チームビルディングに効果的なグループワークを紹介します。PHPビジネス新書「強みを活かす」公開記事ですニコ

◆強みがわかるグループワーク

 

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チームメンバー同士が、お互いの強みを理解できる研修プログラムを紹介します。サイバーエージェントでは次世代経営者育成プログラムなどで実施しているワークショップです。「グロースファインダー」と呼ぶもので、「グロース」は成長を意味します。成長のポイントを見つけることができるワークショップと説明しています。

 

このワークは、一人につき10-20分ほど使います。4人チームならだいたい60-80分が目安になります。

 

まず一人が席を外します。席を外したのが吉田さんだとすると、それ以外の3人は、2分間、吉田さんの強みを個人ワークとして白紙などに箇条書きします。それが終わったら、1人が司会になり、誰が言ったか分からないように、3人があげた吉田さんの強みを順不同にホワイトボードに書き出します。一番上には大きく「強み」と書いておきましょう。これに3分くらいで合計五分。

 

次に、吉田さんの弱みを書き出します。課題や改善してほしい要望を3人が先ほど同様、白紙に個人ワークで箇条書きをします。そして、先ほどの強みの隣にホワイトボードに書き出すのですが、このとき吉田さんが上司の場合、部下の3人は吉田さんの課題などを書きだすのは躊躇したりするかもしれません。

 

そこで役に立つのが、文末にすべて「かも」とつける方法です。書きにくいことや言いにくいことには全部、言葉の「かも」を付けて話す。これを私は「かもトーク」と呼んでいるのですが、書きにくくて言いにくいことを、書きやすくて言いやすくする工夫です。

 

「相談しようと思っても怖いかも」「細かいチェックが多いかも」「いつもオフィスにいないかも」など、「かも」を付けて発言し、「かも」を付けてホワイトボードに書き出します。先ほど「強み」と書いたタイトルに照合するようにその箇条書きの上のタイトルも「弱みかも」と書いておきましょう。こうすると、上司の課題であってもより言いやすく、書きやすくなります。強みに5分、弱みに5分で、ここまでで約10分です。

 

ここで、席を外してもらっていた吉田さんに席に戻ってもらい、ホワイトボードを見てもらいます。司会役の一人がホワイトボードに書き出しているので、一つひとつを誰が言ったのかは吉田さんには分かりません。これも不要な詮索やトラブルを避ける工夫です。

 

ホワイトボードには、強みと弱み(かも)が別々に書いてありますので、ざっと一分ぐらいで紹介します。吉田さんは自分が他人からどう見えているのか気になって仕方がありませんから、よく見ます。「強み」のフィードバックは嬉しいのですが、「弱み(かも)」はときに厳しい言葉も並びます。自分でも気づいている課題がほとんどですが、中には意外な指摘に驚くこともあります。

 

残りの7-8分間やることは、「フィードバックを受けた人が、『弱み(かも)』について自分なりの回答をすること。上から順番でもいいですし、気になったものからでもいいので、弱みとしてあげられたことについて、吉田さん本人から自分の考えや意見を述べてもらいます。

 

私自身がこのワークショップを行ったときには、「ときどきイライラしていそうで怖いかも」「もっと食事に行って話したいかも」「曽山さんの部屋の中が見えないので声をかけていいのか分からないかも」という指摘を受けました。私の部屋はガラスがすべて曇りガラスだったのです。すぐに部屋の中をそっとのぞけるように、曇りガラスにのぞきやすくなるような切れ目を入れることにしました。変更した直後から、メンバーからは声がかけやすくなったと好評だったのですが、まさにこういうことはなかなか自分では気づけないことでした。

 

また、「もっと食事に行って話したいかも」に対しては、「じゃあ、まずは一回食事に行こう」とすぐに日時を決めました。こうして、あげられた課題やリクエストをできるだけ解決していきます。「ごめん。これはすぐに解決できないけれども、意識するようにするね」ということもありますが、それでもよいのです。メンバー全員の前でどう受け止めているのかを伝えるだけでも、「自分たちの意見に理解を示してくれた」という相互理解につながります。この流れをチームメンバー全員がやります。

 

終わった後は、参加者の多くがすっきりした表情を浮かべます。強みと弱みをあげられた人は、本人も気づかなかった課題が見えたりフィードバックをもらえたりしたことに感謝します。強みや弱みを伝えた人も、普段なら言えないことが言えてすっきりします。

 

お互いの課題点を分かりますし、それをきちんと受け止めて解決しようとする姿も見られるので、チームの結束が強まるという利点もあります。このワークショップはリーダーも必ず一緒にやることが大事で、メンバー同士の相性があまりよくないときにも率直に会話するきっかけとなるので有効です。「かもトーク」というオブラートに包みながら強みと弱みをみんなで言えるので、健全に議論ができるワークショップです。

 

東京大学の中原淳先生は、『フィードバック入門』(PHPビジネス新書)という書籍で「耳の痛いこと」を伝える方法を紹介されています。「耳の痛いこと」というのは成長にとても効果的で、私も体感していますがいざやろうとすると、躊躇するのが普通です。こういうフィードバックを楽しくやる方法の一つが、このグロースファインダーです。

 

 

グロースファインダー以外にも強みを見つけるワークショップや対話法を盛り込んでいる「強みを活かす」。クラウドファンディングで予約1000冊、初版一万部超え爆  笑