パリに住んでいたは日本食に不自由したことがなかった。
なぜなら日本食レストランでアルバイトしていたので、賄いで白米もみそ汁もカレーもたくさん食べさせてもらったし、時折さんまやかつ丼なんかも食べさせてもらった。
余ったいなり寿司に至っては、初めのうちは皆喜んでもらって帰ったが、その内飽きてしまって、もったいないけれど最後は破棄していた。
タイムマシンがあったら、今からでもすべて回収したいくらい。
そもそも大都市には日本食が豊富にそろっている食料品店(épicerie japonais もしくは épicerie asiatique)がある。
日本で買うよりは割高ではあるが、ありがたい存在である。
しかし今住んでいる街には、日本食はおろかアジア食料品店さえない。
ただ、私が思っていた以上に寿司文化はフランスの隅々まで浸透していたようで、よく行く大型スーパーにも寿司米や海苔、醤油などが置いてある。
でも日本産ではないものが多く質がイマイチなので、よほどのことがないと買わない。
なので大体月一でパリやリヨンにある日本食の食料品店に、インターネットで注文して送ってもらっている。
どこのお店も一定以上の金額を買うと、送料無料で送ってくれるし、うちは毎回お米を10kg買うので、下手に自分で買って持って帰るよりも、家の前まで届けてもらえる方がありがたい。
さすがに納豆のように冷凍されているものは送ってもらえないので、そこは日本に一時帰国するまでグッと我慢。
日本の調味料(醤油や味噌)があれば、あとは現地の肉、魚、野菜で何となく日本食が作れる。
肉は日本やフランスの大都市と違い、薄切り肉が手に入らないし、豚肉に至っては挽肉さえ希少。
魚はとても高いので頻繁に買わないし、そうなると頼りになるのは野菜。
玉ねぎやジャガイモ、人参、キュウリ、インゲン、ナス、ショウガ、ニンニクなんかはおそらくどこの国でも買えるし、和洋中、何にでも使えてとても便利。
ナスやキュウリは夏野菜だけど、一年中買える。
シイタケも買えるけれど、日本のそれと違って香りが全然しないので、私はシイタケよりも安いブラウンマッシュルームをよく買う。こちらも和洋中に使えるからありがたい。
夏が終わる頃になると、大根もよく買う。
フランス語だと Radis blanc もしくは Navet blanc かな。(うちの近所のスーパーではNavet blanc)
一年中売っているが、夏場のそれは買う気が失せるくらい細い。人参かと思うくらい。張りもないし。
やっぱり大根にはある程度の太さを求めてしまう。
カブもあるけれど、近所のスーパーにはポトフに入れる頭が紫色のカブしかなくて、生食にはあまり向いていないらしいので買っていない。
ドイツでは、大根もカブも日本のそれと変わらないとても立派なものがスーパーで手に入ったので、ホクホクだった。
カブは葉っぱもついていたから、とてもありがたかった。
白菜も重宝する。こちらも暑い時期のものはイマイチだけど、寒くなって来ると立派なものが手に入る。
ただ、近年どんどん値上がってきている。下手すると白菜1つで4€くらいするときもあるので、そういう時は買わない。
キャベツも売っているが、種類を選ばないといけない。
昔、お好み焼きを作ろうと、調べもしないで買ったら、葉が硬くて食べるのが苦行のようになってしまった。
結局、調べるのも選ぶのも面倒くさくて、すべて白菜で代用している。
ドイツでは円錐型の spitzkohl が柔らかいと聞いたが、ついぞ買わず白菜をフル活用していた。
以前住んでいたそこそこ大きな街のアジア食料品店で、ゴボウをみかけたので喜んで買ったのだが、家に帰って調理しようとしたら、実はゴボウではなくて山芋、たぶんジネンジョだった。
それはそれですりおろして美味しくいただいたのだが、ゴボウも食べたかった。
そんな私が最近ハマっているのが、トピナンブール。日本語では菊芋。
見た目は大きな里芋っぽいが、味や歯ごたえはゴボウに少し似てるとか。
早速買ってきんぴらにしてみたら、なるほど、食感がシャキシャキしていてゴボウっぽい。
ただ、味にクセがないので、ゴボウの風味はない。皮をむかずに食べたら似ているかもしれないが、まだ試していない。
トピナンブールは生食もできるらしいが、こちらもまだ試していない。
火を通し過ぎると柔らかくなってしまうので注意が必要だが、煮物にもゴボウの代用品として使える。
私はたまに餃子を作るのだが、冷蔵庫にキャベツはおろか白菜すらないことがあった。
そんな時、トピナンブールを粗みじん切りにして入れてみたら、いい感じにシャキシャキしていてとても美味しかった。
ただ、餃子は皮から作るため(近所で売ってないから)、時間と手間がかかるので、頻繁に作らないのだが。
皮をこねたり伸ばす作業のせいで、翌日は筋肉痛になるし。
そういえば一時期セロリのきんぴらにハマった時期もあった。
セロリも洋風なイメージがあるけれど(私だけ?)、浅漬けにしてもとても美味しい。
ただ、葉っぱの処理に困るので、最近あまり買っていない。
葉っぱはペーストにしたり、みじん切りにして乾燥させたりと、活用できるようにいろいろと頑張ってみたけれど、毎回それをするのは面倒なので、葉っぱ無しのものがあったら、そちらを買うようにしている。
どうも私は歯ごたえがあるものが好きらしく、ブロッコリーの芯もよく食べる。
ブロッコリーそのものも好きだが、芯がこれまた優秀で、洋風にポタージュにすることもあれば、胡麻油と醤油で炒めてザーサイっぽくもできる(和食じゃないけど)。
栄養分も豊富だし、美味しいしで大好きなんだけど、日本で働いていた頃、同僚から「そんなとこ食べるの信じられない」と言われたことがあった。
こんなに美味しいものを知らないなんて、もったいないね。
秋になると美味しそうなかぼちゃがたくさん店に並ぶ。
よく言われることだが、こちらの芋やかぼちゃは水っぽいので、日本のように熱を加えて食べるよりもスープにするのが定番。
フランスに来てすぐの頃、そうとは知らずに大学芋を作ろうと思ったら、大失敗したことがあった。
なので、芋もかぼちゃもスープ用と割り切って、Potimmaron や Butternut をよく買う。
ただつい最近、こんなかぼちゃを見かけた。
その名も SHIATSU 。
こんな名前が付いていたらちょっと期待してしまう。
調べてみたら、日本のかぼちゃに比べたら水っぽいけれど、煮つけにできないこともないとか。
しかもその日はかぼちゃが特売だったので、思い切って買って、調理してみた。
すると、確かに水は出るけれど、ちゃんと煮つけにはなった。
見慣れないものなので、子供たちは手を付けることもなく、かぼちゃ1個を私がほぼ一人で平らげることになったわけだが。
いつも行くスーパーではないけれど、私の街にもありがたいことに冷凍食品専門店の Picard がある。
Picard の何が素晴らしいかというと、枝豆が売っていること。
もちろん冷凍だしむき身なので、塩ゆでして食べることはできないけれど、炊き込みご飯や炒飯に入れると、美味しいのはもちろん彩りも良くてとても使える。
他にも使える野菜があった気がするけれど、今のところ思いつくのはこれくらいかな。
ドイツ時代のママ友数人から、コールラビ kohlrabi がみそ汁の具になったりいろいろと使えると聞いていたのだが、まだ試してない。
フランスでは chou rave として売られているので、いつか試してみよう。
日本ではあまりなじみのない野菜も、調理法次第では日本食にできるので、これからも開拓し続けるのみ。