① の続き芝居の全体感想。
セット・舞台機構について。今回初大劇場と思えないぐらい、立体的に舞台を使っております。
上手い使い方だなと思ったのが、盆の上を歩かせて後ろのセットを動かすことによって長い間森を
散歩しているように見せること。更に特筆すべきは一揆のシーン。高低さや奥行きを最大限生かして
迫力ある場面に。目の前に必死な民衆側に対し、秩序ある動きをしていた藩兵側の対比もよかった。
場面転換も上手いですよね!鬱蒼と木々が生い茂る山間や、華やかな江戸城中。同じ村の情景でも
細かく転換していくことによって場面の変化がよりわかり易い。また、スムーズなんですよね!初見で
物語に集中してたからってのもありますが「いつの間にセットが変わった?」と思うこと多々ありました。
『月雲』『翼人』から思っていましたが、ライティングもセンスありますよね。今回特に印象的だったのが
上からスポットを交差させて当ててた所。星逢祭りでチョンパのようにパッと照明を付けるのもいい。
光つながりで、プロローグの星が一つ瞬き二つ瞬き、やがて一面に流れる天の川となったところは
大勢動員しているだけあって壮観でしたし、光の渦に翻弄される3人の姿も幻想的でした。
一番の目玉は、なんていったって“星観の櫓”。子供たちの力で作り上げた粗末な櫓(逆に子供たちだけで
あれほどの物が作れるのも凄いけどw)出会いの場であり、狭い場所で片寄せあう温もりの場であり、
別れの場であり、辛い想い出となり、やがて人々の記憶から忘れられる。そんな流れに合わせて、
子供たちの自慢の秘密基地だった櫓もどんどん朽ちて行く様がより物悲しさを増していきます。
そんでもってね、ラストのあの使い方は卑怯だわ本当に止めを刺されましたよ。涙腺が
音楽・衣装について。美しい旋律の主題歌ですが、作中何度もリフレインされます。回数としては
多すぎるぐらいですが、その都度シーンに合わせて曲調や歌い方変えているので気になりませんでした。
「♪星探しの唄」子供たちの無垢な想いに心揺さぶられ。最後はメロディー聴くと反射で涙が零れるという
演技や場面転換もですが、衣装でも時の流れを表しています。農民となんら変わらない着物から
山の案山子、出世し上物の拵えな裃、そして最後は月代にし威風堂々たる長裃姿に。泉谷源太、
他の村人たちも時の流れと共に“年相応”に変化し。決して華美な衣装ではありませんが、目に優しい。
脚本も無駄がないという話をしましたが、全体的に見ても派手さはなくても美しく、奇をてらわずとも
ハッとするシーンもあり、正統派だけれども型通りではない。演出を人で例えるならば、適度に鍛えられた
体は何を着ても映えるということか。(他には格式ばって型落ちした衣装に拘る人や、やけに派手な
ブランド品で着飾ってたりや、女装しないと気が済まなかったりwコスプレだったりww←良し悪しは別ですよ)
と、今までとにかく最大級の賛辞を送ってきたわけですが、次作への期待をこめて。大勢口の人数の
使い方は上手いですが(娘役さんの使い方は役が少ない分勿体なかったですけど)役付きの人が
折角魅力的な役な割には生かしきれてなかった部分も。仲間うちもチョビ(チョビ言うなw)が目立ち、
大さんが割と目立つ役なぐらいですし、月城君やせし姐さんもキャラは良いのに途中でフェードアウト。
そうなんです。1時間半上手く話しを纏めているんですが、欲を言うならば小箱1本物でじっくり見たかった。
話を端折りすぎとかではないのですが、吉宗公や高姫との関係、気の優しい男が冷徹な男になった経緯
(勿論どちらも行間を読めるんですけどね)きっと上田先生ならただ1時間半のものを間延びさせて
一本物にするのではなく、サイドストーリーを織り込みさらに昇華させたストーリーを書いてくださる気がして。
サイドストーリーといえば。制作発表では三人で夏の三角星探したり、源太が空に向かって紀之介への
想いを語ったり。本編には載らなかったストーリーも折りこんで是非観てみたいですね。
過去作とも悲劇続き(『翼人』もどちらかと言えば)悲劇をドラマティックに描くのは簡単とは言わないまでも
ハッピーエンドの方がより難しい。ですので次作は是非心から温かくなるような、そんなお話が観てみたい。
ずっと上田先生の話ばかりですが雪組の、そして雪組が誇るトリデンテの力があってこそ!
これほどの名作を作り上げた上田先生、そしてその世界観を見事に表現しきった雪組に感謝
『月雲』では月を見上げ、『翼人』では空を見上げ、『星逢』では星を見上げる。
次作ではいったい何を見上げるのでしょう。。。UFOとか?(笑)
続く