恒例の江戸東京野菜コンシェルジュ協会と江戸ソバリエ協会が共同主催し、総本家更科堀井 麻布十番本店で季節毎(年4回予定)に行われている『四季(春)の会』に参加しました。
今回も江戸時代からの江戸の食文化を学びつつ、江戸蕎麦と
旬の江戸東京野菜ほかの共演を楽しみました。
この会は毎回、旬の江戸東京野菜などから
料理研究家 林幸子先生(江戸ソバリエ協会理事)がレシピを考案され、そのレシピに基づき、更科堀井が調理する形式となっています。
参加者は、林先生が主宰するアトリエ・グー、江戸ソバリエ協会、江戸東京野菜コンシェルジュ協会の各会員となっています。
(年間四季に各1回、同じ内容で2日ずつ、更科堀井麻布十番本店にて開催されます)
会費は6,000円(税込)。飲み物は、含まれず各自注文の上、終了時精算となっています。
会場の総本家更科堀井 麻布十番本店は東京メトロ 大江戸線
麻布十番駅より徒歩5分ぐらいです。
今回の『江戸東京野菜』です。
(『江戸東京野菜』とは、江戸期から始まる東京の野菜文化を
継承するとともに、種苗の大半が自給または、近隣の種苗商に
より確保されていた昭和中期(昭和40年頃)までのいわゆる
在来種、または在来の栽培法等に由来する野菜のことです。
因みに『江戸東京野菜』は季節限定の野菜が多く、その年の
天候により予定していた野菜が集まらないこともあります。)
現在の東京都は江戸とよばれた地域から比べてかなり大きく
なっています。これは明治26年に三多摩地域が神奈川県から東京府へ移管されたためです。東京で伝統野菜を生産しようとしたときに、江戸と呼ばれた地域はもともと耕作地がほとんどなく、その後の開発もあり厳しく地域を限定してしまうと、もともと生産性の低い(F1品種に比べて耐病性などが低く収量も少なかったり、現代の食生活や流通になじまないサイズであったりで)江戸からの伝統野菜の生産量を増やすことが難しいため、「江戸東京」という呼称にし、広く東京都内で生産されたものを都民に提供できるようJA東京中央会で平成23年にこの呼称を使用していくことを定めています。
(JA東京中央会HPより)
※F1品種とは?
交配種ともハイブリッド品種とも呼ばれています。優れた性質を合わせ持つように人工的に交配してつくった品種のことです。
席に着き『本日の献立』を確認します。内容は当会参加者限定(2日間で各夜1回)の江戸蕎麦を絡めた特別な創作料理です。
毎回、18:00時に始まります。
司会進行は、我らが江戸ソバリエ協会ほし理事長(写真中央)
です。
いつも通り、更科堀井堀井社長(写真中央)より歓迎の挨拶が
ありました。
次いで、大竹道茂江戸東京野菜コンシェルジュ協会代表理事・
会長(写真中央)より、今回、食す『江戸東京野菜』について説明がありました。江戸時代から続く『江戸東京野菜』、その成り立ちなどについて具体例、エピソードを交えた説明は、大変興味をそそられます。
そしてこの会の為、季節毎に『江戸東京野菜』などを使用した料理をお考え頂いている料理研究家で江戸ソバリエ協会の理事
でもある林幸子(ゆきこ)先生から今回の献立全てについて
説明を頂きました。
さあ、それでは、「春の会」のスタートです。
その前に先ずは各自、飲み物(会費に含まれていない)を注文します。私はいつも通り、福島県会津若松の酒『名倉山(なぐらやま)』
(税込750円)をぬる燗で頂きます。
お蕎麦屋さんでちびりちびり飲む酒は絶品ですね。
料理名:蔓菜(つるな)とサーモンのサラダ記念日
蔓菜(つるな)は、下茹でするとクセがなくなり葉の厚みがあり柔らかな食感、また養殖サーモンにはアニサキスが寄生する可能性はほとんどなく、加熱処理をせずに生のまま食べることができます。その身はやわらかくそれでいてちゃんとひきしまっています。
しっかりとした味付けでしたが、ぺろつと一気に食べてしまいました。
蔓菜(つるな)とは?
海岸の砂地に生息していることから、「海岸に生えるほうれん草」とも言われています。つるな(蔓菜)は、暖かい地方の海岸に見られるツルナ科の一年草。日本原産で、昭和の初め頃までは夏の自家菜園で重宝された懐かしの伝統野菜です。
葉は肉厚で、生のままかじってみると苦味と少量のしょっぱさが口に残ります。欧米では「ニュージーランド・スピナッチ」と呼ばれ、ホウレンソウと同じような 方法で食用にされたり、またサラダに使用されたりします。日本料理では、「椀だね」として芽の部分だけを吸物に使われることが多いです。
霧島サーモンとは?
鹿児島・霧島連山の綺麗な空気と豊かな自然水という、より自然の生育環境に近い条件で育てられた、引き締まった身と上品な脂のバランスに優れた完全無投薬の養殖サーモンのことです。
料理名:焼天魚奥多摩山葵漬の田楽仕立て
田楽味噌の味が若干強く、ワサビを感じる暇が少なかったのが
少し残念でした。
味噌田楽とは?
味噌田楽とは、豆腐や里芋、こんにゃくなどの食材を串に刺して焼き、みりんや砂糖で甘さを加えた味噌を塗った料理です。
本来は、柚子や木の芽(山椒の若葉)で香り付けをします。
奥多摩山葵とは?
多摩川の清流と冷涼な気候に恵まれた奥多摩では、既に
文化文政の頃には盛んにワサビ栽培が行われていた。文政6年(1823)の「武蔵名勝図会〜海沢村の条」には「山葵 この地の名産なり。多く作りて江戸神田へ出す。」とあり、寿司のネタと酢飯の間にワサビをぬった江戸前の握り寿司が考案された頃と、時代は重なります。(JA東京中央HPより)
天魚(あまご)とは?
先ずは名前の由来ですが、雨の多い梅雨から初夏によく釣れることに由来する。 雨魚、甘子、天魚とも表記されます。体色が美しく「渓流の女王」と呼ばれるアマゴ。かつては山間部の貴重なタンパク源とされていた。塩焼きで食べるのが一般的で、皮目の香ばしさとほっくりとした身肉が美味。天ぷらや甘露煮に料理されるほか、脂があるのでムニエルやマリネにしても良い。旬は春から夏です。
料理名:川口豌豆(えんどう)と鴨つくねの更科蕎麦(半生蕎麦使用)フォー仕立て
フォーはお米を平たく伸ばした麺です。 食感はもちもちとしていて、スープを吸って味が染み込み、とってもおいしく食べられます。 また、腹持ちがいいのも特徴の一つです。当店の更科蕎麦(半生蕎麦使用)をフォー代わりに使用した逸品は、非常に斬新さを感じさせて頂きました。残念だったのはその前の二品がしっかりとした味付けでしたので、若干影響を受けた感じがありました。もう一度この逸品を食べてみたいと思います。
川口豌豆(えんどう)とは?
川口豌豆(えんどう)は八王子市川口地区(旧南多摩郡川口村、現在の八王子市西北部の楢原町、犬目町、川口町、上川町、美山町)でつくられていました。特に昭和30年代は川口農協が生産から販売までの一貫した生産指導を行い、特産化が図られ生産高のピークでした。その後、昭和40年代に入ると畑の宅地化や収穫期間が短く収穫に手間がかかることから急速に姿を消していきました。(JA東京中央HPより)
フォーとは?
フォーはベトナム麺の代表格で、ベトナム北部が発祥と言われています。 米粉の平たい麺で、やわらかいのが特徴です。 コリアンダーや牛肉や鶏肉を具にして食べます。平たいライスヌードル(米粉麺)のことで、 鶏だしにヌクマム(ベトナムの魚醤)などで味付けしたあっさり味のスープが特徴です。あっさりとした薄味で、パクチーなど香草が添えられています。
料理名:芯取り菜のアグー豚巻き天婦羅
芯取り菜は芯はシャキシャキ、葉はやわらかく口当たりがよいことから、昔はチンゲン菜に代わる野菜として、中華料理の炒め物やスープに重宝されたようですね。今回その芯取り菜を沖縄のアグー豚で巻き天婦羅にした逸品は心地よい食感がありながらも
非常に優しい味わいでした。
芯取り菜(ちりめん白菜)とは?
昭和40年(1965)代になり江戸川区、葛飾区、足立区で盛んに作られました。葉全体がやわらかく、火を通しても歯ざわりがよいことから、当時まだ国内で生産されていなかった、チンゲン菜に代わる野菜として、中華料理の炒め物やスープに使われるようになりました。しかし、中国野菜が多く各地で作られるようになってからは生産されなくなってきています。(JA東京中央会HPより)
※今帰仁(なきじん)アグー豚とは?
全身が黒い毛で覆われ、背中が大きく凹み、腹が地面につきそうなほど垂れています。外見からは想像もつかないほど、肉質は優れていて、旨味成分のグルタミン酸を始め、多くのアミノ酸が一般豚の数倍以上含まれており、融点が低い脂の為、非常に甘味が強く脂肪分もコレステロール値が一般豚より低いという点が魅力です。コラーゲンが豊富で、美容・健康にも良いため、女性からも注目されています。ただ一頭から取れる肉量は少ないです。
料理名:牛肉と城南小松菜檜原蒟蒻のすき焼仕立て
全体的にしっかりとした味付けで私には好ましいものでした。一つわがままを言わして頂ければ味付けに少々の甘さが加わったものも食べてみたいと思いました。
城南小松菜(伝統小松菜)とは?
城南コマツナは世田谷区、目黒区、大田区等の城南の暖地向きの固定種であり、明治中期から栽培されていました。固定種と交配種(F1)を明確に分けるため伝統と名前をつけています。
檜原蒟蒻(ひのはらこんにゃく)とは?
檜原村で守られてきた在来こんにゃく。
日本各地にあったが、支那(中国)から大正期に伝わったコンニャクにより、交雑してわが国の在来種は、減少しているが、檜原村に在来種が守られていた。蒟蒻パウダーを使っていない。
明日葉が入った翡翠色の蕎麦つゆです。
心地よい食感の手打ち蕎麦、2枚は食べたかったですね。
明日葉の翡翠つゆともり蕎麦
しっかりとした味を感じるそばつゆになっています。
明日葉とは?
アシタバ(明日葉)は、房総半島、三浦半島、八丈島や大島など伊豆諸島、そして紀伊半島など暖かい太平洋沿岸部に自生している植物で、日本が原産とされています。古くは江戸時代に貝原益軒による「大和本草」にも、八丈島で栽培されている滋養強壮によい薬草として紹介されています。主に若芽を摘んで食用とします。
伊豆大島系と八丈島系の系統があって、伊豆諸島でも島毎に多少形状が異なるといわれています。茎の色で伊豆大島産のものを「赤茎」、八丈島産のものを「青茎」と一般的には呼んでいます。また、御蔵島産のものは他の島に比べ、茎が太いとされ、葉と茎を食用にしています。
味に独特のクセがあるため、天ぷらやバター炒め、おひたし、マヨネーズ和え等、多少クセを抑える調理法がとられています。特に伊豆大島では、アシタバを椿油で揚げた天ぷらが名物料理になっています。(JA東京中央HPより)
翡翠(ひすい)とは?
翡翠は玉の一種で、緑色をしたもの雅称(がしょう、風雅な呼び方・名前)です。
デザートは「ハイカラ蕎麦ぼうろ」です。
定番の京都のそれとは違いますが、お蕎麦屋さんが今回初めて作った「はいから蕎麦ぼうろ」は甘さが抑え目で大変食べやすいものでした。他の物もですが3個をぺろっと食べてしまいました。
ハイカラとは?
現代では、ハイカラという言葉は、洋風の生活様式を好む人々
だけでなく、新しいものを好むや人々や、流行に敏感な人々を
指す。
ぼうろとは?
ボーロは焼き菓子の一種で、小麦粉に砂糖や卵などを加えて丸く成形し、焼き上げたお菓子です。「ボーロ」はポルトガル語。ポルトガル語で、「菓子」という意味があります。「ボーロ」がポルトガルから日本に伝来したのは16世紀のこと。当時は菓子の総称として
使われていましたが、日本では現在に至る間に、お菓子「ボーロ」のみをボーロと呼ぶようになりました。
蕎麦ボーロとは?京都銘菓のひとつで、小麦粉・砂糖・卵を使った基本の生地に蕎麦粉を加えて練ったもの。中心に丸い穴を開け、梅花型に焼いた逸品。
最後に、更科堀井麻布十番店の河合孝義料理長より、ご挨拶及び今回の創作料理について作られた側としての感想等お話頂きました。
創業:寛政元(1789)年
住所:東京都港区元麻布3-11-4
電話:03ー3403-3401(代)
営業時間
≪平日≫
【昼の部】
11:30~15:30(L.O.15:00)
【夜の部】
17:00~20:30(L.O.20:00)
≪土日祝≫
11:00~20:30(L.O.20:00)
土日祝日は通し営業。
座席:70席 完全禁煙
アクセス:
東京メトロ 日比谷線六本木駅3番出口より徒歩10分
東京メトロ 南北線麻布十番駅4番出口より徒歩7分
東京メトロ 大江戸線麻布十番駅7番出口より徒歩5分
今回も江戸から東京へと繋がる東京(江戸)の伝統野菜について蕎麦と同様に調理方法を含めて学びながら、同時に、食べて
実感し、そして楽しむ、そんな機会を得られた事に感謝したいです。
次回、四季(夏)の会も楽しみです。