これまで劇場で鑑賞した映画は早ければその日のうち、遅くとも翌日には感想記事をアップしていただけに、ここまで大幅に遅れてしまったのは初めてです。
そんなわけで、『アンジェントルメン』を4月23日(水)に観てきました。
●007のモデルとなった人物が登場する実話ベースの物語
●時代背景が第二次大戦でアクション満載
●ガイ・リッチー監督&ジェリー・ブラッカイマー製作
という3つの理由だけでも観に行かないわけにはいきませんでした。
率直な感想ですが・・・悪くはなかったです。
後日、劇中の場面を振り返った際、自分が思っていた以上に見せ場が多かった事に気づいたのですが、何故か鑑賞直後はパッとしない印象が強かったんですよね。
その反動か、「あ~…なんかスターウォーズみたいなお祭り映画、劇場を出る時に幸福感で満たされるような華々しい大作映画が恋しいなぁ」としみじみ思いながら家路につきましたから。
本作は実話ベースと言われている割にはエンタメ方向に振っていて、アクションシーンも多め。
それなのに、どうして地味で冴えない印象になってしまったのか。
出演陣を1人ひとり見ても決して悪くはないんですよね。
ヘンリー・カヴィルは主役だけあって、むさくるしい髭面でも一番存在感があったし・・・
何と言っても「デンマークの怪力男」と呼ばれるラッセンを演じたアラン・リッチソンのムキムキっぷりが素晴らしかった。
ヘンリー・カヴィルもかなりのマッチョなはずなのに、それを忘れてしまうほどアラン・リッチソンの筋肉はインパクトがありましたね。
アラン・リッチソンは配信ドラマ『ジャック リーチャー -正義のアウトロー- 』でジャック・リーチャーを演じて人気を博しているようなので、今後が楽しみな俳優さんです。
彼を主演にシュワちゃん系の火力満載アクション映画が作られれば面白そうな気がするんですが。
エクスペンダブルズに続きがあれば参戦してほしい存在でもあります。
あとは、チームの“頭脳”で計画の達人の通称アップルを演じるアレックス・ペティファー
賢く物静かな策略家のヘイジーを演じたヒーロー・ファインズ・ティフィンなど。
日本だとこの2人に女性人気が集中しそうな感じがします(笑)
そして、チームの紅一点マージョリーを演じるエイザ・ゴンザレスは・・・
容姿も演技も申し分なし。
あと、スタローン主演のレース映画『ドリヴン』が印象的なティル・シュヴァイガーがいかにもワルそうな悪役として出ていたのも何気に良かった。
このようにキャスティングは昨今の洋画の中では優秀な部類に入ると思うんですが、それでも薄味気味に感じてしまったのは何故なのか。
その話をする前に、まず前提として第二次大戦を舞台としたエンタメ系のアクション映画が今の時代に劇場公開されるというのが凄いことだと思うのです。
98年の『プライベート・ライアン』以降はリアルで血生臭いシリアス路線の第二次大戦映画しか作られなくなったので、こういった昔ながらのエンタメ系がさり気なく復活した事はちょっとした事件にすら思えるといいましょうか。
20代前半の頃に好きだった『戦略大作戦』『特攻大作戦』『荒鷲の要塞』『ナバロンの要塞』とか、あの系譜なんですよね。
今では戦争の惨たらしさや反戦を前面に出した作風ばかりなので、戦争を題材に娯楽映画なんて言うと不謹慎だとしか思われないんでしょうけど、昔はユーモアを散りばめて戦争を皮肉った作風の戦争映画が結構ありまして、私はそういった映画が好きでした。
ただ、そういった往年の作品を観てきているからこそ、恐らく無意識に比較してしまうところがあるんでしょうね。
リー・マーヴィン、クリント・イーストウッド、チャールズ・ブロンソン、テリー・サバラス、ドナルド・サザーランドなど、かつての娯楽系戦争映画には強烈な個性を持つクセ強めの名優たちが出ていただけに、現代の俳優さんだと洗練されすぎているせいか、どこか物足りなさを感じてしまうのかもしれません。
本作も一応、往年の娯楽系戦争映画を思わせるようなユーモアを持ち込んではいるものの、それがそんなに笑えるわけでもないというか。
特に心臓えぐり出しネタとか・・・『ランボー ラスト・ブラッド』で味を占めたのか知らないけど、そういうのもういいから。悪趣味で笑えないっての。
乳首電流はちょっとだけ面白かったけど。
本作ではドイツ兵が無惨にも殺されまくるのですが、そこに悲壮感はなく軽妙なタッチで描かれていて、戦闘シーンは全般的に私がバーチャルの世界でやっていることをそのまま再現しているような内容でした(このような感じで⬇️)
なので、本来なら爽快な気分になれたはずなのに、どうにも冴えない印象になってしまったのは何故なのか。
本作はドイツ軍のUボートを極秘裏に無力化する隠密作戦を描く内容ということもあって、基本的には敵に見つかってはいけないので、先手必勝とばかりにサプレッサー付きの銃でドイツ兵を不意打ちする殺し方が大半になってきます。
そうなると、当然ながら消音しているので迫力が出ない。
先述した『戦略大作戦』や『特攻大作戦』なんかはもっとド派手に弾薬を撒き散らすシーンが多かったですから。
そういった往年の娯楽系戦争映画と比較すると、エンタメに寄せている割には小粒な印象になってしまった感があり、劇場ならではの銃撃体験に乏しく感じられたところはありそうです。
1作品としては好きですが、チケット代に見合う価値があったかどうかは凄く微妙なラインだったという感想になりますね。
映画の内容とは関係ない話ですが・・・
私が観に行った日の観客は私を含めて2人。
分かってはいた事ですが、やはり洋画はお客さんが入らない。
こんな調子では劇場公開される洋画は減少の一途を辿るのではないかと危惧しています。
かといって、本作の内容からもハリウッド復権の道は厳しいと感じざるを得ませんし。
暗黒の邦高洋低時代は果てしなく続いていきそうな雰囲気です。
更に個人的な話をさせてもらうと、私はシネコンの雰囲気が好きではないことはこれまで何度も書いてきましたが、今回改めて本当に嫌いだと感じました。
あの何とも空虚で侘びしい雰囲気、感じの悪いスタッフ、シネコンまでの道すがらの田舎のくせに無理して近代化を図った無味乾燥で落ち着かない雰囲気も好きじゃないし(田舎ならではの良さや素朴さが無くなった)・・・なんで劇場に行く前よりもドンヨリした気分になって帰ってこなきゃいけないのか。
こんな事ならもう劇場に行くのは本当にやめようかなとまで考え始めました。
そもそも私が劇場に足を運んでいるのは、映画が観たいという気持ちよりも、こういったクラシックなアクション映画を支持する為という意味合いの方が強く(お布施感覚)、劇場ならではの体験に拘る気持ちなんて既に失って10年は経っており、今では自宅で観る方がずっと好きだったりするのです。
だから、毎回自分に鞭打って観に行っているような感じでして。
でも、そうやって無理するのもしんどくなってきました。
勿論、『ビーキーパー』ぐらい面白い映画なら喜んで観に行くんですが、今の時代そんなワクワクする映画なんてそうそうあるものでもないわけで。
本来なら『アマチュア』も観に行きたいと思っていたんですが、もう完全にそんな気持ちも無くなりました。
そんなことを考えていた矢先、このようなニュースが⬇️
『ザ・フライ』のクローネンバーグ監督が「自分はもう、あの『映画館という儀式』のような感じにあまり魅力を感じないんです。年齢のせいかもしれないけど、あのみんなで観るという感覚にもあまり共感できない」と語っているそうで、これには凄く共感してしまいました。
私もずっと前から同じように感じていただけに「自分だけじゃなかったんだー!」と、仲間を見つけたような気持ちになれたというか。
基本的に人が多い場所や公共の場というもの自体が好きではないですし、他人と同じ空間で映画を観るという事に価値も感じないし、むしろ少しでも人が少ない環境で観たいと思うから、公開後すぐには観に行かないし、なるべく人が少なそうな時間帯を選んで観に行くようにしているぐらいなので。
90年代辺りまでの空気感と映画館の雰囲気であれば、他人と同じ空間で観ることにも意義や刺激が感じられたと思いますが、映画館はシネコンに変わって、時代も人も大きく変わりすぎました。
今後はよほどでない限り、劇場に足を運ぶことはなくなる気がしています。
後々振り返った時に、『アンジェントルメン』が映画館離れする転機となった…という事になるのかもしれません。
何度も言うようですが、本作の内容自体は決して悪くないんですけどね。
【追記】
この記事を書いた後に思い出してきたんですが、本作はアクションシーン以外のパートがそんなに面白くなかった気がします。
やはり基本的なシナリオ自体に惹きつけられないと、アクションの面白さも半減してしまうという事を改めて感じました。