6月9日19時  芸劇

指揮:シャルル・デュトワ
ピアノ:北村朋幹

フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」 op. 80
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調(ピアノ:北村朋幹)
アンコール
武満徹:《雨の樹 素描II―オリヴィエ・メシアンの 追憶に―》

ドビュッシー:交響詩「海」
ラヴェル:管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」

デュトワがN響に登場しなくなって久しいが、これだけ実力者である、世間の風評やコロナの流行を伺いながら、最近では日本でも大フィルやサイトウキネンなどが招聘している、
首都圏でも一昨年に新日からのラブコールをデュトワが受け、いよいよ聴けるのかとの期待が高まったが、緊急事態宣言や、デュトワ自身の感染で計画が流れ続けていた
今回の特別演奏会も発表の時点ではコロナの流行についても不透明な部分があり、高まる期待と、燻る疑心暗鬼の中、いよいよ本日を迎えることになった

当日券も販売されていたが、芸劇は満員御礼、定刻をかなり過ぎ、そろそろ観客がしびれを切らし始めたタイミングでオケ入場、
新日は予め出演団員の配置が配られるのがいい、今日は14型、コンマスは崔、そして、85歳と思えないしっかりとした足取りでデュトワ登場

一曲目の音が鳴った瞬間、おそらく殆どの聴衆が柔らかく優美なストリングスに心を奪われたのではないか、魔術師健在である
マエストロの指揮ぶりは本当に年齢を感じさせないダイナミックなもので、動きも俊敏で速いテンポも正確に刻んでいた
オケは、弦だけでなく管楽器、打楽器も素晴らしい集中力を保ち、夢のような時間が流れて行った

そして、4月から5度目のラベルのピアノ協奏曲、北村朋幹は、ドイツを中心に活動しており、現代曲も積極的に取り上げているそうだが、本日初めて聴く
上記のようにデュトワと新日の演奏会は2回流れているが、その2回ともデュトワは北村をラベルのソロに指名しており、お気に入りのようだ
第1楽章、北村の演奏はキレキレで軽快そのもの、笑顔で本当に楽しそうに弾いている、デュトワが伴奏者としても一流であることは言うまでもない
第2楽章、笑顔は消え、ゆったりとしたテンポで淡々と、でも今一つ気持ちが入って行けなかったのは何故だろう、欲を言えば音に表情が不足していたように感じられた
第3楽章、再び快活で洒脱な演奏、アンコールは、聞きなれない曲、武満とは予想外だったが、聴衆は戸惑っていたようだった、アンコールピースとしてはどうだろう
そして、ラベルのコンチェルト春場所はラ・サール強し、北村を苦杯を嘗める結果となった

休憩後の「海」は魔術師の面目躍如、「ラ・ヴァルス」は興奮の渦であった
終演後の会場は大興奮、いつもは終演後に直ぐ席を立つ輩が多いのだが、今日はそれが非常に少なかった、殆どの観客がデュトワとの再会を心待ちにしていたことの証左でもあろう
ソロカーテンコールで、デュトワが崔さんと2人で登場すると、聴衆総立ちで今日の再開を祝した