オレはアラタさんが帰らなくなった部屋に居たくなくて…
色々考えた結果…あの人のところに向かった。
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「こんにちは」
「おや。やっと心を決めてくれたのかい?」
喜ぶその人にオレは頷いた。
「そう!じゃ、ちょっと待ってね!」
いそいそと準備を始めるその人に、オレは最後の抵抗を見せた。
「一度だけですから…」
その言葉に、
「ふふ、わかったよ!一度でも充分だ!でも…キミがそう思わなくなるかもしれないけどね…」
思わせ振りなことを言いながらも、彼は部屋の奥に消えた。
「じゃ、どうぞ!」
オレは『一度』そう、決めてその部屋に足を踏み入れた。
その『一度』が、またやってくると思いもせずに…
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着信…
アラタさんから…
あんなに、電源を落としていたのに…
今…今なの?
でも、戻りたい…あの部屋に…
許してくれるだろうか…
嘘をついた訳じゃないって…
信じてくれるだろうか…
もう一度…オレを迎え入れてくれるだろうか…
でも、この『内緒』はどう伝えればいい?
それでもオレはあの人に会いたくて…
コールした。
「アラタさん…信じて…」
そう、願いながら。