小雨がぱらつく中、街の喧騒に身を沈め、行き交う雑踏を瞳に映していた。

私もまた大勢の一員であり、ただ機械的に歩いていた。

不安にさいなまれた感情は既になく、心は虚しさで満ちていた。





無くなる前に失う。
得意な結末だ…。



いつも自分が欲しいものを、手に入れようとしない。
それは、後悔よりも当たり前のこととして受け入れている。

感情のコントロールが下手なのに、冷酷になりきることはお手のもの。
そう、慣れているから…。





普段から相手が誰であろうと、会話の中に疑問符を使わない。

「なんで?」「どうして?」という類いの言葉を発しない。

それは、その相手に興味がないわけではなく、人は言ってもいいことは、聴かずとも話すと考えているから。


言わないということは、相手の中で、言っても意味がないか、言う必要がない、又は言いたくないのいずれかであると思っている。



自分から余計なことも言わないし、相手にもそれを求めない。



知らないなら知らないままでいい。



それによって誤解を招いても、その解釈を受け入れるだけ。

そう慣れているから…。




私たちは、
「生まれて、老いて、病んで、死ぬ」
この原則の中で日々葛藤している。



いずれ自分も淘汰する。

それだけのことと解っていれば、揺れ動くことはない。


言うなれば、
人生は死ぬまでの暇潰し。

いささかの子細もない。



ついこの前まで大切にしていた万華鏡が壊れてしまった

中を覗けばいびつな鏡の欠片が音をたてる



壊れてしまった…









徐々に眼の中を

銀色の世界が覆う…






夢から醒めたら
逃れられない孤独が襲う

猜疑な眼差しが
暗闇の後ろから放たれる

現実は妙な世界
綺麗事だけが並べられて

真実は常に曖昧
抗う事の出来ない日々よ

黄昏は必然なり
発することのない言の葉





重ねた時間は
音もなく粉々に崩れて…





昼も夜もなかった数日が終わってゆく

弱った身体以上に心の奥が痛い

最初から答えの出ていたこと

耐えきれずに仮初めの夢を思い描いた





まるで万華鏡の中のような世界…



儚く切ない昨日逹が…


緩慢に

だけど

確実に…





だから









それもこれも
そろそろ終わりにしないといけない



静寂の中で
光に包まれながら
目を閉じ微笑む


そして今
総てが終わりを告げる

限り無く冷たい手は
一度も握ることはなかった

始まらない物語は
どう考えても未来が描けない物語でしかなかった




嘘はなかったけれど
二度と振り返ることはなかった…



そうすることが
正しいと解りきっていたのだから…






キラキラと美しく輝いていた世界は、もう壊れてしまったんだ…






ある一つの悲しみの実から、涙がこぼれ落ちた

総てを無に還して

描いた空は、青く澄み渡る

遠い昔からずっと変わらずに…






そっとささやいた夢

知っている?

叶わないけど、ずっと想い続けていたんだ…








真夜中に紡がれた刺繍

漆黒の調和を描いて

冷たい焔がこの身を焦がす



届かない両手は
少しだけ疲れたけど
いつまでもいつまでも拡げていた…


気付くことはなかった

振り向くこともなかった

あと少しのところで届かない指先は

僅かに飾ることも許されず

やりきれない真実を掴む




形を無くしてゆく

いつか記憶も消えてゆく




そう
結局私は自分の夢の中でしか生きられない

その内
夢に取り込まれて後戻り出来ない


名前を忘れた未来への河

悲しみの生まれた場所までの片道切符を手に…


たどり着くと河のほとりに一本の樹


この樹は悲しみの実をつけるという



小さな青い実


涙を流す小さな青い実


こぼれる度に、色々なものをなくしてゆく



すべてがなくなるその時まで


悲しみは終わることはない…




ある一つの悲しみの実から、涙がこぼれ落ちた

総てを無に還して

描いた空は、青く澄み渡る

遠い昔からずっと変わらずに…