Capsulite de l'épaule  五十肩備忘録2 | 南仏ーの生活

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ようやく迎えたキネ初日。

予約した時間より少し早めに到着。

 

建物のドアのベルを一度鳴らし、外で待機。

屋根のひさしの下に、椅子が数脚置いてある。一応ここが待合室(外だけど)なのだろう。

予め友人から聞いていたので戸惑いはしなかったが、何も知らなかったらズカズカと中に入って行ったと思う。

 

しばらくすると入り口のドアが開き、中から出てきた女性が私の名前を呼びにくそうに呼ぶ。

日本の名字は発音難しいからね。

 

入り口で靴を脱いで、受付に通される。

保険証とかかりつけ医からもらった処方箋を渡した。

ラボで撮ってもらったエコグラフィーの画像と診断書も必要だったのに忘れてしまったので、次回の予約時に渡すことになった。

 

先ほど名前を呼びに来てくれた女性が、どうやら施術してくれる先生らしい。

先生に、どこがどのように痛いのかを説明し、先生もまた、かかりつけ医からの処方箋を見ながら、私の肩を触ったり、腕を上げたり下げたり回したりして診察する。

 

その後、別の部屋に通され、着ていたセーターやその下のババシャツを脱ぐように言われた。

これも友人から聞いていたので、予めブラトップのキャミソールを仕込んできたから問題なし。

 

上半身だけ少し起き上がった状態の施術用ベッドに横たわると、先生がスタンガンみたいな装置を持ち上げて、「これを使って砕いていきます」と言った。

そして「これはかなり不快だけど。。。」とも。

 

うわぁ、またもや言われた。そんなに不快なの、この治療?

そしてその意味はすぐに分かる。

 

ところで私の症状は、大きく括れば「五十肩」だけど、細かく定義するのであればおそらく「石灰沈着性鍵盤炎」。

肩の関節部分が石灰化して、炎症を起こしている状態。

 

治すには、ステロイド療法とか、注射で石灰部分を吸引したりと、いろいろと方法があるようだが、実は安静にしていれば自然に治ることが多いらしい。

四十肩とか五十肩ってだいたいそうだよね。

ただ、とても時間がかかるため、生活に支障を来すこともあり、早く治すために治療するのである。

 

で、私の治療方法は、体外衝撃波で石灰を砕くというもの。

それこそが「不快な治療」の正体。

「衝撃波」なんて聞くと、かめはめ波とか波動とか、ジャンプの世界みたいだが、もちろんそんなにかっこいいものではない。

 

さて、先生が私の肩にジェルを塗り、件の装置を肩に当てた。

「今から電源入れるから、我慢できなかった言って」と言い、私がうなずくと、

 

ガガがガガがガガ!!

 

 

 

うわ、これ、本当にスタンガンじゃん!

いや、工事現場か?!

 

初めは表皮が痛いような気がするけれど、すぐに肩の内部の何とも言えない疼きが襲ってくる。

痛みというよりも、そう、ただただ「不快」。

お医者さんが口を揃えて言った意味が、痛いほどわかったよ。

かめはめ波ってもっとすごいんだろうな。

 

数秒後、いったん装置を切って、先生が「どう?我慢できそう?」と聞く。

正直今すぐにでも止めたいけれど、それではここにいる意味がないので、大丈夫とうなずく。

 

この時期はまだフランスでもマスク必須だったので、目はギリギリ平静を装っていたが、マスクの下では歯を食いしばっていた。

 

再度肩にあの嫌な衝撃が走り、耐えること2,3分。

ふいに装置が止まり、先生が「はい、今日はこれでおしまい」と言った。

 

不幸中の幸いとでも言うべきか、この不快な治療は施術時間がとても短い。

 

サッと着替えてまた受付に戻り、次回の予約を取っておしまい。

 

この日から3,4ヶ月間、この短い治療のために、週2回キネに通った。

私は幸い同じ市内だから、さほど苦ではなかったが、もう少し遠いところに住んでいたら、通うの面倒だったろうな。

 

この治療を始めた頃は、痛みのピークに差し掛かっていたので、こんなに頻繁に通っているのに痛みが増すばかりで参っていた。

キネの施術を疑うわけではないが、何をするにもとにかく痛くて痛くて仕方なかった。

 

いつも何気なくしていたこと、例えば頭上の棚に食器を置くとか、車の運転中に助手席のカバンに手を伸ばすとか、転びそうになってとっさに手を付くとか、そういったことができなくなった。

しまいには痛みでよく眠れなくなり、毎晩痛い方の肩の下に、折りたたんだバスタオルを敷いて寝るようになった。

寝返りもおちおち打てやしない。

 

季節的にも寒さが日に日に増していき、いつ治るともわからぬ痛みに、心なしか気分も暗くなっていった。