やっと繋がったライン。
ほっとしたのも束の間で、
電話の向こうから知らない男の声がした。
思い返せば、アイツの声に似ている。

だが、真行寺は信じろと言った。

色々と渦巻くものはあるが、それは聞いてからだ。

一番大事なのは、
真行寺が唯一無二だということ。
この二週間は食事も殆ど取らなかった…いや、取れなかった。
何しろ喉を通らない…。
見かねた先生が点滴をしたほどに。

会って何を言う?
会って何を聞く?

あんなに会いたくないと思っていたのに…
今は会うことしか考えていないことに気付く。

「身勝手だな…」

自分から逃げ出しておいて、
さも、お前が悪いと言わんばかりに『話があるなら聞いてやる…』よくも言えたもんだ…

取り敢えず真行寺の『信じて』、それだけを胸に置いて、あいつが帰ってくるのを待つことにした。

ーーーーー
「ただいま…」

「お帰り」

お帰りと言った途端、犬が飛び付くように抱き締めてきた。

「お帰りって…言って貰えないかと思った…」

「お前の家でもあるんだ、お帰りだろ」

そう、ここは二人で住むために借りた場所。二人で住まないのであれば、立ち退くだけ。

「ありがとう!アラタさん!ゴメン、アラタさん!」

グスッと鼻を鳴らしながら、いつまでも離れない真行寺。


「何をゴメンと言っているのかわからないから、全部教えて貰おうか…真行寺」