事業仕分けの限界より報道の限界が見えてきた | はい、タケコプター

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仕分け 見えてきた「限界」 無駄削減より借金解明

産経新聞 10月28日(木)7時56分配信


 27日に始まった政府の事業仕分け第3弾で、仕分けの「限界」が見えてきた。

特別会計(特会)をターゲットにした今回は、制度の仕組みや役割そのものを見直す意味で、これまでの個別事業の仕分けとは性格が異なる。ただ、特会を廃止しても国の予算総額に与える財政効果は未知数な上に、多額の借金を抱える特会を安易に廃止すれば、逆にマイナス効果を生みかねない。「特会の議論は難解で一般の人には分かりにくい」(事務局関係者)ため、パフォーマンス効果も期待薄だ。


 初日の仕分けで、廃止と判定された「貿易再保険特会」の歳出規模は平成22年度で2千億円。同特会の保険事業を政府出資の独立行政法人に一本化するだけなので、国全体としての無駄削減効果はゼロに近い。

 「漁船再保険・漁業共済保険特会」と「農業共済再保険特会」の統合では、期待された埋蔵金の発掘議論にすらならなかった。

 民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で「国の総予算207兆円の全面組み替え」を掲げ、特会や歳出を見直すことで16兆8千億円の財源捻出(ねんしゅつ)が可能だと主張していた。子ども手当や高速道路無料化など目玉政策のために、歳出規模が約176兆円と一般会計を上回る特会の見直しで多額の財源を確保することが既定路線だった。


 菅直人首相も特会の「埋蔵金」に大きな期待をかけていた一人だ。野党時代の20年に自ら財務省を訪れ、埋蔵金として注目されていた外国為替資金特会を調査。視察後、「(埋蔵金は)かなりある」とソロバンをはじいていたほどだ。

 その首相も今回の仕分け直前になって、埋蔵金の発掘よりも埋蔵借金の解明を指示している。無駄削減による財源捻出を目指すはずが、借金解明に時間が割かれる可能性もでてきた。(坂本一之)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101028-00000127-san-bus_all

事業仕分けの限界ってやっぱりあると思うんですね。

 ・仕分け結果が必ずしも現実の政策に反映されるとは限らない

 ・一般に期待されるほど財政削減に即効性はない


などなど、問題はあると思います。


このうち、一般に期待されるほど財政削減に効果はないという点について考えてみたいと思います。

私ももう少し勉強する必要があると思いますが、静岡県の事業仕分けで行政刷新会議の事業仕分けでも原動力となっている「構想日本 」の方の話を聞いた経験から考えると、事業仕分けの狙いというのは


・行政の行う事業の「見える化」つまり情報公開

・第三者の視点を入れることで、行政の効率化、行政の意識改革を促し無駄を削減する


いわゆる「役所の論理」というのは現実としてあります。

どう見ても要らない事業や無駄のある事業なのに、一般には荒唐無稽と思われるような理屈を付けて事業をごり押ししようとするようなことってあります。昨日の年金の紙台帳の照合の件でも「都心じゃないと優秀な人材が集まらない」などと不合理な理由を付けてわざわざ賃料の高いところで作業をしたりなど。 国民の視点がないとこうした無駄がまかり通る訳です。


こうした目に見える無駄の他に、縦割り行政による事業の重複など見えにくい無駄もあります。また、役所がひた隠しにする情報もあったりします。 こうした「目に見えにくい無駄」は削減するのは容易ではなく、何度も仕分け作業をくりかえし、そもそも事業の目的はなにだったのかという原点に立ち返り、立法府が主体的に動くことで初めて実現可能なものになるのだと思います。


9月の静岡県の事業仕分けでお会いした構想日本の方も、「いくら削減したかより議論のプロセスが大事」と複数の方がおっしゃっていましたし、事業を執行する公務員の意識改革に着目した発言が多かったのが印象的でした。事業仕分け効果を出すには息の長い取り組みが必要だと肌で感じました。 が、世間一般では、即効性、目に見える無駄削減ばかりが注目されがちです。


その辺は報道関係者の仕分けに対する無理解が大きいと思うのです。


借金解明にしても「行政の見える化」には不可欠です。

隠れ借金すなわちオフバランスは突然その存在が分かるととんでもないリスクになりかねません。

恣意的に誰かがその正体を暴いたりすれば、国債が一気に紙くずになったりしかねませんからね。

むしろその時の損失の方が怖いです。

かつてアメリカを大混乱に陥れたエンロンの破綻も負債のオフバランスが原因でした。


仕分け第3弾、27日から特別会計を総点検 早くも政府内で思惑錯綜

産経新聞 10月17日(日)22時16分配信


 政府の行政刷新会議(議長・菅直人首相)は27日から「事業仕分け」第3弾の前半として、18ある国の特別会計(特会)を4日間かけて総点検する。各省庁の「利権の温床」とされる特会の無駄にどれだけメスを入れることができるかが焦点。政権浮揚への起死回生策となりえるが、早くも政府内で思惑が錯(さく)綜(そう)しており、混乱も予想される。


 事業仕分け第3弾で、玄葉光一郎国家戦略担当相(民主党政調会長)は数千億円の財源を捻(ねん)出(しゅつ)し、平成23年度予算にフル活用しようと狙う。これに対し、蓮舫行政刷新担当相は財源額が独り歩きすると、逆に「パフォーマンス効果」をそぎかねないと考え、予防線を張るのに必死だ。2氏の思惑のズレはますます広がる可能性が大きい。


 「仕分けによる財源捻出をあきらめたら『何が無駄遣いの削減だ』という話になってしまう」  玄葉氏は17日のフジテレビの「新報道2001」で、仕分けによる財源捻出の重要性を強調した。玄葉氏は、23年度予算の目玉となる「元気な日本復活特別枠」の1兆3千億円から2兆円への積み増しを考えている。だが、差額7千億円の財源が見込めないため、この多くを特別会計から捻出したいと考えたのだ。

 予算編成で政府・党の調整役を務める玄葉氏にとって特別枠は「頭痛のタネ」だ。1兆3千億円の枠に各府省は計2兆9千億円を予算要望した。先の衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉政策である「高速道路無料化」「農家への戸別所得補償制度」に加え、「在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)」など手を付けにくい重要施策が並ぶ。


 玄葉氏は特別枠の総額を上積みし、可能な限り「ゼロ査定」を避ける考えだが、蓮舫氏は14日の記者会見でこう反論した。

 「考え方に違いがある。期待感をなくしてもらえるようお願いしたい」  蓮舫氏が警戒するのは、仕分けで捻出する財源額だけが独り歩きすることだ。  数千億円の財源捻出にはいくつかの特会を廃止・見直しする必要があるが、実際には各省庁の抵抗で難しい。仕分け作業は各特会の個別事業の見直しにとどまる公算が大きく、「捻出できるのはせいぜい数百億円」(財務省幹部)というのが現実だ。財源捻出の期待が高まれば高まるほどできなかったときの失望は大きい。  そう考えた蓮舫氏は「仕分けは事業が時代に合っているかを判断するものだ。財源がいくら余るかという観点は持ち合わせていない」と強調した。その表情には「必殺仕分け人」のイメージを壊したくないとの思惑がにじむ。


 だが、民主党は衆院選マニフェストで特会の見直しなどで「4兆3千億円の捻出が可能」と大見えを切った。一つ二つの特会を廃止する気概がなければ、もはや「仕分け」で世論の支持は得られないだろう。(坂本一之)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101017-00000583-san-pol

これは最初の記事と同じ記者が書いた記事ですが


・蓮舫行政刷新担当相は財源額が独り歩きすると、逆に「パフォーマンス効果」をそぎかねないと考え、予防線を張るのに必死だ。


・そう考えた蓮舫氏は「仕分けは事業が時代に合っているかを判断するものだ。財源がいくら余るかという観点は持ち合わせていない」と強調した。その表情には「必殺仕分け人」のイメージを壊したくないとの思惑がにじむ。


と書いていることから、事業仕分けが持つ"公務員の意識改革"、"行政の見える化"という「構造改革」の意義を全く理解していないフシがあります。

目先の効果=人気取り=内閣支持率くらいにしか考えていないのでしょう。

マスコミ的にはそれが面白いのかもしれません。


蓮舫氏の考え方は構想日本のそもそもの考え方に合致しているもので、それ以上でもそれ以下でもない。つまり人気取り目的の発言とは思えないのです。

無駄削減など一朝一夕にできる訳ではなく粘り強い取り組みがなくてはなりません。何十年もかけて培われてきた世間とは違った土壌を変えるのですから。


そんな調子ですから、報道では「いくら削減したか」に着目したり、一部の発言を切り取って本来の趣旨とは全く違ったニュアンスで報道したりというのが非常に目につきます。

昨年の「一位じゃないとダメなんですか、二位ではダメなんですか?」の発言も、科学技術の投資をケチりたいというニュアンスで出てきた発言でないことは議事録 を見ると分かります。


事業仕分けがどういうものか、何が検討されているのか、本当に知りたいのであれば、テレビや新聞のニュースで受動的に情報を得るのではなく、実際の作業を傍聴したり、ネット中継を見たり、議事録を見るなど、自分の意思で能動的に情報を取りに行くべきだと思います。


 事業仕分けの究極の狙いは、省庁の論理に流されず、広く一般国民の視点を持ち、各人が自分の頭で考えて仕事をすることを公務員に植え付けることにあるります。

 それは、公務員のみならず一般の国民に対しても言えること。情報の洪水の中で目先の情報に流されてしまい思考停止に陥っているということを、自ら仕分け人として作業したことで強く思い知らされました。

 

 ですから、事業仕分けの作業は細々とでも良いから継続的に続けるべきだと思いますし、少し冷静になった状態で地道に続けていくことが効果を上げるためのもっとも近道だと思います。



◆行政刷新会議

 http://www.cao.go.jp/gyouseisasshin/


◆行政刷新会議・事業仕分け

 http://www.cao.go.jp/gyouseisasshin/contents/01/shiwake.html


◆構想日本

 http://www.kosonippon.org/