戦前から混戦模様だった今年のオークス。まさかここまで力の違いがはっきりする結果が待ちうけているとは誰が想像しただろうか。
果敢にハナを切ったマイネエポナがやや速い流れを作り出し、縦長の展開。元々2400mに適性がありそうな馬はこれといっておらず、それを追いかけて行った馬たちは案の定早々に脚が上がった。その中で、馬場の真ん中を次元の違う末脚で駆け抜けたのが桜花賞馬ジェンティルドンナだった。
これまでマイル戦しか経験したことがなかった上、どちらかと言えば切れ味勝負型。加えて桜花賞時に手綱をとった岩田騎手が騎乗できないなど、過酷な2400mを戦い抜くには決してプラスではない材料が揃っていたことから、桜花賞馬ながら人気ではミッドサマーフェア、ヴィルシーナに遅れをとっていたジェンティルドンナ。この日もゲート前の輪乗り時からテンションが高く、見た限りではとても2400mで5馬身差をつけて圧勝するようには思えなかった。
ところが、レースでは人気2頭を見ながら折り合いはバッチリ。勝負どころで馬群の外に出していざ追われるとまさに次元の違う脚。あっという間に突き放して最後は5馬身差。同世代の牝馬では現段階では力が2枚も3枚も違う。そうはっきりと印象付ける圧勝だった。オークスで5馬身近い差をつけた馬は近年では浮かばない。ぱっと思いつくのもテスコガビーくらいだから、ジェンティルドンナが見せたパフォーマンスは現3歳では圧倒的だった。
ただこれだけ強い勝ち方をしたとはいえ、残り200ではかなりフラフラしており決してこの距離が得意とは言えず、この時期の牝馬によくある完成度の違いによる部分も大きいだろう。2分23秒6というとんでもないオークスレコードを叩き出すなど、このレースで力を出し切った感は強い。力の違いは明らかになっただけにあとは無事に夏を越せるかどうか。順調なら牝馬3冠の可能性は高いと言っていいだろう。
距離延長はプラスと見られ、勝ち馬より人気になった2着のヴィルシーナ。向正面から内田騎手の手が動き、勝負所でも手応えはさっぱりと言ってよかっただろう。エンジンのかかりが遅い馬とはいえ、さすがにここまで追走に苦労しているようでは厳しいと思ったが、思った以上に直線もしぶとく伸びてきた。この馬の力は見せたが、桜花賞で半馬身差だった着差は、逆転材料になると思われた距離延長で一気に5馬身にまで広がってしまった。完敗だった。
3着アイスフォーリスと4着アイムユアーズの差はこの距離で求められる最後の底力の差か。いつもより後ろで我慢したアイスフォーリスはステイゴールドの産駒だけあって長めの距離でも簡単には息切れしない。やはり2000m前後なら堅実だ。アイムユアーズは距離不安がありながら勝ちにいく競馬をした分苦しくなった。それでも力は見せたと言えそうだ。
とはいえ掲示板に乗った馬たちは総じて残り100mで脚色がみな一緒になってしまった。その分余計にジェンティルドンナとの力差がはっきりしてしまった形になる。しかしながら、掲示板に乗れなかった馬たちはさらに早く、坂の登りで完全に止まってしまっていた。
唯一ゴール前の脚が目を引いたダイワズームも、もっと早い段階で形通りにエンジンがかかっていたらやはり一杯になってしまっただろう。ただ同馬の場合気性的に難しい面もあるのでそのあたりが変わればもう少しやれる可能性はある。
勝ったジェンティルドンナに今後立ち向かえるとすれば、厳しいローテーションでとてもいい状態とは言えなかったハナズゴールだろう。この馬も最後は苦しくなって脚が上がってしまったが、追われてからの瞬発力はさすがのものがあった。万全ならもっとやれる馬だし、能力の高さはあらためて示した。
最終的にはヴィルシーナを抑えて1番人気になったミッドサマーフェアは13着に大敗。道中の折り合いも問題なく、勝負所での手応えも悪くなかったが、さあこれからというところでまったく反応がなかった。本来の切れ味が見られることなく沈んで行ったあたり、スタミナ不足ということになるだろう。この馬の場合休みなく使われてきた目に見えない疲れもあったのかもしれない。後付けでしかないが、最終追いも少しハードすぎたか。
今回のオークスはあまりに総合力の差がはっきりしすぎた。かわいそうだが、「よく伸びたジェンティルドンナと止まったそれ以外」という区別ができてしまうほどにわかりやすいレースだった。この内容が、同世代の牡馬やいずれ戦うことになるであろう古馬との戦いにおいて比較対象になるのかと言われればそれはNOだろう。ジェンティルドンナが見せたパフォーマンスは素晴らしかったが、決して全体のレベルの高いレースとは言えない、そんな感想を持った。