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「失敗の本質」という本を読みました。超入門と、原著。

日本軍の組織論的研究の本です。

戦略の不全、組織の硬直化、間違った情報伝達など、組織開発における問題点と、逆にアメリカなどとは何が異なっていたのかがまとめられています。

会社組織においてもあてはまることが多く、痛いところを突かれている感覚になるような衝撃的な本でした。

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いくつか気になったポイントを。

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・何をもって成功とするのかという「指標の選択」こそが勝敗を決める。

・ダメな組織はグランドデザイン(組織全体で追いかける指標)が不足している。

・イノベーションとは、支配的な指標を差し替えられる「新しい指標」で戦うことである。

・自己革新型組織の特徴

 1)主観を中心に再構成するリーダーの洞察力
 2)異質な知識の交流
 3)ヒトの抜擢などによる権力構造の絶えざる均衡破壊


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グランドデザインのところが一番考えさせられました。

たとえば事業部で大きく伸びている組織や、本社機能や人事の中でも成果が出続けているチームを見ていると成果を出し続けているチームは「属人的」ではなく、「仕組み」がきちんと回っています。

全体像から見えるフレームワーク(枠組み)を意図的に構築し、リーダー一人に依存する組織からの脱却を図っています。

現在本社機能でも人事でもフレーム全体で考える取り組みを進めていますが、私たち人事管轄もフレームワークとして回っている所と、まだまだフレームワーク(仕組み)にできてないところがあると最近気づくことができました。

人事管轄の一部では先日話をしたパフォーマンス・ドライバーの概念をさっそくふまえて「業績が上がる仕組み」をつくろうという取組も始めてくれています。私でやりきれてなかったところを拾って進めてくれる人事のみんなには本当に感謝です。


様々な成果が出ている組織を見てみると、業績が上がる仕組み(フレームワーク)をつくるための基本となるステップがありました。


■業績が上がる仕組み(フレームワーク)のつくり方

1)全体像が見えるように一枚で可視化する(一枚なのが肝)

2)何を指標とするのか決める(良い悪いの判断軸を決める)

3)状況把握と決断をする習慣をつくる(週イチの定例など)



一番最初に差がつくのは、一枚で可視化(ペライチ化)できているかどうか。リーダーの口では説明できても、それがペライチにまとまってないと、話を聞く受け手側の頭には入ってこないことがあります。できるリーダーは自分の担当する部署を俯瞰できるペライチづくりが非常に上手です。

たとえば人事でいえば、下記などは全体からまとめると正確な判断ができるようになります。

・新卒採用の進捗
・全グループ会社の労務の状況
・オフィスの全拠点の可視化
・社員のコンディション


次に「指標の選択」がリーダーの経営判断力の差となります。

当社では「センターピン」と呼ばれることが多いですが、KPI(key performance indicator)という表現で使われることもあります。どの指標をみれば成功につながるのかというものです。

たとえば新卒採用であれば「エントリー数」なのか「内定数」なのか、もしくは別の指標か。どれをみることが最も重要なのかを決めることで、そこに向けてのアクションに集中できます。

ここまで決まったら、あとは習慣としていつどのタイミングでどう読み込みをするのかを決めます。日次でチェックし随時判断するのか、月次で読み込むのがよいのかなど。



上記のフレームワークが回ってない場合は、全体ではなく「点の判断」が多くなりがちです。点の判断ももちろん重要ですが、組織のトップであるリーダーが「点の判断」だけをしているとそれ自体が属人的なものとなり、組織の継続的成長が弱くなります。

全体から見る習慣をもっていれば、網羅性が高まり個々のメンバーも判断しやすくなるようになります。結果的には、リーダーもメンバーも組織全体の勝利に向けた決断を冷静に判断することができるようになります。


人事管轄は取り組んでいることが幅広いこともあり、折に触れて見返して指標がこのままでよいのか見直していこうと思います。




「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ/ダイヤモンド社

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)/中央公論社