「じゃあ、お前たち何かあれば部屋から出るんだぞ」
離れに向かい歩き始めたぼくたち。
「OK!でも、ボクあんまりそういうの感じないからなぁ…。赤池頼むよ」
「と言っても、僕だってわかんないから」
「でも確か、先生のお父さんのお葬式で体験したとか言ってなかったっすか?」
「あー、確かに崎がそんなこと言ってたな」
同室になるのは、
『赤池&野沢』『三洲&真行寺』
そして、『ギイとぼく』
「あのときは、ギイが…」
「いや、あのときはタクミが気づいたんじゃなかったか?」
「だから、やめてよー!余計怖くなっちゃうでしょ!寝れなくなっちゃうし!」
あの日に見た(?)幽霊(?)は、
怖いものじゃなかったからいいけど、
前回のここでの体験は、身の毛がよだつほどの恐怖だったし…。と言っても、そのとき恐怖に駆られたのはギイだったけどさ。
翌日の声と、横たわった水死体は忘れられない。
「あの!!!」
もう少しで離れの玄関に入るというところで咲耶ちゃんに呼び止められた。
「どうしたの?ここに忘れ物かい?」
ジェントルマンの微笑みでギイが訊ねる。
そんな綺麗に微笑むことないじゃんか…ギイのバカ。
「いえ…そうじゃなくて、こちらを…」
差し出された手のひらにはお守りが3つ。
「お守り?なんで?」
咲耶ちゃんは何か知ってるの?
「いえ、特に何かあるわけではなくて
持ち歩いてたお守りが3つ手元にあったから、お裾分けしたくて」
なんだ、気のせいか。
あんな事件知らないほうが良いに決まってる。
「ありがとう。祈祷されたお守りを巫女さん手ずからもらえるなんて感謝だ」
そう言ってギイが両手のひらを合わせ、受け取った。
「あの…では、おやすみなさい」
少し頬を赤らめ、挨拶をする咲耶ちゃん。
ほら、イケメンの安売りするから!!!
「うん。おやすみ!」
後ろを振り向きながら頭を下げる咲耶ちゃんに手を振りながら、ぼくたちは玄関を跨いだ。
「じゃあ、お守りを分けようか。3つだし、1つはタクミで、あと2つだな。とりあえず、1部屋ずつに渡すから、誰が持つかはお互いで決めてくれ」
「じゃあ、僕たちの部屋は野沢だな」
「えー、赤池の方がいいと思うけど」
「ぼくは駒澤に投げられたくないからな」
「それならまぁ、僕がもらうよ」
「じゃあ、オレらはアラタさんっすね!」
「はぁ?お子ちゃまはしっかりと身に着けておけ」
「ダメですって!オレがもし幽霊見えたらしっかりエネルギーの竹刀で喉仏ついてやります!」
「幽霊に喉仏ってあるのか、真行寺」
「うーん、どーっすかねぇ。
みたら教えます!てことで、アラタさん持ってください!」
「バカ。幽霊に傷害罪突き付けられないために、お前が持て。ということで、俺たちの部屋は真行寺が持ち主だ。幽霊って信じてないが、人間の生霊ってこともあるらしいし、気をつけろよ葉山」
「三洲くん、なんでぼくにだけ言うんだよー!」
「といっても、幽霊より怖いやつが隣にいるわけだから、可愛く見えるかもだぞ」
「なんで、赤池くんもそんなこと言うのさー!みんなの意地悪ー!」
「あはは。三洲と章三が場を和らげてくれたんだから、そのまま解散しようぜタクミ。それに、お前を早く抱きしめたい」
「な、何言ってんだよ!」
咲耶ちゃんが居なくて良かったよ、全く!
「アラタさーん!オレモオレモ!」
「オレオ?それともオレオレ詐欺か?
真行寺、寝言は寝て言え」
「いつまでもバカップルと一緒にいると頭がおかしくなる。野沢、早く部屋に行って休もう」
「だね」
いつものワチャワチャとした雰囲気になり、ぼくたちはそれぞれのドアを開け
『おやすみ』と交わし、静かに閉めた。
ただこのあとぼくたちは、お守りの持ち主について言い争うことになる。
だって、ぼくだけが守られるなんておかしいんだよ、ギイ…