映画「はやぶさ 遙かなる帰還」を鑑賞してきました。
いわゆる"「はやぶさ」三部作"(2011年10月公開「はやぶさ/HAYABUSA」、今年2月公開「はやぶさ 遥かなる帰還」、3月公開「おかえり、はやぶさ」)の2作目です。
この作品はまず「はやぶさ」打ち上げのシーンから始まります。
前作「はやぶさ/HAYABUSA」は準備段階から物語が始まりましたが、この作品は打ち上げシーンから始まります。
この辺が「はやぶさ/HAYABUSA」と「はやぶさ 遥かなる帰還」の作風の違いの象徴的なところだと感じました。
「はやぶさ/HAYABUSA」は架空の女性研究者の視点で漫画タッチの物語が進んでいきますが、
「はやぶさ 遥かなる帰還」は朝日新聞の女性記者の視点で川口淳一郎教授をモデルにした山口らにスポットを当てるドキュメンタリータッチでの作風です。
前作は漫画タッチの作風に批判的な意見も多かったのですが、プロジェクトのバックグラウンドも分かった点では良かったと思います。この作品は「はやぶさ」のプロジェクトについて熟知している人はいいかもしれませんが、予備知識なしで観ると唐突に想える部分もあるのではないかと思います。
この作品で特に良かったと思ったところは、「はやぶさ」にとって地球帰還最後の試練となったイオンエンジンのトラブルの場面です。前作ではイオンエンジンの回路に万が一に備えて1個のダイオードを入れておいたので危機を難なく乗り切ったような印象すらあったのですが、JAXAのスタッフとメーカー(NEC)の技術者が激しくぶつかりながらもリーダーの一声でギリギリの戦いを繰り広げながらようやく乗り切ったことが伝わってきました。
いずれにしても何度となくやってくるギリギリの場面でリスクを取りながらもそれをなんとかかわして最終的に奇跡の帰還につながったということが非常に良く伝わってくる作品でした。
7年間のミッションを2時間半で表現するわけですから、どうしても物足りなさというのはあるのですが、それでもミッションについて丁寧に描こうとしている作品だと感じました。
予備知識のない方、地震がない方は「はやぶさ/HAYABUSA」を見てから「はやぶさ 遥かなる帰還」を見ると楽しめるのではないかと思います。
欲を言えば火星探査機「のぞみ」のミッションをもっと詳しく織り込んだ作品があるといいですね。
「のぞみ」は火星への軌道投入に失敗しミッションとしてはみかんに終わったのですが、「のぞみ」の立て直しに最後まで諦めなかったことによって得たノウハウが「はやぶさ」成功につながったともいわれています。
両作品に共通していたのはとにかく日本は宇宙開発の予算が乏しいという点ですね。
今回の作品も文部科学省が全面的に協力しているようでFacebookでポスタープレゼントのキャンペーンもやっていました。
予算を取る千載一遇のチャンスなのでしょう。
しかし、限られた予算の中で知恵を絞ったことも、このプロジェクト成功の基礎になったと思えるようなところもありますから難しいところですね。
いずれにしても大所高所から全体を導くリーダー不在で、現場のスタッフは優秀という日本の縮図を表していることは確かなようです。
残りの三部作のひとつ「おかえり、はやぶさ」はどういう作品になるんでしょうか、来月見に行きたいと思っています。
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