「赤いワンピース」 | ユリの木の下で

ユリの木の下で

ゆりの木の下で生まれ
ゆりの木の下で遊び
ゆりの木の下で大きく成りました

有る処に


赤いワンピースを着た

女の子が居ました


赤いワンピース

お母さんの手作りです


有る時

沿道に

人が集まって何かを待って居ました


其の子も待って居ました

待ってた訳じゃないか

みんなと 立って居たのかな

良く 一人で行ったね

何せ

5歳位だよ

其処の処が判らない

家から近いって云う事も有ったけどね


ジープに乗った黒い人が

其の子に

ガムを投げて呉れたの


其のガムを其処で即座に噛んで居たら

其の子の人生は

きっと

今とは違う

まるで違う

事に成って居たと思うの


其の子は

疑いも無く

何の躊躇もせず

家に

いさんで

喜んで

持って帰ったの


皆が

家族が

喜んで

かんで呉れた事が凄く小さいながらに嬉しかったの


一杯人垣が出来ている中で

其の子がガムを投げて貰った事が

いい知れぬ出来事に成ったかも知れない

でも

其処で何かを感じて居たら

きっと

其の子は

今の人生とはまるで違う人生を歩んで居たと思う


こうして

随時

何かは

殆んどの人達は

周りに取り囲まれたものから取り除かれて行く


色気を持たないままに

歳をとって仕舞った


でも

もしかしたら

此れが

最高の色気なのかもしれないね


赤い服を着たあの女の子を思い出す度に

思い出す

人生の波


其の波が打ち寄せて来る度に

何故だか

ちょっぴり

悲しく成る


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