いています。
たぶん、そんなに長くかからないで
その第二石棺というものでもう一度覆いを作るということ。

壊れてしまった原子炉建屋に近づくことが好ましくないので
原子炉建屋から少し離れたところで、その第二石棺という構造物を今作っています。
それが完成したときに、第二石棺をレール上で引っぱっていって
原子炉建屋そのものの上まで動かして
覆いを作ろうというそんな作業を今進めています。

福島もいつか福島を石棺に覆わないといけない。
これはまたそしたら膨大な作業と膨大な被ばくをしながら
いつかそれを作っていかないといけない。
これまた誰がやるのとかですね、どういう風に補償するの
ものすごい大きな問題が横たわっています。


これから何年という単位では済まない何十年という単位の時間をかけて
放射能を閉じ込めるという作業を福島でやらなければいけないのですが。
本当に私が思うだけでも気が遠くなるような作業が
長い年月に渡って必要になってしまいます。
そのためには大量の労働者が必要になるでしょうし、
日本というこの国でいったいどうやってそういう労働者を調達できるんだろうかと
それもたいへん不安です。
聞くところによれば海外から、労働者をまた調達してくるというようなことも
なんか進んでいるように聞いています。恥ずかしい国だなと思います。


原発が安いとか言っているけど、このコスト考えただけでも高くなります。
誰が考えても当たり前なのであって、経営者と言うような人であれば
せめてちゃんと金勘定ぐらいすべきだと思います。



~チェルノブイリ法について

私は法律の専門家ではないので詳しいことは知りませんが
チェルノブイリの場合にも大量の放射性物質が吹き出してきてしまいまして
事故の直後は、日本政府が取ったのと同じように
ソ連の政府も事故を隠そうとしたり、あるいは過小評価をしようとしたり
きちっとした対応ができないで後手後手に回るというようなことがありまして
大量の人たちが被ばくをしてしまう
子どもたちも被ばくをしてしまうということが起こりました。

そのために甲状腺癌を中心としまして、とにかく被ばくをしたから
被ばくをしたからこんな病気になっているということが分かっている
病気もたくさん出てしまった、わけです。


人々も避難ということを余儀なくされる人々もいたわけですし
もう経済的に持たないで汚染地帯に取り残されている人々も
福島で起きているのと同じようなことがチェルノブイリでも起きましたし
で、そういう方々の健康状態を調査をしたり
あるいは補償をしたりということはもちろん必要なことであって
チェルノブイリでもそういう、なんとか補償しようという法律はあるのです。

それが「チェルノブイリ補償法」だと思いますが
実際にはソ連という国自身が崩壊してしまうというほどのですね
重荷になってしまっていて、なかなか救済というのは進んでいないと思います。
もちろん社会主義というものの破綻というものはあったとは思いますし
世界的な政治状況というものもあったとは思いますけども
チェルノブイリ事故がソ連の崩壊に果たした役割は大きかったと私は思います。

チェルノブイリの場合には、20ミリシーベルト以下であっても
避難をする権利というものを認めています。
ですから、その場所に踏みとどまってやはり生活したいという方はいるだろうと
私は思いますけれども、避難をしたいという希望があれば
その方になにがしかの補償をするという法律はあるのです。

日本の場合は20ミリシーベルト以下なら勝手に住めと
国家は何の補償もしないというように今言っているわけで
そこに大きな違いはあると思います。
私は日本というこの国よりも旧ソ連のほうがはるかにマシだと思います。



・・・・・ソ連より日本のほうが酷いという事実  ・・・・・・・


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