昨日はゆっくりとイブを過ごした。
二人だけの部屋にも小さいながらツリーを置いている。
そのツリーの根元になにかが…。

「アラタさん、これって…」

「あぁ、お前宛だろ。そこに、【K.Sへ】って書いてあるみたいだし」

「ほんとだ…。開けても良いっすか?」

「俺に聞かれても…サンタが置いていったんだろうし」

「サンタさん、あざーっす!」
ビリッビリッビリリ…

やっと出てきた中身は
「参考書?」

「お前がやってるテキストを見たことがあるんだろ。どうやらそのテキストが一番向いてるって思ったんじゃないのか?
家事もするイイコだから、そこを短縮してでも勉強出来るようにって配慮だろ」


「そ、そーなんすね…なんか、気を遣わせてしまって…ごめんなさいっす」

「だから、俺に謝られても…。苦情があるならサンタに手紙でも書いておけよ。来年になったらまた来てくれるだろ?」

「あ、はい!忘れないように今のうちに書きます!」

バタン!ドタン!

リビングを抜け、自分の勉強机に向かう部屋の扉を閉めるが、どちらも遠慮なし。
「下から苦情来ないだろうな…」

参考書は結構オールマイティなものを渡した。押さえるべきところがしっかりとわかりやすく乗っている。ただ、問題はちゃんとした科目、であればの話だ…

「あの…」
手紙を持ちながら帰ってきた真行寺

「早かったな。もう書いたのか?」

「書いたのは書いたんすけど…そう言えば、オレってサンタからプレゼントもらったことがなくて…手紙ってどうすればいいんすかね…」

「どら、俺が赤点先生してやるよ」

そう言って手紙を受け取る。

【サンタさんへ
寒い中、高校も卒業して成人しようかとしているオレなんかにプレゼントをありがとうございます!あ、えっと…何語で書けばいいのかわからないので、とりあえず日本語で…許してください。
実は最近、学校以外の勉強をしています。
勿論学校の勉強もやってますが、少しでも知識をつけたいことがあり…出来るなら自分の力で…と頑張ってました。でもそれには限界もあって…。そこにわかりやすいテキストが!ほんと、感謝しかありません。
少しでも…アラタさんに近づきたくて、頼られる男になりたくて…
オレは学び続けます。
基本的なところが、アラタさんありきで邪な気持ちでやってますが、勉強は勉強です。その実が結ぶよう努力します!
本当にありがとうございました!
追伸、アラタさんにプレゼントがなく…
これはオレが渡すべきですよね?】

真行寺…、やっぱり違う勉強をしていたんだな。何を身につけようとしてるんだ?

だが、泣き言を言わないということは覚悟があるということだ。
これには触れないことにしよう。

「真行寺、俺宛のプレゼントのことは気にすることはない。実は、しっかりと貰ったんだ」

え?と大きな目を開く。
「それはな、今見えないんだが、ちゃんと朝、俺の目には見えてたんだよ。だから気にするな」

そう、一緒に毛布に包まって真行寺の寝顔を見ていた。
そしたら
『アラタさん、結婚考えてください!』
こんなはっきりとした寝言を言うとはな…
いつ聞けるのかわからないプロポーズ。
それが聞けただけでも嬉しい。

「そ、そーなんすか…」

「じゃ、Xmasイブも終わり、今日はXmasだが、どこか行きたいところはあるか?」

「あ、あの!アラタさんのご実家に!」

「なんでまた…」

「だって、プレゼント渡せてないんで!」

なるほど。女性2人と父にってことか。
「でも、居るかどうか…」
「居るって言ってました!」

いつ連絡取ったんだ?
『今日は、お昼を家で食べなさいな』
ピカピカと光るメールを開くと
【母】からのメッセージ。
『真行寺くんが一緒に来るって言うから、お昼用意してるわね!気をつけていらっしゃい』

「真行寺…やったな…」

「オレ、プレゼント思いつかなくて…。そしたら、やっぱりアラタさんは理子さんたちと過ごすことも必要なんじゃないかなって…」

帰るのはお盆と正月くらいだ。
クリスマスはそれに嵌っていない。

「ありがとう。偶にはクリスマスを家族でって良いかもな」

「ケサランパサランみてたら、ふと思ったんすよ。アラタさんとこうしていられるのは、みんなが居たからこそだなって…そう思ったら、メールしてました…ごめんなさいっす」

「いや、ありがとう。そうと決まれば、準備しようか」

準備を進めていた間に
携帯にメールが次々に。

『ねぇ、三洲!昨日のオードブルに何か付いてた?白い綿毛みたいなもの!』
これは野沢

『三洲くん!赤池くんに頼まれてオードブル買ったんだけどさ、見たこともない白い蜘蛛みたいなものが部屋にいるんだけど…これって生き物?』
これは葉山

『ちょっと赤池にクレーム入れてよ、三洲!オードブル開いたらさ、パーッて3つくらいふわふわしたものが飛んだんだよ!有り得る?食べ物の蓋の中からだよ?でも
汚れてないの!不思議じゃない?』
これは高林。
高林も食べたんだな…

『赤池に確認したんだけど、三洲からだけ連絡がないって言ってたぞ。みんなからクレームが来たけど【三洲からはないが】
気のせいじゃないか?とね』
これは矢倉。

ということは、赤池が頼んだメンバーのみんなのところに【ケサランパサラン】は顔を見せたことになる。その後、どんな風に扱ったのかはわからないが、幸せが訪れたのは間違いない。

これは赤池に連絡だ。

『赤池、色んな所からメールが一斉に来たんだが…うちにも入ってたよ、【ケサランパサラン】が。あまりの幸運をもたらしてくれたから、あの日に直ぐに外に返してやった。行くところが他にもありそうだったんでな…』

『そうか、ケサランパサランだったのか。実はうちにもあったんだ。奈美子と一緒に食べようと開けたら…ふわっとね…
奈美子も【これは、妖精なのよ】とか言うもんでさ…
直ぐに窓から帰してやったんだ。
他のメンバーはクレームだったから、それとは知らずに窓に投げたみたいだがな。
それでも一度見たなら幸せが貰えるんだろ。これも何かの縁さ…。
あやかって置こう』

これですべてのクレームは、一瞬にして解けた。

だが、葉山だけには持っていてほしかった…。アイツにだけは…。色んなものから守ってほしいし、願いが届くように持っていてほしい…。

『葉山も…』

『いや、葉山は蜘蛛に触れなくて部屋の隅にいるって叫んでた。あとから説明しておくよ。で、三洲が考えてることを伝えておく。【大事に身に着けておけ】とな。そうだな…名刺入れくらいのものなら潰されないで済むだろ』

そう機転が聞くのが赤池の赤池たる所以。

『だな』

メールを終え、俺たちは三洲家に向かった。
また一日楽しい時間を過ごすために…。