「子供のころに経験したワクワクした気持ちは
一生覚えているもの」
そんな、ある時代の雑誌編集長の言葉を
考えていたそのとき、飛び込んできた
WWDジャパン編集長 山室一幸さんの訃報。
驚き、大変残念などという言葉では表せない
さまざまな記憶がよみがえってきました。
90年代の「ファッション通信」は
中学生だった私の青春そのもの。
デジタルツールが今のように発達していなかったから
モードの世界のスピリット、メッセージ
世界トップクラスのクリエイターや職人たち
表現するということ、スーパーモデルまで
じつに多くを番組から教わったように思います。
録画したのを繰り返し見て、
大内順子さんの解説や
デザイナーのインタビューを
一言たりとも聞き逃すまいと
何度も巻き戻し、見ていましたっけ。
(そのときのビデオテープ・コレクションは、DVDに移したいのですが
もう擦り切れて次こそはプッツリといってしまうかもと思い、こわくて触れられぬまま・・)
芸術作品のようなファッションと
演出、音楽、キャットウォークする
スーパーモデル。
各メゾンの美意識と技、バランス感覚。
ウットリ、驚嘆、なるほど・・
さまざまな感情が、次から次へ波のように押し寄せた
そこは、憧れと称賛とリスペクトの世界。
番組のプロデューサーでいらっしゃった山室さん。
10代の半ばごろ、家でインターネットができる
ようになると彼のコラムをすべてプリントし
ボロボロになるくらい読みました。
学生時代の就職活動のときは
私もこんな仕事がしたい、と
彼のいる会社の求人を探しましたが
少数精鋭という感じで募集はなく
無謀なことであったと思い知りました。
大学の卒業論文では
ラグジュアリーブランド(高級ファッション)ビジネスを
テーマにし、彼の著書を読み参考文献のひとつに。
「ファッション通信」に出会っていなかったら
今の自分はいない。
と、ずーっと思って生きていました。
大げさではなく、本当に。。。
あの時代、ああいう世界を取材し
リアルな、生の声や姿を
ただの中学生だった私でも知ることができる媒体で
沢山ご紹介されていたということ、
一人の中学生の人生にとって
それは大きなことでした。
言葉ではちょっと表せない、それくらい級の
どうしようもないワクワクする気持ちでいっぱいでした(!)
ほかのことが見えなくなるくらい夢中だった。
パッションあふれるって、
ああいう状態のことをいうのだなと思います。
音楽、映画、建築、写真、芸術などもそうだけれど
あの時代に経験したことは、
私の宝ものであり原点かもしれませんね。
家族や友人を亡くすことのほうが
もちろんいっしょに過ごしたことや
いろんなことを思うし、辛く悲しい。
でも遠い人であったとしても
人生に大きな影響やきっかけをくれた人が
亡くなることは、胸になにかが刺さったように
悲痛です。
ジャンニ・ヴェルサーチ
ジャン=フランコ・フェレ、イヴ・サンローラン
アレキサンダー・マックィーン
山口小夜子さん、アンナ・ピアッジ、、、
また一人と去っていくたび
ひとつの時代が終わったなと思います。
上の写真は、手元にあった
イヴ・サンローラン追悼のときの
WWD誌の記事と、過去のWWD紙。
遠い一個人がこのようなことを
書いてよいものか考えましたが、
私の通ってきた道のなかで
やはり大きなきっかけだったものを
提供していらっしゃった方なので、
感謝の気持ちを込めて書かせていただきました。