真行寺と距離を置いて二週間…。
電話は、真行寺のナンバーだけ拒否設定していた。

そこにかけてきたのは葉山。

『三洲くん、見て欲しいものがあるんだ!』

慌ててかけてきて、その一言だけ…
そして、自分のアパートに来てくれと。

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"コンコン"

こいつの部屋のブザーは少し音が大きいから、ノックでいいよと以前言われた。
だから、今回も…

「いらっしゃい、三洲くん」

扉を開かれ、中に招き入れられる。

「何か飲む?といってもお茶かコーヒーくらいだけど…」

「じゃ、お茶を…」
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出されたお茶を一口。

「で、何を見せたいんだ?」

本題に入らないと、脇道に反れては意味がない。

「あ、そうそう。それだったね!」

やっぱり…なんで呼んだのか、もう忘れかかってる。

そして、出してきたものは一冊の雑誌だった。

「これ!これってさ…」

指差したそれ…

「真行寺?」

「だよね?」やっぱり?と窺う葉山。

確かに似てる。
いや、きっと、本人だろう…
だが…

「葉山…これいつのものだ?」

「実はね…それ、古本屋で見つけたんだ。発行日をみたら、今年の夏みたいだね。知ってた?」

「いや…」

それは、所謂ファッション誌。
葉山がそれを見つけたのは偶然で
いい楽譜がないか探しに行き、ファッションに疎い自分にも出きるものがあればと開いたものに真行寺らしき人物が載っていたということ。

「そう言えば三洲くん…ちゃんと部屋に帰ってるの?顔が疲れてるよ?真行寺くんと会話できてる?キミには真行寺くんというビタミンが必要なんだよ?」

ほんと…見透かすヤツだな…

「ここのところ大学に泊まってるんだ…帰れてない。だから真行寺にも会えてない。いや、会いたくない…」

「会いたくない?何があったの?」

「葉山が一度見た二人…あの一週間後にまた会ってた…しかも、駒澤と会うって嘘までついて…」

「真行寺くんが嘘?ほんとに?ちゃんと駒澤くんに確認したの?三洲くん!」

確認?そんなのするまでもない。
だって俺はあのメッセージを見てしまったんだ。
だから最初からそこに向かった。
それしかない…。

「そんな必要はない…真行寺の躾は俺がしてるんだ。飼い犬に噛まれるってこう言うことなんだろうな…」

「もう…何、自己完結してるんだよ!わかったよ!真行寺くんが信じられないなら、ぼくが駒澤くんに聞くからね!」
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その日の夜

「三洲くん!ちゃんと謝るんだよ!真行寺くんは、本当に駒澤くんにお礼をしてた!ランチをしてたんだよ!嘘なんかついてなかった!それに16時まで付き合ってと言われたけど、自分に予定があったから15時過ぎにバイバイしたって…あのぼくが見た時間は15時!ってことは、真行寺くんは、あの人と会うつもりはなかったってことだよね?だよね?ね!」

何度も何度も、二人が居たのは偶然だと…そう訴える葉山。

確かに俺が見たのは15:30。
30分も約束に遅れるようなことを真行寺はしない。
ということは…

「わかった…一度帰るよ」

葉山という、緩衝材で俺は真行寺と会話をすることにした。