今度は発言者に中部電力社員、意見聴取会紛糾
中長期的なエネルギー政策に関する政府主催の意見聴取会が16日、名古屋市で開かれた。
352人の応募者から抽選で選ばれた計9人が意見表明したが、発言者の中に中部電力社員らが含まれていたことに、一部の参加者が反発、議事が中断する場面もあった。
聴取会は86人が参加。2030年の原発依存度として政府が示した「0%」「15%」「20~25%」の3案に対し支持する人の中から3人ずつを選んだが、「20~25%」案を支持した3人のうち、1人は中部電力原子力部の男性課長(46)、もう1人は日本原子力研究開発機構東濃地科学センターの男性職員だった。
同課長は「中部電力社員です。個人として意見を述べたい」とした上で、「福島原発事故では放射能の直接的な影響で死亡した人はいない。5年、10年たっても状況は変わらない」と原発の必要性を訴えた。
http://bit.ly/Ny1hdl (2012年7月16日21時23分 読売新聞)
電力会社の社員が公聴会に出て意見述べたという問題が、前日の仙台での公聴会に続き、名古屋でも起こりました。
これはグレーな問題だと思います。
必ずしも電力会社の社員が意見を言うことは悪いことではなく、一つの参考意見として聴いても良いのではないかと思います。
様々な意見がある中で、それをいかに取捨選択するかが問題で、それを参考にするかしないかは政府が決めることですから。もちろん、その検討過程はつまびらかにしていただく必要はあります。
あともう一点、中部電力の社員の発言というのは実に興味深いモノがあります。
「福島原発事故では放射能の直接的な影響で死亡した人はいない。5年、10年たっても状況は変わらない」
と言われれば「福島を追われた人は?」「関連死も含めれば死者はいる」と言う反論は当然あるでしょうね。
小生の目線からは中部電力の言う「安全」がどのような「安全」を言うのかがこの発言から分かったような気がします。
「直接の死者が出なければよい」。
つまり急性の放射線障害や、中長期的な放射線の影響による健康被害が出なければよいと言うことなのでしょう。
放射性物質が漏洩して立ち入りが規制される地域が出たとしても、死者さえ出なければいい程度の安全を前提に対策をしていると考えられます。
しかし、どう見てもこれではかなり妥協した「安全」としか思えません。
今後、政府や電力会社のいう「安全」とは、「死者が出ない程度」のこととして捉え、原子力問題を考える必要がありそうです。
こうした今まで我々が気づかなかった「安全」の定義を再認識させてくれた点では、電力会社社員の公聴会参加はむしろ喜ばしいことだと思います。