個人的に最も影響を受けたピアニストの一人、故Michel Petruccianiの伝記映画「情熱のピアニズム」を渋谷で見てきました。
彼の音楽との出会いは以前のエントリーで書きました。
実は一度だけ彼の生演奏に接したことがあります。CD化もされている伝説の1997年のBlueNote東京のSteve GaddとAnthony Jacksonでのトリオ来日。
当時関西に住んでいたので、ほとんど東京にしか来ない彼のライブはなかなか聴きに行けなかったのですが、前評判がよかったため思い切って新幹線に乗って東京まで行く事にしました。
第二部の公演の予約を取っていて、少々早めに着いたのが第一部の公演の終盤の頃でした。まだ中には入れないので、BlueNoteの前の道路で終わるのを待っていたら、なんと突如アンコール前のPetruccianiが何人かの付き人と一緒に階段を上って外に出てきたのです。新鮮な空気を吸いに来たのかどうか分かりませんが、それが生のPetruccianiを初めて見た瞬間でした。縦より横の寸法の方が大きいような体型で、その間彼は終始なにやらフランス語で間髪を入れずに喋りまくっており、強烈な印象で「とにかくおしゃべりな人なんだ」というのが第一印象でした。その後すぐにアンコールを弾きに戻っていました。
第二部の公演、席をとにかく近くで彼の手の動きを見られる所にしてもらいました。演奏そのものは文句なくすばらしく、あの体で鍵盤の全ての音域と全てのトナリティを完全に自由に弾いている感じ。正に圧倒的でした。それがPetruccianiを生で見た最初で最後でした。
当日の演目でCDに収録されていない曲も多く、なぜコンプリート盤を出してくれなかったのか今でも不満に思っています。
あの原色を散りばめたような色彩豊かな音楽がどうやって弾けるのか、かつてはかなり彼のピアノをコピーしました。それを通して、無理をして前衛的な語法を使わずオーソドックスな語法でも斬新でオリジナルな音楽を作れることがよくわかりました。 彼の音楽の足元にも及びませんが、その経験が現在の自分の曲作りに大いに役に立っている気がします。