日本では都知事の件でニュースが埋まっていますが、
欧米ではフロリダのオーランドの銃乱射事件がずっと報道されているそうです。
関心の差は単に地理的・文化的・社会的背景が近似しているためだとも思うのですが、
それを差し引いても都知事の(くだらない)ニュースを流しすぎだとも思います。
さて、件の銃乱射事件ですが、
当初言われていた移民問題、イスラム過激派思想問題とは関係なく、
どちらかと言えば秋葉原通り魔事件(2008年)に近い背景、
家庭環境やらコミュニティからの疎外といった個人的事情が原因のようです。
そういったことまで報道されて筆者が思い出したのは、この作品。
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(以下、ネタバレあり。)
この作品、全くもって酷い話で、暗い話で、救い処の無い話で、
鑑賞後は非常にイヤ~~な気分になります。
ケビン=スペイシー主演で作品賞・主演男優賞含めアカデミー賞五部門制覇。
<あらすじ>
主人公の父親はアメリカの典型的サラリーマン。
妻も企業で働いている共働き家庭。
娘は典型的「パパ嫌い」人間。
危うい均衡の上で“良き家族”を形成していたものの、徐々に綻びが生まれてきて・・・
という感じで始まります。
そこから段々と酷い話になっていって
・父親は仕事にやりがいが感じられず仕事をやめて、ハンバーガーショップでバイト。
・母親も仕事が上手くいかず、夫への不満がたまり不倫に走る。
・父親は娘の友達に一目ぼれして、機会がある度に口説く。
・その友達は「私、めっちゃヤリ○ンなの」と吹聴するようなクソ○ッチ。
・妻の不倫はその現場をドライブスルーにおいて、バイト中の夫にばれる。
・娘の彼氏の父親は元軍人で、典型的なマッチョイズムの申し子。
・そのカレシ父は、ちょっとした行き違いから息子と主人公がゲイパートナーだと誤解。
・カレシ父は息子に「ゲイなんて屑だ!」と言って暴力をふるう。
といったことが次々と明らかになり、さらに物語は破滅的な展開へ。
・父親は念願叶って娘の友達とヤれそうになる。
・いざその時という場面で娘の友達から「私、実は処女なの」と告白され、その気が失せる。
・実はカレシ父は同性愛者であり、主人公に愛の告白する。
・主人公は「なんか誤解しているけど、俺ゲイじゃないよ」と返事をする。
・カレシ父は主人公を射殺
~The End~
いや、本当にこんな感じのお話なのです。
作品を観ている間、ず~~っと嫌な気分になっているのですが、
それと同時に不思議と引き込まれる魅力も備わっている、世に二つとない映画です。
では何故この作品を観ているときに“嫌な気分”を感じるのでしょうか?
おそらくは「多様な価値観の尊重」「既存の秩序からの解放」「自由の追求」といった、
“アメリカ合衆国の素晴らしい理念”と上辺だけで賛美されているものを、
現実の平均的な家庭や社会に落とし込んでみたら、
グロイものだけが目前に広がるだけですよ、という事実を淡々と描いているからで、
それを見せられたら夢も希望(アメリカンドリームと呼ばれるもの)には、
実は実態が無いのだ、というコトにも気付かされるからです。
だからこそ作品名が『アメリカン・ビューティ』(バラの品種名)にされていているのです。
要するに、壮大なる皮肉ということです。
暗い作品が大好きな筆者ですが、さすがにこの作品は暗すぎ。
ですから記事タイトルのとおり、お奨めもしません。
ただ最初から終盤まで緊迫感をもって進行するのですが、
「私処女なの」「実は俺ゲイなんだ」の場面は、筆者の予想の斜め上をいきすぎて、
あまりの展開に対して吹いてしまいました。
(゚c_,゚`。)プッ。って感じで。
さて、話は銃乱射事件に戻ります。
実態解明がまだ先のことになりますし、抽象的なことしか書けないのですが、
容疑者とされている人物はきっと、「アメリカ合衆国の美しき理想」に対して
目の前の現実があまりにも落差がありすぎていたのだと思います。
だからと言って、人は多かれ少なかれ同じような感情がわいてくるものですから、
その感情をコントロールできなかった容疑者には擁護される余地がありません。
ですから、「数多くの人間がいれば、そういった人間も出てくるよね」
という一種の諦めのような理解をするしかないのかもしれません。
なので、そういった人間が生まれてしまう社会であるということを直視したうえで、
「それでも銃が無ければ犠牲者はあれほどは増えなかった」という観点から
アメリカ合衆国でも銃規制の方向へ政策を進めざる得ないのではないでしょうか。
筆者の個人的な見解としては、
「護身用として拳銃を所持するのはまだ良いとして、アサルトライフル所持はやりすぎ」
というところです。
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