①の続き
脚本について。宝塚でもお馴染み『赤と黒』ですが、宝塚版よりも更に
物語や登場人物は簡素になっています。ただ、宝塚版では出てこなかった
原作登場人物がいたりで、両方見るとうまく補完できそうですね。
実は、、、この『赤と黒』という話があまり好きではなく
原作はちゃんと読んだことがなく、名作漫画的なものを読んだのと
宝塚版でしか知らないのですが、ひたすら「ジュリアン酷い男」しか思えなくて。
あと、他の人物も誰一人共感できないって感じでした。
今回はこれまでの人物アプローチとは随分違った感じでした。
びっくりしたのが、思わずジュリアンに入れ込んでしまったこと。
(相変わらず共感はできませんけど)今までの身の丈に合わない
野心の為に周りを利用しても厭わないという感じではなく。
(別にそういうキャラが嫌いなわけじゃないですが、原作ジュリアンの場合
悪に振り切るわけじゃなく中途半端なんですよね・・・それもなんとも)
野心を抱いているのは同じですが、とにかく真面目で生き方に不器用といった感じ。
レナール夫人に対しても、初めて恋をして愛を知って、どう立ち回っていいか
分からない感じが陰キャラ青年そのもの(笑)失恋から立ち直るためにも
マチルドと恋をしようと決めても、やっぱり振り回されっぱなし。
ジェロニモさんに恋の教授された時だけ余裕もてているのが、
本当に恋に奥手感が良く出ていると思います。
結局3人の女性から想いを寄せられていたにもかかわらず、生き方が不器用だったため
振り回されるだけ振り回されて、誰一人幸せにならずに。
最後なんかマチルドと子供までできたにも関わらず、マチルドの事は考えられずに
ルイーズの事で頭がいっぱいなところなんて「おいおい」とも思わないでもないですが。
それほどまでに、ルイーズに本気で恋してたんだなというのが今回よく伝わってきて。
(今まではジュリアン→ルイーズってただ利用してただけって感が否めなくて)
最後に本当の光を見つけて「未来と今を交換した」闇の深い未来を選ぶより、
希望にあふれたまま死に向かうジュリアンが本当に切ない
今回のマチルド像も退屈に飽く活気な小娘だけれど、気高く賢さも持ち合わせて。
でもその賢さも若さが出ているところが良い!(ただ、貴族暮らしのお嬢様が
子供を連れて家を出ても平民の暮らしは難しいのではとも思うが)
ジュリアンに銃を見せられても動揺しないところが、タダモノじゃない感が
出ていますが、そんな彼女が最後に愛と絶望(ジュリアンの真実の愛が
別にあること)を知って、妻になり母になったところで一気に
少女から大人の女性になるのが切なくも美しい。
レナール夫人がどの『赤と黒』でも肝になってくると思うのですが、
くらっちレナールはしっとりと誰もが虜になる人妻の色気が凄くて!
夫の着飾る感覚であったり、ヴァルノの独占欲であったり、
そしてジュリアンの狂気的な愛であったとしても、皆が虜になるのが
納得の存在感。(そして、夫も何だかんだで愛していたとは思う)
ジュリアンとのことがばれて、彼を悪者に仕立てて追い出すシーン。
勿論ルイーズ的にはジュリアンを思っての言動でもあったわけですが、
本気かと思うくらいの演技力。貴族の裏の言葉だなんてジュリアンにわかるはずもなく
そのルイーズも彼の為に家を追い出したにも関わらず、彼に相手が出来たと知って
(脅された形ではあれ)彼を今度は本当に裏切り、でもその彼が自分に感情を向けて
銃を向ける。その姿を観てほほ笑むなんて、、、、なんて歪んだ愛情。
でも歪んだ感情が納得できてしまう、その芝居と歌にただただ感服でした。
今回の話を語る上で外せないのがヴァルノ夫妻の存在。いかにも成金な体であり、
まるで『レミゼ』テナルディエ夫妻かのような小悪党で、やってることは結構
えげつないのですがついついクスッと笑ってしまう愛嬌もある。
何だかんだで息もぴったりで、今作一番のベストカップルなんじゃないでしょうか(笑)
続く