タモリ
タモリカップ
2017・2
じっと無言で祭壇の前に立ち尽くす。
その視線の先には、
「タモリカップ」のロゴ入りの帽子をかぶった
男性の笑顔の遺影が。
金井尚史さん(享年56)。
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「金井さんは、
相手の懐に入るのが早くてうまい
。タモリさんと番組を始めたときもそう。
タモリさんがヨットが好きだと聞くと、
あっという間に1級船舶免許を取って周囲を驚かせた
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タモリの夢の実現に一役買ったのも、金井さんだった。
「タモリさんは昔から
『ヨットレース=お金持ちのスポーツというイメージを
なんとか払拭したい』
と話してました。
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参加費を下げて、
誰でも気軽に楽しめる、
そんなヨットレースをやりたいというのが
タモリさんの夢でした。
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これまで、いくつもの難しい番組企画を成立させてきた金井さんは、
その高い交渉能力、
プロデューサーとしての手腕を、
タモリのためにいかんなく発揮した。
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参加費を抑えるために、たくさんの企業に協賛を求めて回った。
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「そうして09年、
『日本一楽しいヨットレース』を
謳い文句に
スタートしたのが
『タモリカップ』です。
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大会プロデューサーとして毎年開催を続けながら
規模を拡大させて、
昨年には(2010年かな)
237艇が参加する
日本一のヨットレースにしたんです」(ヨット関係者)
タモリカップをここまで大きく育ててきた2人。
その絆はいつしか揺るぎないものとなっていた。
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其の後
医師からの余命宣告に、
本人以上にショックを受けたのがタモリだった。
「彼の病状を聞いたタモリさんは、
ひどく驚いていたようです。
そして金井に向かって突然、
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『おれ、引退するから。ヨットで世界一周しよう』と言ったんです」(金井さんの友人)
複数のレギュラー番組を抱え、芸能界で不動の地位を築いたタモリ。
だが、それらすべてを投げ捨ててまで、
タモリは金井さんに生きるための希望を与えたかったのだ。
しかし、
金井さんの病状は予想以上に早く悪化していった。